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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第4章 桶狭間・決戦編

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第151話 嘉兵衛は、桶狭間に立つ

永禄3年(1560年)1月中旬 尾張国桶狭間山 松下嘉兵衛


尾張における我ら今川の拠点、沓掛城の西側に桶狭間はあった。義元公が討たれたのは谷間の盆地だったのか、あるいは山の上だったのかは、前世でも真相はわからなかったけれども、この地を訪れた俺はひとまず山の上に登った。いずれにしても、ここからならば全てを見渡せるがゆえに。


「なるほど……太守様が油断なされるはずだ」


ここは尾張ではあるが、見渡すことができる景色全てが我ら今川の勢力圏だ。織田方の拠点で最も近い中島砦は正面の山々の向こうだし、当然だが、そちらの側にも味方は展開している。


それゆえに、義元公が気を緩められるのも無理からぬ話で、むしろ史実の信長は今川軍の壁を突破して、どうやってここまで来たのだろうかと考えてしまう。


時代劇ドラマなどでは、雨が降っていた事が発見を遅らせたとか、村人を利用して今川軍の将兵に酒を飲ませた事がそれを可能にしたという描写があったが、実際にこうして目の当たりにしては、納得できる答えではなかったのだ。それだけではないような……。


それに……麓の平地で襲われたのならともかく、本陣をこの山の上に置いていたならば、負ける事はないように思えた。


「源五郎」


「はっ!」


「仮にだが……この山に5千の兵がいたとする。それをおまえは2千の兵をもって中島砦を出陣して落そうとするとき、どのような方法で攻める?」


だから、ここは専門家の意見を訊くことにした。


「そうですなぁ……」


真田源五郎は武田がつけた俺の監視役で、情報が筒抜けになる可能性もあるけれども、俺の知る未来では徳川家康を翻弄した智将だ。リスクを冒してでも、意見を訊いておきたいと思って質問を投げかけた。すると……


「……某が指揮を執るのであれば、隊を二つに分けてその一つをそのまま街道沿いに進ませますな」


そうすれば、進軍を阻止すべく、あの山にいる軍勢が動くと……源五郎は言った。


「そして、手薄となった山中をもう一つの隊が進んで、この山に攻め込む……と」


「勝ち目はあるのか?」


「街道を進む隊が善戦すれば、あるいはこの本陣より兵も出るでしょう。さすれば、やり様によっては総大将の首を獲る事はできるかもしれませぬな」


「なるほどな……」


史実における桶狭間の戦いがどのような経過を辿ったのかまでは詳しく知らないけれども、もしかしたら信長は、そのような戦術で義元公の首を執ったのかもしれない。


「但し、それでも成功する可能性は高くはないでしょうな」


「わかっている。ならば、雨が降っていたならどうだ?」


ドラマで描かれていた桶狭間の戦いはいつも土砂降りの雨だった。


「雨の度合いにもよりますが、豪雨であれば……あるいは、兵たちが雨宿りをしようと持ち場を離れる事もあるでしょうから、幾分かは成功する可能性は高くなるかと。視界も悪くて発見も遅れそうですし……」


「では、もう一つ訊ねるが……その万に一つの勝機を潰すために、この山に本陣を置く大将は、何をしなければならないか?」


「それはまた難しい質問ですな。一応お訊ねしますが、豪雨が降っていることを前提にお答えすればよろしいので?」


「頼む」


「では、お答えしますが……」


そう前置きをして源五郎が言ったのは、万一をどうしても避けたいのであれば、挑発に乗らずに守りを固める事、この山に城を築く事、更には……雨が降ったらすぐに逃げるという事だった。


「逃げるって……」


「雨宿りをしようとする兵を止める事はできないでしょう。それゆえに、石橋を叩いて渡りたいのであれば、重要性が特にないこの山にこだわることなく、5千の兵を率いて南へ退かれるのがよろしいかと」


それなら、兵は雨宿りをするわけにはいかないから付き従うことになるし、南に行けば行くほど、今川の勢力圏の奥へと入っていくのだ。わずか2千の兵では、どうする事もできなくなると源五郎は説明してくれた。


「しかし、大蔵様。いきなりどうされたのですか?斯様にわずかな供だけで、こんな所にやってきたこともそうですが、そのような質問をされて……」


「まあ、色々と事情があるのだ。武田に漏らすわけにはいかぬから、詳細は言えぬがな」


武田どころか、藤吉郎たち身内にも漏らすわけにはいかない前世の秘密。いつの日にか、言わなければならない時が来るかもしれないけれども……今はまだその時ではない。


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