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第21話ジョン・ロックフェラー

John Davison Rockefeller(1839.7.8~1937.5.13)。アメリカの石油王。ロックフェラー財閥の始祖。ニューヨーク州の行商人の家に生まれ、米資本主義の発展期、一代で巨富を築いた。引退後は慈善事業に専心、学術・文化・美術・福祉の発展に寄与した。


ジョン・デイヴィソン・ロックフェラー・シニア。1839年7月、アメリカに生を受けたこの男は、後に「石油王」と称えられ、合衆国の産業史に金字塔を打ち立てる実業家、そして現代的フィランソロピーの礎を築いた慈善家となる。


1870年、ロックフェラーはスタンダード・オイル社を創業。その手腕は凄まじく、ピーク時にはアメリカの石油市場の90%を掌握するという、前代未聞の独占体制を築き上げ、アメリカ初のトラストを結成した。1897年に事実上の引退を迎えた後、彼はその莫大な富を、医療、教育、科学研究の促進を目的とした財団設立に注ぎ込み、現代の慈善活動のあり方を根本から定義し直した。彼の資産はピーク時には9億ドルに達し、それは当時のアメリカ経済の1.5%以上という、天文学的な数字であった。物価変動を考慮に入れるならば、彼は史上最大の富豪とさえ言われている。


引退後の40年間、ロックフェラーはその資産の大部分を、慈善活動の現代的かつ体系的なアプローチの構築に費やした。彼が創設した財団は、医学研究を飛躍的に推進し、鉤虫症や黄熱病といった疾病の根絶に大きく貢献した。また、今日の知の殿堂たるシカゴ大学とロックフェラー大学は、彼の先見の明と惜しみない投資によって建立された。


熱心なバプテスト信者であり続けたロックフェラーは、生涯にわたり米国バプテスト同盟を支援し、酒とタバコを決して嗜むことはなかったというストイックな一面も持っていた。


そんなジョン・ロックフェラーにとって、謎めいた日系アメリカ人「Ray Sakamoto」こと坂本竜馬との関係は、親友であると同時に、時にライバルでもあるという、奇妙な均衡の上に成り立っていた。アメリカ資本主義の洗礼、そしてウォール街の市場原理に基づく流儀を竜馬に叩き込んだのは、紛れもなくロックフェラーその人であった。


その高度に洗練された、ある意味では功利主義的とも言えるロックフェラーの「ズル賢さ」を、理想主義的な竜馬は内心嫌悪していた。しかし、ジョン・ロックフェラーという人間そのものに対しては、不思議な友情と、深い尊敬の念を抱いていたのだ。


一方のロックフェラーも、この東洋から来た元サムライであり、理解しがたい才能を持つ男「Ray Sakamoto」の存在を、当初は持て余していた。しかし、時が経つにつれ、彼の内に秘められた特異な才能、そして未来を見据える複眼的な異能を、徐々に認めざるを得なくなっていく。ウォール街のすれっからしの中で生き抜いてきたロックフェラーにとって、竜馬の天真爛漫さと、時に見せる動物的な勘は、全く新しい種類の脅威であり、同時に計り知れない魅力でもあったのだ。


今日、ロックフェラー家が親日的な傾向を示す背景には、間違いなく、ジョン・ロックフェラーと坂本竜馬という、偉大な二人の間に育まれた友情のきずなが深く根付いていると言えるだろう。石油王と、海を渡ったサムライ。彼らの間に交わされた言葉、共有された時間、そして互いに認め合った才能こそが、後年のロックフェラー家の対日感情を形作っているのだ。


ロックフェラーは日本に居場所がなくなりアメリカ合衆国に渡ってきた若き日の日本人研究者、野口英世にも莫大な投資をおこない、野口を一躍世界のサイエンス界のスターダムに押し上げた。それに応え野口英世は、梅毒菌の純粋培養、黄熱病の研究などセンセーショナルな研究成果を連発した。実はこの野口英世へのロックフェラーの信頼も坂本竜馬の存在が大きかったのである。


「低学歴」の天才、野口英世の存在を疎ましくおもっていたのは、青山胤通をはじめとする東大医学部閥などで、野口英世の味方をした日本人研究者は北里柴三郎などごく少数のリベラル派のみであった。日本理科研究界の言い分は、要するに「学歴」がないくせに、東大でもないくせに、あんな天才的な業績を次々と打ち立てるなんて生意気だというものである。


竜馬は、日本を追われた若き不遇の天才、野口英世に自分の人生を重ね合わせて見ていたのだ。ロックフェラーに、

「ノグチをどう思う?Ray?」と訊かれた竜馬は、

「結果が出るかどうかは分からない。でもノグチは日本にはもう居場所がない研究者。アメリカが最後の居場所なんだ。なんとか期待をかけてやってくれないか?ロックフェラー」と答えていた。

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