表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/32

第26話竜馬の本当の最期

世界恐慌の暗雲が世界を覆う中、坂本竜馬とフランクリン・ルーズベルトは、当時最新の経済理論であったケインズ経済学に光明を見出し、「ニューディール政策」を大胆に推し進めた。未曽有の不況に対し、政府が積極的に介入するという大きな政府の理念のもと、アメリカ合衆国は孤軍奮闘するかのごとく、奇跡的な景気回復の兆しを見せた。しかし、世界的な経済の停滞は深く根を下ろし、その潮流を変えるには至らなかった。


大英帝国とフランス共和国は、自国の経済圏を死守すべく、ポンドブロック、フランブロックという排他的なブロック経済圏を構築した。それは、他国の苦境を顧みず、自国第一主義という、歴史が幾度となく繰り返してきた愚行に他ならなかった。主要国の経済圏から締め出されたドイツ、イタリア、そして日本は、閉塞した状況を打破するため、好戦的な対外侵略という危険な道へと傾斜していく。国内では極右政党が勢いを増し、理性的な議論は掻き消され、世界は凄惨な大戦へとツカツカと足を踏み入れていく。


イタリアではベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党が、ドイツではアドルフ・ヒトラー率いるナチスが、そして日本においては軍部が実権を掌握し、近隣諸国への侵略を開始した。世界は連合国と枢軸国という二つの陣営に分かれ、互いに憎悪と敵意を燃やす中、竜馬とルーズベルトは、なんとか平和的な解決策を見出そうと奔走していた。しかし、時代の潮流はあまりにも強く、二人の懸命な努力も虚しく、ついに開戦の時を迎えてしまう。


竜馬は、戦争を食い止めようと、危険を冒して日米間を何度も往来し、双方の指導者たちに和平を訴え続けた。彼の言葉は熱を帯び、過去の功績を盾に必死の説得を試みたが、時代の狂騒は人々の耳を塞ぎ、彼の声は誰にも届かなかった。


そんな中、竜馬が強硬に反対していた原子爆弾の開発が進められていた。ルーズベルトは、その恐るべき兵器の使用には慎重な姿勢を示唆していたが、戦況が悪化するにつれ、その決断は不確実なものとなっていった。そして、事態は最悪の方向へと進む。ルーズベルトが急逝し、ハリー・トルーマンがアメリカ合衆国大統領に就任すると、竜馬は政治の中枢から遠ざけられ、影響力を失っていく。トルーマンは、広島と長崎への原子爆弾投下を独断で決定した。


連合国側は早くから反ファシズムを掲げ、大西洋憲章によって戦後の新たな国際秩序を示し、多くの国々の支持を集めた。それに対し、ファシズム諸国は、自国民の優越性を声高に叫び、それぞれの支配圏の確立만을目指し、世界に広く訴えかける普遍的な理念を持つことはなかった。さらに、ファシズム諸国の暴力的な占領地支配は、占領地域の民衆の激しい抵抗運動を引き起こした。その結果、ファシズム諸国は事実上、全世界を敵に回すことになり、破滅的な敗北を迎えることとなった。第二次世界大戦の犠牲者は、軍人・民間人を合わせて数千万人に上ると言われ、そこには人種的・宗教的差別による追放や大量虐殺も含まれ、戦後も各地で多くの難民を生み出した。


連合国側には、自由と民主主義という確固とした「哲学」が存在した。ファシズム諸国には、そのような普遍的な価値観は存在しなかった。より深く考察するならば、連合国側には坂本竜馬という、世界を俯瞰し、人類の未来を見据える視点を持つ人物がいた。一方、ファシズム諸国には、そのような存在はいなかった。本来、日本人であったはずの竜馬が、日本の側にではなく、連合国側に身を置いたことは、歴史の残酷な皮肉と言わざるを得ない。


終戦後、焼け野原と化した東京、そして原子の炎に包まれた広島と長崎を、竜馬は憔悴しきった姿で訪れた。進駐軍が後始末をする、無残に腐敗した夥しい数の遺体を前に、竜馬は言葉を失い、ただただ涙を流しながら何度も何度も深く頭を下げた。

「すまんのう…、すまんのう…。わしが、わしが何も考えずに、ただ面白いことばかりを追い求め、世界をこんなにも酷い目に遭わせてしまった。許してつかあさい…」


アメリカへ帰国した竜馬は、自らの犯した罪の深さを痛感し、深い絶望に苛まれていた。1946年、彼は戦争を止めることができなかった責任、そして自らの行動が招いた悲劇の大きさに耐えかね、ニューオーリンズの自宅で、誰にも看取られることなく、介錯も求めずに切腹という壮絶な最期を選んだ。3日3晩、腹を切り裂かれたまま、飲まず食わず、眠ることもなく、彼はただひたすら自らの罪を償うように苦しみ続け、ついに111年の生涯を終えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ