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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第4章 桶狭間・決戦編

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第177話 嘉兵衛は、桶狭間の決戦に臨む(5)

永禄3年(1560年)5月中旬 尾張国桶狭間山 松下嘉兵衛


『織田上総介、見参!』


その大きな声が聞えてきて、俺は急ぎやぐらの梯子を駆けあがった。すると、我が方の兵たちが持ち場を離れて声の主に殺到し……その隙を突いてこちらに向かって坂を駆けあがってくる軍勢が見えた。


「まずいな……」


その数は見たところ、2千といったところか。対してその先に待ち構える味方の数は千を少し超える程度だ。進撃を阻止しようと抵抗を試みているけど、時間の問題と言ってもよい。


「弥八郎……駆け上がっている兵の指揮官を撃てるか?」


「やってみましょう」


弥八郎は素早く準備を整えると、その熊のような指揮官目掛けて銃撃を加えた。しかし、野生の勘が働いたのか、当たると思われた瞬間に少しだけ身体をずらして、これを回避した。


「くそっ!」


もう一発放つ選択はなかった。おとわの三段構えとは異なり、こちらは弥八郎一人。再度準備して発射するまで待っていたら、あの熊は義元公の元へ至っている。俺は急いで梯子を下り、義元公の居られる御座所へ駆け込んだ。


「太守様!どうか、ご避難を!!」


「大蔵……危ういのか?」


「敵の数と勢いを考えたら、もう間もなくこちらにやってくると思います。そうなれば、ここにいる馬廻衆の力では、押し留める事はできませぬ!」


つまり、このままではこの砦の陥落は避けきれない。しかし、義元公さえご無事であれば、単なる局地戦での敗北に過ぎず、今川家への影響は微々たるもの……いや、違うな。そんな話ではない。むしろ、これぞ好機到来だ。


「……太守様。ここで太守様が立ち退かれることこそ、我らの勝利を確実にします」


「勝利を確実に?」


「なぜなら、ここには織田上総介が居るのです。太守様がお立ち退きになられたら、あとは袋の中に入ったネズミを始末するかのように、我らは全力でその首を狙うことに専念できるわけで……」


まあ、これこそが本来の作戦だった。義元公は信長をこの決戦場につり出すための餌。役目を果たしたのだから、言い方は悪いがこれで用済みだ。


「……これも勝つために必要な事なのだな?」


「御意にございます」


「……相分かった。ここはそなたに従い、退去する事にしよう」


義元公は少し残念そうな笑みを浮かべながら、床の間の紐を引き、側近衆、それに護衛として馬廻衆の1番隊を引き連れて、開通した奥の部屋へと姿を消された。俺はその後を追って、隠し通路と床の間の壁板を元通りにしてから、残った馬廻衆たちに指示を下した。


「いいか、もう間もなくここに織田の兵たちがやって来る。しかし、あえてここを守る必要はない。そこで、掃部介……」


「はっ!」


斎藤掃部介は四番隊の隊長であり、かつて指南役補佐をしていた頃の部下だ。その掃部介に俺は織田の兵が現れたら、この小屋に火を放つように命じた。


「あの……本当によろしいので?」


「目的はふたつある。ひとつは、太守様の後を追わせない事。そして、もうひとつは……この砦の異変を周囲に知らしめることだ」


「周囲に知らしめる……ですか?」


「そうだ。武侍山の松井殿はすでにこちらへ向かっているだろうが、山頂にあるこの小屋が燃えて煙が上がれば、幕山の飯尾殿にもこちらの異変が伝わるだろう。伝令を送るよりも早く駆けつけてくれるはずだ」


松井殿の兵だけではなく、飯尾殿の兵も駆けつけてくれたなら、ここに籠る3千の兵と合わせて7千。数の上では互角……いや、上回るはずだ。そうなれば、進退が極まるのは信長の方だ。


ただ、そのように作戦を説明した所に、弥八郎がやってきて補足を加えた。それは折角小屋を燃やすなら……義元公が自害して、その時間を稼いでいるように演技をしてはということだった。織田の油断を引き出すために……と。


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