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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第1章 遠江・旅立ち編

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第46話 嘉兵衛は、弟子入りを希望する

天文24年(1555年)1月中旬 遠江国井伊谷城 松下嘉兵衛


前原殿との勝負は……結果として、負けた。始めのうちは互角、いや少し押し気味で行けたと思うが、気が付けば追い込まれていたのは俺の方で……最後は膝をついた所で喉元に刃を突き付けられては、両手を上げざるを得なかった。


「いやあ、年の功、年の功。貴殿ならば、あと10年も修行を積めば、某など歯牙にかけぬほど強くなるでしょうな」


「ありがとうございます……」


ただ、負けたとはいえ、これほどの実力者に認められて、嬉しくないと言えば嘘になる。


「あの……お願いがあるのですが……」


だから、迷わずに誘うことにした。俺に仕えてくれないかと。その10年の修行を傍で見守って頂けないかと。


「そうですねぇ……」


「禄は250石出します。どうか、これでお願いできないでしょうか!」


石田三成じゃないけど、今の俺に示すことができる誠意は、こうして禄の半分を差し出すことだ。その上で、もし家臣になるのが嫌ならば、客でも構いませんとも告げた。


「客ですか?」


「まだまだ未熟な某をどうかお導き下さい。弥五郎殿の力が必要なのです!」


これでもし断られたら……流石にもう打つ手はない。すると、そこに左京様が現れて告げた。備中守様が伊東一刀斎殿にお会いしたいから、是非この後、部屋を訪ねてきてもらいたいと。


「伊東一刀斎……?」


その名は知っている。戦国時代の有名な剣豪の名前だ。だから、思わず「本当なのですか?」と訊ねてしまった。


「あはは、どうやらバレてしまったようだね。まあ、そういうわけで嘉兵衛殿。今の話は聞かなかったことにしましょう。さもなければ、朝比奈殿の不要な怒りを買われるでしょうからな」


「は、はぁ……」


確かにその通りだ。今の話を聞く限り、備中守様は一刀斎殿を今川家に迎えようとしているのだろう。邪魔をすれば、例え家臣になると言質をとっても、俺の立場は物凄くまずいことになるはずだ。場合によっては、500石の禄で召し抱える話も流れるかもしれない。


ただ、このまま今川家の家臣になるのであれば、駿府で教えを乞うことはできそうだ。それゆえに、俺は弟子にしてもらえないかと頼み込んだ。


「お願いします!せめて、それだけでもお認め頂くわけには参りませんでしょうか?」


「しかし、まだ今川家に仕えると決めたわけでは……」


「ならば、仕官していただけないでしょうか?どうか、この通りにございます!」


平身低頭で俺が土下座をすると、左京様も同じように土下座をして、「何卒、今川家に仕官願います!」と頼み込んだ。


「わかりました。とにかく、朝比奈殿には会うことにしましょう。仕官するか否かはそれ次第いう事で、もし仕官するならば、嘉兵衛殿。あなたを弟子に迎えましょう」


「ありがとうございます!」


そして、後は左京様にバトンタッチする。備中守様とどのような話し合いになるかはわからないけど、できれば今川家に来てくれたら嬉しいなと思って、見送ることにした。


「あ……そうだ」


ただ、そんな刹那、立ち去ろうとしていた一刀斎殿が俺に告げた。家臣が欲しいのならば、見どころのある若者が一人いるので、会ってもらえないかと。


「それは構いませぬが……その者の名は何と?」


「島左近と申しておりましてな。まだ年端もいかない少年ながら、中々に良き目をしておりました。配下に加えたならば、必ずや嘉兵衛殿の力になりましょう」


全くその通りだ。島左近――三成に過ぎたる者と言われた関ヶ原の英雄だ。


「ありがとうございます。早速会いに行って仕官を勧めたいと思います」


「それが良いでしょうな。あれほどの若者を逃すのは、貴殿にとっては大損となるでしょうから」


ちなみに、その左近殿は予選3回戦で敗れた際、怪我をしたため、今夜は龍潭寺の宿坊に宿泊しているはずだと教えてくれた。ならば、会いに行かない選択肢はなく、俺は左京様に一言断りを入れてから、龍潭寺に向かうことにしたのだった。

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