表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第1章 遠江・旅立ち編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/61

第21話 嘉兵衛は、それぞれの意志を確認して暗躍を始める

天文23年(1554年)11月中旬 遠江国井伊谷城 松下嘉兵衛


玄関先での出来事の後に開かれた歓迎の宴でも、やはりおとわと亀之丞様の関係は、あまり良好なようには見えなかった。


もちろん、これは俺の願望もあるかもしれない。そうであって欲しいと思っているからこそ、目が曇っているという事も考えられる。だけど、もしそうであったとしても、これ以上ウジウジと悩みたくはなかった。


「な、なによ……」


だから、それから数日後、俺は直接おとわを呼び出してその真意を訊ねる事にした。


「単刀直入に訊くけど、おとわ……実はもう、あいつの事、全然好きじゃないだろ?」


だが、その返事代わりなのだろう。グーパンチが俺の頬を直撃した。


「何を馬鹿な事を言っているのよ!好きよ!全然好き!!あんたなんかよりも全然大好きよ!!」


「嘘を吐くな!おとわ、俺の目を見てもう一度言ってみろ!!俺は、おまえの事が好きだ!この世で一番、いや……前世で出会ったどの女よりもおまえが一番だ!!」


「か、嘉兵衛……な、なにを……」


「だから、本当の気持ちを答えてくれ!おまえの心は誰にある!?俺か、それとも亀之丞か!!」


……これでもし、それでも「亀之丞が好き」と言われたら……きっと俺も但馬守殿と同じように「もう恋なんてしない!」と歌っちゃうんだろうなと思った。


だけど……おとわは答えてくれた。俺の想いに。


「わたし、やっぱり嘉兵衛の事が好き!大好きよ!!でも……」


「わかっている。井伊家の姫としての立場があるよな?」


「そうよ。だから、あなたの気持ちは嬉しいけど……一緒になる事はできないわ」


しかし、おとわはそのように思い込んでいるが、本当にそうなのだろうか。何せ、前世の世界では婚約破棄は物語の王道だったのだ。ありとあらゆるパターンが……読者だったこの俺の魂に刷り込まれている。


だから、おとわの意志を確認できた以上は、一緒になるための道筋は見えているのだ。


「とにかく俺が何とかするから、おとわは何があっても俺を信じて待っていてくれ」


「な、何をするつもり?」


「今は内緒だ。おとわに教えると、きっと顔に出ちゃうからそれで失敗してもいけないし……」


「なによ、それは……」


「だって、根が素直だから、嘘を吐くのが下手だろ?」


今さっきの事だってそうだ。井伊家の姫としての立場を守るつもりであるのなら、ちゃんと俺の目を見て、その上で「亀之丞様の方が好きよ」と言わなければならなかったのだ。それができないのは、ホント、心根が優しい子だからだ。


「……わかったわよ。でも、これだけは約束して。もし失敗したら、わたしを連れてどこか遠くの国に……」


「ああ、今度こそ迷わないよ。例えその先に地獄が待っていたとしても、必ずおとわを迎えに行く」


「ありがとう」


話はこれでお仕舞いだ。俺はおとわを見送り……次のお客様と相対する事にした。但馬守殿に連れられて現れたのは、亀之丞様だ。


「先程見て頂いた通り、俺はおとわをあなたから頂きたい。どうでしょう?譲っていただくわけにはいきませんか」


「譲れるものであれば、こちらとしては喜んで差し上げます。貴殿は怒るかもしれませんが……あの虎と一緒になったら、いつか食い殺されてしまいますから……」


ただ、苦笑いを浮かべる亀之丞様は続けて言った。しかし、それは容易ではないと。


「俺がおとわと一緒になる事が井伊家を継ぐ条件なのですよ。だから……」


「亀之丞様。それは以前の話であって、今は少し違うようなのですよ」


「違う?」


戸惑いの色を見せる亀之丞様に、但馬守殿は1通の書状を見せた。それは、亡き和泉守殿が懇意にしていた今川家の重臣・庵原右近殿からの物で、それによるとすでに亀之丞様が井伊家の世子になることは駿府のお屋形様が認められた話であると記されていた。


「おわかりですかな?すでに駿府のお屋形様は、あなた様を井伊家の世子と認められたのです。つまり……もし、おとわと一緒になられなくても、これをひっくり返してなかった事にできないということなのですよ。例え殿であっても……」


だからこそ、俺たちは亀之丞様におとわとの婚約破棄を勧めた。そもそも、一緒になるのが嫌なのだから、無理して一緒になる必要はないと言って。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ