第22話アンドリュー・カーネギー
Andrew Carnegie(1835.11.25~1919.8.11)。工業化、都市化の進展、大量の移民の流入というアメリカの著しい変化と発展の時代に、貧しい移民の家族から身を起こし、勤勉と才覚によって一代で巨万の富を築いた大企業家。
アンドリュー・カーネギー。スコットランドに生を受け、アメリカの近代史において「鉄鋼王」と称えられた偉大な実業家。その功績は、アメリカの黄金時代の栄華を象徴する伝説的人物としても刻まれている。
坂本竜馬、アンドリュー・カーネギー、ジョン・ロックフェラー。彼らの関係は、実は経済や金融という意外な接点から始まった。しかし、時を経るにつれ、互いの稀有な才能に惹かれ合い、生涯にわたる大切な親友として、また互いの成功を意識し合う良きライバルとして、複雑で重厚な関係を形成していくことになる。
竜馬は、カーネギーの用心棒という、意外な形で彼のかたわらに長く仕え、その仕事ぶりを間近で見て、 彼の薫陶を受けていた。しかし、カーネギーから竜馬が学んだものは、金融ビジネスのノウハウよりも、スペンサーの進化論的社会学をはじめとする、より抽象的で哲学的な思想的な側面が大きかった。そして何よりも、カーネギーの胸の奥底に燃える、熱心な世界平和への強い衝動は、竜馬の哲学に深く共鳴し、大きな刺激を与えたのだ。
カーネギーは、その先見で竜馬の人間的な才能を認め、柔和な言葉を時おりかけた。「Ray。金持ちになるための一番の秘訣はな、人生を心底から楽しむことだ。楽しい人間の周りには、不思議とお金も人も自然に集まってくる。おまえには、その稀有な才能がある。株の才能は、残念ながら全くないようだがな!(豪快に笑う)」
また、カーネギーは、竜馬の天才的な長所を見抜いていた。「人間を大切にしなさい、Ray。人と人とを上手く繋ぎ合わせる、その特異な才能こそが、おまえの最大の美徳だ。取り柄だと言ってもいい」と、その不可思議な総合知的な人たらしぶりを高く評価していたのである。鋼のような強靭な精神を持つカーネギーにとって、水のように柔軟で、あらゆる人々を自然と惹きつける竜馬の存在は、自身の硬度な人生観に、良質なスパイスを添えるものだったのかもしれない。




