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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第1章 遠江・旅立ち編

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第23話 嘉兵衛は、婚約破棄の段取りを説明する(後編)

天文23年(1554年)11月中旬 遠江国井伊谷城 松下嘉兵衛


「駿府に……売られる?」


意味が分からないし、何を馬鹿は事を……と言いたかったのだけれども、その時但馬守殿がため息を吐いて亀之丞様に言ったのだ。「そういう秘匿事項は、容易く漏らしてはこれから先、困ったことになりますぞ」……と。


「え……それじゃあ、その話は本当で……しかも、但馬守殿もご存じだったと?」


「ええ、庵原殿から別に頂いた書状にもそう書かれてありましたからな。どうやら、今川は亀之丞様を井伊家の世子と認める代わりに、嘉兵衛殿を直臣として迎えたいとか……」


そういう大事な話は教えて欲しかったとは思うけど、一方で但馬守殿は俺に告げる。どちらにしても、今は必要のない情報だと。


「必要ないって……結構、俺にとっては重要な話だと……」


「嘉兵衛殿は今、とわ姫様をどうにかして妻に迎えられたいのですよね?」


「それは、そうだが……」


「では……これから皆を欺く作戦を遂行するにあたり、その話は本当に必要ですかな?」


そう言われてみれば、確かに必要はないのかもしれない。俺にとってすれば、おとわさえ手に入るのなら、新居が井伊谷だろうが駿府だろうがさしたる話ではないのだ。


場合によっては、駆け落ちしようかとも覚悟していたわけだし……。


「それに、今川家は貴殿にお屋形様の片諱と、500石の禄を与えるとか」


「か、片諱と500石……?」


「どうです?悪い話ではないでしょう。何せ、婚約が破棄されたとて、とわ姫様は井伊家の大切な姫君ですからな。妻に貰い受けたいと望まれても、それくらいの身分がなければ、話はまとまらないでしょう」


なるほど……確かにその通りだ。反論の余地はない。


「……わかりました。この話はひとまず置くことにしましょう」


「それでよいかと……」


ならばと、話を元に戻してこれからの話を続ける。話をでっち上げて噂を流すのは、藤吉郎が受け持つという事だから心配していないが……作戦を開始するにあたってもう一つ、手を打たなければならない事がある。


それは……肝心かなめのひよ殿の承諾を得る事だ。


「えぇ……と、ここまで綿密に計画を立てているのだから、それはすでに話がついていると思っていたのだが……許可、取っていなかったのか?」


「これからですよ。何しろ、俺たちが段取りを整えておいたとしても、当のおとわや亀之丞様が拒まれたら、話は全てとん挫……いや、下手をすれば謀反人として処断されかねませんからな」


だから、話をこれ以上大きくする前に、当人たちの意思を確認しておく必要があったのだ。


「それではこれから話を持って行くという事か……」


「ええ、そうですよ。もちろん、説得するための手土産は用意済みですが……」


「手土産?」


そう……もし、この話を引き受けてくれるのならば、井伊領における澄酒に関する利益を全てひよ殿に譲渡するつもりでいるのだ。


「本気なのか?」


「本気です」


亀之丞様は驚かれて、俺に再確認を求めてきたが……何しろ、好きでもない男の下へ嫁がなければならないという、この企ての中でもっとも報われない仕事をお願いするのだ。その程度の誠意は示そうと思っている。


「あと、椎茸栽培や硝石づくりの準備も行いましたので、上手く事が成った暁には、その利益も全て譲渡しましょう。まあ、そちらの方は成功する保証はできませんけどね」


「……本当に噂では聞いていたけど、君は凄い男だな。才能もそうだけど、その思い切りの良さは……。但馬守、俺は正直な気持ちとして、嘉兵衛を手放したくはないぞ。今川になどくれてやりたくないぞ!」


「それは、某も同じ気持ちでございます。これからも共に、この井伊家で働きたかった!」


まあ、俺だって内心ではここは居心地がいいし、離れたくはない。ただ、それを口にするわけにはいかず、こうして作戦が決まった以上は行動に移すのみだ。


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