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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第2章 駿河・立身編

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第61話 嘉兵衛は、関口親子から謝罪を受ける

天文24年(1555年)5月中旬 駿河国駿府 松下嘉兵衛


「ああ、ホント……死ぬかと思った」


衝撃的なお味の和菓子を食してからおよそ1刻(2時間)後。無事に生還した俺は、おとわに往復ビンタされて腫れた頬をさすりながら、そう呟いた。いくらディープ・キスになったとはいえ、意識がなかったのだから仕方ないと思うのだが……怒れる婚約者には通じなかったようだ。


「次、浮気したら殺すからね?」


理不尽な……。


「大蔵殿、この度は何と申していいのか……娘の事でご迷惑をおかけ申した」


そして、きっと騒ぎを聞いて駆けつけたのだろう。俺の前には、関口様とその御嫡男、助五郎様も「お見舞い」と称されて、謝罪に来られていた。


「それでどうしてこのような事に……」


「それは……」


黙って事情を聴いていると、関口様としては俺に瀬名姫様の手料理を食べさせるつもりはなかったそうで、あの時おとわの下へ向かわなければ、普通の食事が酒付きで出されていたようだ。本当かどうかはわからないが、だとするならば、早とちりをしてしまったのかもしれない。


「しかし、いずれにしても瀬名姫様の料理は……」


「わかっている。貴殿には誠、申し訳なかったが、こうして家の外に犠牲者が出た以上は、諦めるように説得する。だから、今日の所はどうか許してもらえないだろうか?」


苦笑いを浮かべる助五郎様の様子からして、本当に説得できるのかと思わないでもないが、それは関口家の中の話だ。今川家の一門に連なる重臣からこうして頭を下げられてしまえば、お互いの立場的には受け入れざるを得ない。


「……わかりました。今回の事は忘れることにします」


「おお、忝い!この関口刑部、大蔵殿の心の広さに感服いたしましたぞ!!」


ただ……この演技じみた大人のやり取りが通じない人がこの場にひとり居た。空気が読めないというか……


「お義父様!」


怒気を隠すことなく、声を荒げたのは……おとわであった。


「な、なんだ、おとわ……」


「嘉兵衛は人が良いから騙せるでしょうけど、わたしは誤魔化されないわ!だって、そのやり口で……こないだも孕石殿を丸め込んだのでしょ!」


「え、えぇ……と、それは誰から聞いたのだ?」


「この駿府で起こっていることは、全部わたしの耳に入るのよ!だから、丸っと全てはお見通しなんだからね!」


絶対に情報源は藤吉郎だなと理解したが……我慢しきれなくなったおとわは、その聞いていた事情を全部この場でぶちまけた。


それは、三浦様からの使者としてやってきた孕石主水に、瀬名姫様は特製の味噌汁を飲ませたそうで……あちらは三日三晩、生死の境をさまよったそうだ。ふふふ、それはそれは、実に気味が良い話で……。


「そして、あの時も瀬名様にもう料理はさせないからと、誓われましたよね?」


「そ、それは……お、おとわ、あとでお話ししないか?」


「いいえ!それはお断りします!!」


「桔梗屋の羊羹を夕餉で出そう!それで手を打たないか?」


「よ、羊羹!?」


流石は甘いものに目がないおとわだ。その言葉に釣られて顔に迷いが生じたが、それでもグッとこらえて要求を突き付けた。


それは……関口家から俺の家に移りたいという要求だった。


「いや、婚儀の前に同棲などと……流石にそれは、我が家の世間体というものが……」


「でしたら、瀬名様が規格外の料理下手と……藤吉郎に頼んで今川領内全域に広めてもらいましょうか?」


「ま、待て!それは困る!!折角まとまりかけている、瀬名の縁談に触りもあるわけで……」


まぁ……それは、次郎三郎が既に知っている時点で手遅れなような気もしないでもないが、 どのみち俺が口を挟むことではない。それにしても、同棲か……。それはそれで、此度の詫びと思えばいいのかもしれないな……。


「関口様、某からもお願いします。おとわがもし、瀬名様の手料理を口にしたらと思うと、某も婚約者として心配でなりません!」


「むむむ……だが……」


「何かあったら、責任取れますか?」


「そうは申してもだな……」


ここまで申し上げても、関口様は渋られて中々首を縦には振ってくれなかった。ゆえに、これはダメかなと諦めかけていたのだが、ここで助五郎様が助け舟を出してくれた。「父上、いいではありませぬか」と。


「助五郎……」


「その代わり、瀬名を松平次郎三郎殿の下へ嫁がせる件、どうかご助力を賜ります様……」


なるほど、交換条件というわけか。だけど、問題はない。瀬名姫様が次郎三郎に嫁ぐのは運命だ。


「承知しました」


それゆえに、俺は快く承諾したのだった。


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