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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第3章 駿河・出世編

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第109話 嘉兵衛は、兼務発令で忙しい日々を送る

永禄元年(1558年)5月下旬 駿河国駿府 松下嘉兵衛


勘定奉行に加えて駿府町奉行を兼務する事になり、これまでの『書類が回ってきたらサインするだけ』の簡単なお仕事から脱して、今の俺は非常に忙しい。


「殿……そろそろ、町奉行所へ」


「済まぬが弥八郎。もう少しだけ待ってくれ。あと2通で終わるから」


ちなみに、勘定奉行の職務が増えたわけではない。俺が行うのは回ってきた書類の確認と署名で、友野殿や配下の役人たちとの事務折衝は、藤吉郎に委ねる事にしたのだ。


「それじゃあ、藤吉郎。後は頼んだぞ」


「お任せ下され」


もちろん、何か問題が生じた時は、勝手に判断して進めずに必ず俺に相談するようには言い付けてある。そして、残りの2通にも署名を終えた俺は、藤吉郎にそれを手渡して見送った。


「あの……くどいようですが、本当に大丈夫なので?」


ただ、その方針に異を唱えるのは弥八郎だ。


「なんだ、弥八郎。監視役をつけろとまた言うのか?」


「ええ、裏切るとかそういう心配をしているわけではありませぬが……特に今は失恋をしたばかりですからな。いくら藤吉郎殿が有能であっても、気持ちが何かと空回りして、いつもならばやらない仕出かしをしてしまう恐れはございましょう」


「なるほど……」


確かに一理あるな。俺も藤吉郎が信頼を裏切るようなことをするとは思っていないが……今の心理状況ならば、何かしらの失敗、暴走はあり得るかもしれない。


しかし、監視役か……。人選も含めてさて、どうしたものか。


「お目付け役として、お鈴殿をお付けになられては如何ですかな?」


「お鈴殿を?」


「おとわ様もご懐妊中にございますれば、殿のお側にこのまま置き続けたら、この先いずれ過ちを犯される事でしょう。そうなる前に……と思いましてな」


「な、何を馬鹿な事を……」


ただ、そう言いながらも、弥八郎の言い分は間違っていない。


たまに……そう、ごくたまにだが、ムラムラとして押し倒したいと思う時がないわけではないのだ。今はまだ鬼神となったおとわの姿をイメージして我慢できてはいるが、いつまでもつかと問われたら、自信はない。


「それに……失恋の傷を癒すには、新しい恋は妙薬となり得ましょう」


「それってつまり、お鈴殿を藤吉郎と娶わせては……という事か?」


「左様にございます。藤吉郎殿だけではなく、お鈴殿や仙千代様の将来を思えば、そう悪い話ではないかと。如何ですか?無論、当人たちにその気が芽生えなければ、それまでではありますが……」


「ふむぅ……」


弥八郎の言うとおり、藤吉郎とお鈴殿が一緒になってくれたならば、俺としては色々と好都合だ。過ちを犯しておとわにお仕置きされる心配もなくなるし、それより何よりも藤吉郎が幸せになるのであれば……と。


だから、その提案に乗る事にした。部屋の外に控えていたお鈴殿をこの場へと手招きする。


「お呼びでしょうか?」


「聞こえていたとは思うが、お鈴殿。そういうわけで、これよりは藤吉郎を助けてやってもらいたい」


「畏まりました。ちなみに、それならもうこの着物は着替えても?」


今のお鈴殿の姿は、ナース服だったりする。これまで日替わりでありとあらゆるコスチュームに袖を通してもらっていただけに、少し残念に思いつつも、もう俺の手元から離れる以上は止め立てするわけにはいかない。


「ああ……構わぬ」


「いや、それほどまで辛そうになされずとも……」


実際にもうあの谷間やチラチラ見えるフトモモを覗き見る楽しみがなくなるのだと思うと、何だかやる気も消失しそうになるが、全ては藤吉郎の為と思って承諾し、俺はお鈴殿を見送った。


「では、殿。そろそろ……」


「ああ、わかった。参ろうか」


そして、次は俺が町奉行所に向けて出立する番となったのだが……


「殿、申し上げます!」


「なんだ?」


「只今、無人斎様が火急の用件でお目に掛かりたいとお越しになられております」


「無人斎様が?」


どうやら、今日はいつもに増して忙しいようだ。


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