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7 黄金と白銀


 ある程度案がまとまり、二人談笑しながら皇女の住む部屋へと戻る。


「この後は…、確か歴史の授業だったかしら?」


「はい、サーラ先生の授業が1時間程入っております」


「うん、予習もしてあるから大丈夫そうね。いつも予定を確認していてくれてありがとうロザリー」


「礼には及びません。護衛騎士であるわたしの役目ですから」


 ロザリーは、柔らかく笑う。ほとんど他の人には見せない顔だ。

 釣られて、エルフリーナも笑う。


 これを宮廷画家辺りが見ればきっと絵として残っていたかもしれない。

 

 それほどまでに美しい光景が広がっていた。金色と銀色が向かい合い、笑う姿はまるで宗教画から出てきた天使のようであった。


「殿下、少しお時間よろしいでしょうか?」


 焦った様子で侍女の一人がエルフリーナに声を掛ける。


「えぇ、大丈夫だけれどどうしたの?」


「隣国、オルメタから急に使者がやってきまして……」


  

 ロザリーは、眉をしかめた。


 オルメタはエルフリーナ様をなんだと思っているのだ。


出そうになった言葉を、そっとロザリーの前に腕を伸ばし、エルフリーナは静止した。


「本当に、急ね」


「えぇ、なんでもエルフリーナ殿下への贈り物に不備があったと言うことで今度謝罪の場を設けさせて欲しいと言伝を預かっております」


「もしかして、空箱だった件かしら?」


 伝言を伝えた侍女は困ったように頷く。

 彼女も何も知らないまま伝言を伝えろとだけ言われたのだろう。


 ロザリーは同情してしまった。

 忙しい王族に急な言伝をする役目は場合によって機嫌を損ねる事もあるから。

 

 それも、プレゼントが空箱だったというエルフリーナが機嫌を損ねていてもおかしくないことについてだ。


 ロザリーが文句を言おうとしたのをエルフリーナが止めた理由も分かる。


 ゆっくりと頭が冷えていくにつれ、申し訳ない気持ちが込み上げてきた。



「ねぇ、ロザリーいつくらいなら大丈夫そうかしら?」


 青色の瞳がロザリーを射抜く。咎めるような様子は一切無く、むしろいたわるような目だった。


「細かい予定は後で決めるとして、一ヶ月後あたりになると思います。後で一ヶ月後の予定は私の方で確認しておきます」


「ありがとう。場所は帝国で行う形で大丈夫かしら?」


「えぇ、そうなると思います。謝罪の場ですのであちらの国に行く形となりますと侮られる可能性が出てきますから」


 失礼のないように、言葉を精査しながらロザリーは言う。

 その間にも侍女は真剣に聞いていた。


「貴女、名前はなんて言うの?」


 エルフリーナが侍女に話しかける。侍女は少し驚いた顔をした後、「フィーネと申します」と言った。


「フィーネ、わたしの方から言っておくわ。誰に頼まれたの?」


「そ、そんな皇女殿下に頼むなど恐れ多いです」


「あら、いいのよ。伝言を頼んだ人に丁度、相談したいこともあったから」


「ですが、」


「お願い、ね」

 

 ニコニコと笑ってエルフリーナは言った。


「宰相閣下に頼まれまして…」


 このままでは押し問答になりそうだと思ったらしく侍女はどもりながらも答えた。


「わかったわ、ありがとう」


「では、失礼します」


  非常に申し訳なさそうにしながら侍女は皇女の前を去る。


「じゃあ、サーラ先生の授業に行きましょうか。その後は……」


 二人、話しながら長い廊下を進む。


 金色と銀色が窓差し込む光で照らされてその姿はまるで二柱の神のようだった。

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