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短編

トイレ中にループした件

作者: 神通百力

 私は急にお腹が痛くなった。日課の散歩中にお腹が痛くなるなんて最悪だ。今朝も大便をしたばかりだというのに、お腹の調子が悪かったのだろうか。

 私は慌てて辺りを見回した。確か近くに公衆トイレがあったはずだ。斜め左に公衆トイレがあるのが見えた。

 私は臀部(でんぶ)に力を込めると、早歩きで公園内に足を踏み入れ、公衆トイレに向かった。

 女子トイレに駆け込むと、一番奥の個室に入って鍵をかけた。ズボンとパンティーを膝まで下ろし、便座に座った。その直後、勢いよく大便が放出され、便器内にボトリと落ちた。

 私はホッとして息を吐いた。危ないところだった。あと少し遅ければ、漏らしていたところだ。近くに公衆トイレがあって助かった。

 すべて出し切り、私は軽く口笛を吹きながら、尻を拭いた。便座から立ち上がると、水を流し、個室を出た。

 鏡の前に立ち、念入りに手を洗うと、私は公衆トイレを後にした。


 ☆☆


「あれ?」

 私は首を傾げながら、辺りを見渡した。そこはどう見ても、先ほどまでいたトイレの個室だった。

 何で私はまたトイレの個室にいるのだろうか? 私は確かに公衆トイレを出たはずだ。公衆トイレから出た記憶はあるし。ただ公衆トイレから出た後の記憶がなかった。

 私は公衆トイレから出た後、どうしたんだっけ? 散歩の続きをしようとしたのだろうか。それとも家に帰ろうとしたのか。

 考え込んでいると、私は無意識の内にズボンとパンティーを膝まで下ろし、便座に腰かけていることに気付いた。

「え? 何で?」

 私が自分の行動に驚いた時、勢いよく大便が放出され、便器内に落ちた。さっき終えたばかりだというのに、次々と大便は出てきた。

 いったいどうなっているんだろうか? そう思ったが、肛門から大便が出てくるのは気持ち良かった。何だか分からないけど、私はスッキリした。

 私は尻を拭くと、水を流し、手を洗ってから、公衆トイレを出た。


 ☆☆


「え? また?」

 私はまたもやトイレの個室にいた。どうなっているのかと混乱していると、私は先ほどと同様に、無意識の内に便座に腰かけていた。

「もしかして私、ループしているの?」

 私は遅まきながら、ループの可能性に思い至った。何がきっかけで発動したのかは分からないけれど、公衆トイレを出たはずなのに、個室に戻っていることを考えると、ループの可能性を疑わざるを得ない。

 死ぬ直前にループするのならば、まだ分からなくもない。ただ大便の直前にループするってどういうことなの? これってどういう種類の嫌がらせなんだろうか? 何で私はループのたびに、大便をしなければならないのだろうか?

 そう思っていると、さっきと変わらぬ勢いのまま、大便が便器内にボトリと落ちた。この状況にうんざりするが、お腹に溜まったものが体外に排出されるのは、何度経験しても、気持ちの良いものだった。だからといってループはご勘弁願いたいけど。

 私は尻を拭いてから水を流すと、手を洗い、もうループはしないでと願いながら、公衆トイレから出た。


 ☆☆


 私は思わず頭を抱えた。願いは虚しく、私はまたもトイレの個室にいた。これで何度目のループだろうか。

 いったいどうすれば、このループから抜け出せるのだろうか。そもそもループから抜け出す方法はあるのだろうか。

 考えを巡らしている間も、私は無意識にズボンとパンティーを下ろし、便座に座っていた。大便は勢いよく便器内に落ちる。大便がさっきからずっと勢いが良すぎて恥ずかしかった。もう少し上品に落ちてほしい。大便に上品さを求めても仕方ないけど。

 私はため息をつくと、尻を拭いて水を流し、手を念入りに洗い、足早に公衆トイレを後にした。


 ☆☆


「あはははっ! 私は一生、トイレから出られないんだ!」

 私はまたもトイレの個室にいたために、思わず笑ってしまった。大便のループから抜け出すことはできないんだと思ったら、何だか笑えてきたのだ。

「よし、決めた!」

 私は一生、ループから抜け出すことはできないだろう。ならば、このループという状況を楽しむことにしよう。

「私はもはや公衆トイレで大便をするだけの人間。大便をする以外に楽しみはないの!」

 私は満面の笑みで、勢いよく大便を放出した。


 ――公衆トイレで一生を過ごす覚悟を決めて。

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