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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第2章 駿河・立身編

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第53話 嘉兵衛は、ブートキャンプを実施する

天文24年(1555年)4月上旬 駿河国駿府 松下嘉兵衛


俺が馬廻衆の四番隊、五番隊の指南を引き受けてから、およそひと月が経った。


「おい、第二小隊!遅れている者が居るぞ!足並みをキチンと合わせんか!!」


「「「はい!!」」」


あれからも、モンペだのP〇Aもどきだのが我が家に押し掛けて幾度か文句を言ってきたが、藤吉郎に対応を任せたらいずれも沈黙した。


「指南役補佐官殿!第一小隊、素振り5千回終了しました!」


「ご苦労!暫し休憩の後、腕立て伏せ3千回に移れ!」


「はっ!」


ちなみに、握っている秘密がどんなものかは知らない。藤吉郎曰く、「世の中知らない方が良い事もあるのですよ」……という事らしいので、俺としては信じるより他はない。


「第四小隊!貴様ら、誰が休んでいいと言ったかぁ!」


「お、畏れながら、もう我らはこれ以上動けず……」


「馬鹿者!そんな甘い考えで、甲子園に行けると思っているのか!!」


「「「「「甲子園?」」」」」


あ……そういえば、この時代はまだ聖地・甲子園はなかったのだったな……。


「こほん!とにかくだ。貴様らはお屋形様を守る最後の盾だ!盾が脆くて、お屋形様を守れるのか!今川家を……貴様らが大切にする家族、故郷を守れるのか!?」


「……守れません」


「だったら、動け!自らを厳しく鍛え抜け!敵は貴様らの都合になど合わせてくれぬのだからな!!」


「は、はい!」


まあ……兎にも角にも、藤吉郎のおかげで俺は思うようにこの連中を鍛え上げている。今日は五番隊への指導だが、昨日の四番隊も同様に行った。


まだまだ道のりは長いが、この試練に耐え続ければ、いずれどちらの隊も今川家にとって無くてはならない精鋭となってくれるだろう。


「大蔵殿」


「これは、一刀斎様」


そして、そんな風にして連中を監督しているところに、我が上司にして師匠でもある一刀斎様が現れた。


「どうやら、杞憂だったようですね……」


「何がですか?」


しかし、訓練風景に目を向けるなり、突然そのような事を言われたので、俺は首をかしげた。すると、笑いながら一刀斎様は、この駿府に来る前に備中守様と交わしたやり取りを打ち明けてきた。


つまり、俺はお人好しの甘ちゃんだから、この連中に嵌められるのではないかと心配していた……と。


「それは……」


悔しいけれども、否定する事はできなかった。藤吉郎が機転を利かして五右衛門を召し抱えて、今川家中の内情を集めてもらっていたからこそ、モンペの圧力を乗り越える事ができたのだ。俺だけではきっと、前世と同じことを繰り返して失敗していただろう……。


「もっとも、何も一人で抱え込む必要はないのですよ?その藤吉郎殿の活躍も大蔵殿の力。そこは何も恥じる必要はないと思いますが……」


「はぁ……ありがとうございます」


一刀斎様のお言葉は有難いし、そのとおりだとは思ったが……やはり、心の中に芽生えたモヤモヤは簡単には消えてくれそうにない。


だが、そんな俺の気持ちも見透かしたのか、一刀斎様は懐から一通の書状を取り出して差し出してきた。中身を改めると、それは備中守様からのもので、「臨済寺の雪斎に会うように」と記されていた。


「雪斎様って……あの今川家の軍師と呼ばれた……」


「そうだ。備中守様曰く、雪斎様は腹黒狸ゆえ、交わる事で多少は貴殿のお人好しも改まるのではないかと……」


なんか、雪斎様も俺も好き放題に言われているようだが……会う事はきっと俺のこれからにとってプラスになると予感した。何しろ、あの徳川家康を育てた恩師でもあるのだから。


「わかりました。この書状に記されている日時に、臨済寺を訪ねる事にしましょう」


「それがよいでしょうな。あ……そうそう、禅師は酒に目がございませぬから、手土産は澄酒がよろしいでしょう」


「重ね重ね、ありがとうございます。必ずや持参するようにいたしましょう」


何事も初めが肝要だ。帰ったら早速、藤吉郎に用意してもらうとしよう。


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