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第一話 私がダンジョンを造るワケ

 そもそも、なぜ私がダンジョンを造ることになったのか…それにはこの国の歴史と我が一族の成り立ちが関係してくる。


 私が暮らしているここ、ディスティニア王国はその昔、人と妖精が手を取り合って暮らす素敵な国だった。

 人間は技術を進歩させ、妖精は魔法を使い…国を豊かなものへと発展させてきた。

 …しかし、時が経つにつれてこの国から妖精の姿は消えていった。

 王国の人間が妖精を蔑ろにした…とかそういう理由ではなく、単純に妖精が暮らせる環境ではなくなったのが原因だった。

 妖精が暮らしていくには、神代から存在する神秘の力…通称"マナ"と呼ばれるものが必要となる。

 だが、世界に満ちるマナは時が経つにつれ段々と薄れていった。

 その結果、妖精たちは王国で暮らしていくことが出来なくなり…泣く泣く、マナで満たされた森や湖などに移り住むことになった。

 人間と別れて暮らすことになった妖精たちは、いくつかの問題を抱えることになる。

 その一つがダンジョン製作であった。

 そう。そもそもダンジョン製作とは人間が行なっていたわけではなく、妖精が人間のために行なっていたことなのだ。


 当時はモンスターの襲来や魔族との戦争が絶えない時代であったため、戦闘力の乏しい人間は戦闘に備え訓練をしなければならなかった。

 しかし、その時代は何処へ行くにしても危険が伴った。

 そのため、遠出する必要のある実践訓練を行うのは困難を極めた。

 これでは人間たちが成す術なく死んで行くだけだとその様子を見て悟った妖精王オーベロンは、配下の妖精にこう言いった。

「お前たち。人間のために、人間がモンスターと対抗する術を学べる場所を造ってくれ。それはきっと、人間の役に立つ」

 妖精は人間の役立つことを好む性質を持っていたため、妖精王のこの言葉は妖精たちのやる気に火をつけた。

 かくして、妖精たちによる人間が戦闘訓練を行う場所の製作が始まった…これが後のダンジョンである。

 これにより、人間は魔族やモンスターと対等に渡り合える力を手に入れたのだ。

 問題が解決したのならば、ダンジョンは造らなくても良いのでは無いか?と考える者もいるだろう。

 しかし、これ以降の世界がどうなるかはわからない。

 今まで以上の戦争やモンスターによる災厄が訪れる可能性もある。

 そう考えた妖精王は、魔族との戦争が終結した後も妖精たちにダンジョン製作を行わせた。

 全ては良き隣人、良き友である人間が不測の事態で命を落とさないためであった。


 ………しかし、そうも言っていられない事態が生じてしまった。

 妖精がマナ不足により王国で生きられなくなってしまったのだ。

 妖精王は考えた…人間たちのためにダンジョンを造ることは大切である。

 だが、そのために我ら妖精が滅ぶのも違うだろう。

 妖精王は思案を重ねたが、それでも解決策を見出せなかった…。

 そんな時である。

 ある一人の妖精が妖精王の元へやって来た。

 この妖精は妖精王の友人で、人間の女を嫁にした男だった。

 妖精と人間の恋愛はあれど結婚まで至ることは中々なかったこともあって、妖精王はこの男とその家族を大変気に掛けていたのだった。

「おや?我が友、オーゲルレイエじゃないか!こんな時にどうしたんだい?他の妖精たちは皆、移住の準備をしているというのに」

 妖精王の言葉にオーゲルレイエと呼ばれた妖精は戸惑い、そして意を決したのか神妙な顔持ちで妖精王に話し出した。

「その…悪いがオーベロン。私はお前たちと一緒に行くことができない。私には…愛する妻がいる。それに、彼女と私の間には生まれて間もない我が子だっている。そんな大切な人たちを置いていくなんて出来ないんだ。…妻を大切にしているお前ならわかるだろう?」

 妖精王は困惑した。

 確かにオーゲルレイエは妻を…家族を愛している。

 しかし、そのために王国に残ると言うのか…?自らの命を捨てて…。

 瞠目した妖精王にオーゲルレイエは続けた。

「だからと言って、私は生きるのを諦めたわけではない。それにな、オーベロン。私はこの国の公爵でもある…その責務を投げ出すなんてことは出来ないし、したくもないんだ。そんな私の気持ちを汲んで、国王ディスティニアは私が生きられるマナに満ちた土地を探し領土として授けてくれた」

 それは、妖精王すら知り得ぬ情報であった。

 国王ディスティニアはオーゲルレイエの気持ちを汲んで、妖精王であるオーベロンには秘密にして各地の調査を行っていたのだ。

 そして見つけた。

 ディスティニアの領土の中でも極めてマナの多い土地を妖精であるオーゲルレイエが生きていくことのできる土地を…。

 けれど、その地にあるマナの量は妖精王が移住地に選んだ森や湖のマナよりも圧倒的に少なかった。

 それでも、彼が一生を生きる分には十分な量のマナをその土地は有していた。

 オーゲルレイエはそのことを妖精王に伝え、そしてこう告げた。

「だからね、私は君と共にこの地を去ることは出来ない。オーベロン、我が友よ。どうかこのことを許してほしい」

 妖精王は考えた。

 確かに、オーゲルレイエとその家族を引き裂くことは出来ない。

 彼の決めた道を否定することは、例え妖精王であったとしても許される行為ではない。

 しかし、そうは言えども理由なくこの地に彼を残すのは…些か問題になるのでは無いか?

 そんなことを考えていた妖精王の脳裏に一つの案が浮かんだ。

「オーゲルレイエ、君…ダンジョン製作に関わったことがあったよね?」

「あ、あぁ。最初のダンジョンの製作とそれ以降のダンジョンは製作顧問として携わっていたけど…それがどうしたのかい?」

 その言葉を聞いた妖精王はにこやかな笑みを浮かべ、オーゲルレイエに向けてこう告げた。

「わかったよ、オーゲルレイエ。君がこの地に残ることを許そう。では…この地に残る君に餞別として新たな姓を授けよう。アルベリッヒ。僕の名に関連する姓だ。これからはオーゲルレイエ・アルベリッヒと名乗るようにしなさい。それに伴い、君たち一族に新たな仕事を命じよう。それは…ダンジョン製作だ」

 妖精王の言葉にオーゲルレイエは大いに驚いた。

 新たに与えられた姓もそうだが、まさかダンジョン製作を命じられるとは思ってもいなかったからである。

 そんなオーゲルレイエに妖精王は続けた。

「ダンジョンはこれからも人間に必要なものとなるだろう。けれど、僕たちは妖精は人間とは離れた場所で暮らすことになってしまった。そんな状態ではダンジョンを造ることは不可能だ。…でも、オーゲルレイエ。君は残ると言ってくれた。君は、これからも人間と共に生きると誓ってくれた。そんな君だからこそ…僕は君に今後のダンジョン製作を任せたい。人間を守るために、人間の成長のためにこれからもダンジョンを造り続けてくれ」

 そこには妖精王としてではなく、人間を友として大切に思う妖精の気持ちがあった。

 だからこそ、オーゲルレイエはその願いを請け負った。

「わかったよ。我が友、妖精王オーベロンよ。君が私に託した最後の命令…いや、願いを私たち一族は忘れることなく紡いでいこう。…ありがとう、オーベロン」

「なーに、どうってことないさ。僕だって奥さんと離れることはしたく無いし、子供が出来たらきっと君と同じことを思うさ。

 …任せたよ、オーゲルレイエ。我が一生の友よ」


 こうして、一人の妖精を残し全ての妖精がこの国を去っていった。

 一人残った妖精は、友である妖精王との約束を忘れることなくダンジョン製作を続け…そして、その役目は子孫に受け継がれていった…。

 その子孫の一人が私、ソフィア・アルベリッヒなのである。


 …なんて堅苦しく語ってはみたものの、実際はそこまで堅苦しい内容ではなかったようだ。

 実際は、

「オーゲルレイエ。君、人間の家族のためにこの地に残るなら、これからのダンジョン製作は君たち一族に任せるよ〜」

「わかった!頑張るよ!」

 くらいの話だったと聞く。

 先ほどの話からは考えられない内容だけど、妖精というのは本来、お気楽な生き物だからこっちの方が正しいまである。

 そういうわけだから、私は役目とか気にせずにダンジョン製作を楽しんでいる。

 どんなダンジョンを造ろうかとか、どんなギミック、モンスターを配置しようかとか…そういう楽しさや、やり甲斐がダンジョン製作には存在する。

 それに、攻略されるかされないかのギリギリのラインを攻めるのもダンジョン製作の醍醐味も忘れちゃいけない。

 まぁ、つまり何が言いたいかというと…役目とかそういうのは関係なくて、ただダンジョン製作に魅入られたから私はダンジョン製作を続けているのだ。

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