プロローグ
ダンジョン。それは世界各地に現れる遺跡や迷宮、その総称。
ダンジョンの形態は様々で、洞窟や森、火山のような自然に関するものもあれば、古代遺跡や地下迷宮、海底神殿などの人工物に関するものも存在する。
また、ダンジョンというものは不思議なもので、一度攻略されてしまうとそのダンジョンは消滅してしまう。
月日が経つとダンジョンのあった場所には、新たなダンジョンが生成されているという。
そんなダンジョンには、様々なモンスターが存在し、冒険者の攻略を妨害してくる。
最深部にはボスモンスターと呼ばれる強力な敵が存在し、“レアアイテム”と呼ばれる希少な武器や防具などを守護している。
そんな“レアアイテム”は、武器や防具としての性能もさることながら、市場価値も非常に高い。
自身のステータスに合わなかった場合でも、売りに出せば高値が付くということだ。
自身の強化、または高額な資金の確保に役立つため、冒険者たちはこぞってダンジョン攻略に励むようになった。
そんな冒険者たちの様子を見ていた学者がとある疑問を口にした。
「しかし、このダンジョン…一体どのようにして現れているのだろうか」
この如何にも誰もが考えそうな疑問が、学会で物議を醸した。
意外なことに、この誰もが考えそうな疑問を当時の人は誰も考えたことが無かったのである。
ー自然生成か?
いや、洞窟や森のダンジョンならばいざ知らず、遺跡や迷宮が自然生成されることはまずない。
自然生成では、人間が作り上げた文明の遺産を再現することは出来ないという調査結果が挙がっている。
この調査結果は、王立総合研究所に所属する地質学者と魔術師の合同調査によるものである。
そのため、信憑性は高い。
ー神々の創造物か?
いや、神々が地上に贈る創造物は、剣や盾、杖などの武器や防具のみとされている。
そして、創造物が地上に贈られた場合は必ず、神々から神官へお告げが下される。
このことから、ダンジョンは神々による創造物ではないことが伺える。
『ダンジョンはどのようにして出現するのか』という問いは、多くの魔術師や学者が議題に挙げ、その度に調査や研究が行われた。
しかし、魔術や技術が進歩した今でも、この謎の解明には至っていない。
______________ダンジョン研究学会誌
「うーん。まぁ、この様子だと当分は解明されないかなぁ?」
興味本位で手に取った学会誌を片手に、私は一人呟く。
この学会誌に載っているダンジョンに対する考察は、自然生成や神の創造物といった面白い見解が沢山綴られている。
どうしたら、ダンジョンは神の創造物という発想が出てくるのだろうか?
まぁ、長年解明されないとこういった奇想天外な考察も出てくるのかな?
いや、それにしたって神の創造物は無いだろう…。
そんなことを考えながら、学会誌を棚に戻す。
さて、次は何をしようか…なんて考えていると、軽快な音と共に一つの通知が私の元に届いた。
その通知の内容を見て、私は笑みを浮かべる。
ダンジョン研究学会の人々が見たら、驚いて腰を抜かしてしまいそうな情報がここにはある。
《 ダンジョン攻略 》
以下のダンジョンより、冒険者によるボスモンスターの撃破及び、レアアイテムの確保が確認されました。
・マナナン海底神殿
規定に基づき、上記のダンジョンを攻略済みと判断しました。
これより、ダンジョンの削除を行います。
「攻略されたようだね。攻略されたのは…マナナン海底神殿?ふーん。難易度高めに造った自信作だったんだけどね…」
ダンジョン攻略と書かれた通知を開き、詳細を表示する。
そこに表示されたのは、ダンジョンの内部構造、配置されたモンスター、ギミックの詳細の数々…紛れもないダンジョンの構成案であった。
「まぁ、攻略されちゃったものは仕方ないか。ダンジョンは冒険者に攻略される為にあるものだしね…。でも、こう易々と攻略されるのはなんか不甲斐ないなぁ…」
詳細画面をスワイプし、次に表示したのは冒険者がダンジョンに挑んだ回数、攻略までにかかった時間、冒険者のレベルや装備といった攻略した側の情報。
こういう情報は次のダンジョンを作る際の目安となる。
今回のダンジョンは推奨レベルがLv.65と高めに設定してあった。
案の定と言うべきか、今回攻略したのは場数を踏んだ上級冒険者パーティーで、平均レベルがLv.75と推奨レベルよりもLv.10上回っている。
「あぁ、そうか。マナナン海底神殿周辺のエリアはレベルの高いモンスターが多いんだっけ?だから、上級冒険者が沢山居るのかな?なら、次はもう少しダンジョンのレベルを上げるとするかぁ…」
ダンジョンの詳細情報を閉じ、新たにダンジョン構成のウィンドウを表示する。
これが私、ソフィア・アルベリッヒの趣味兼お仕事。
ダンジョン製作である。




