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3 皇女と姫騎士


「そんな、大げさよ『聖女』なんて」

 

 困ったようにエルフリーナは笑う。けれど、聖女と呼ばれているのは事実だ。

天才的な回復魔術の使い手。野戦病因に行き、自ら怪我をした民を癒す心優しき皇女。それが、彼女の評価なのだから。

 

「民からの正当な評価でございます」


「わたしは、王族として当たり前のことをしているだけよ。わたしたちがこうして平和に生きていられるのは皇国民のおかげなのだから」


穏やかに皇女は微笑む。しかし、どれ程の人間が、王族が、貴族が彼女の語ったことをできるのだろうか。

 

あぁ、わたしの仕える主様は、どうしてこんなにも心まで美しいのだろう。

 

女神を崇めるかのようにロザリーはひざまづきたくなるものの、腕に抱える荷物のせいでままならない。


「そういえば、この荷物はなんなのでしょうか?」


「隣国からのプレゼントではないの?」


「そうなのですが、箱だけが入っておりまして。微妙に怪しいのです」


 かぱり、箱を開ける。中身は空っぽで何も入っていない。

 

「イタズラ……かしら?」


 不思議そうにエルフリーナは首を傾げた。ロザリーからすれば、イタズラどころの話では無い。が、主がそう思っているのなら納得しなければならないだろう。


「そうねぇ……お礼のお手紙だけ書いて出すわ」


 ロザリーの心中を読み取ったのか読み取らなかったのかは分からないが皇女は告げる。


「分かりました。では、私の方で準備させていただきます。今すぐ準備致しますか?」


「夜に書くから、その時にお願いね」


 ふわり、笑って彼女は告げる。ひとつひとつの動作ですら美しい。花咲いたような笑いだ。

 エルフリーナとの婚約も、こちらから提案したのではなくあちらの国から提案されたものだ。

 

 故に、破棄された所で痛い目に合うのは隣国、オルメタであろう。

 オルメタは、帝国に比べ小国である。小国だが、鉱山を多く有している。鉱山によって成り立っている国と言っても過言ではない。


 鉱山を有している、それが問題なのだ。周りの国はオルメタの鉱山を狙っている。いつ、侵略されてもおかしくは無い。ただ単に周囲の国が牽制しあっている為に何も起こっていないだけなのだから。

 

(まぁ、あの国が滅ぼされたところで私たちは困らないのだけど)


 ロザリーはエルフリーナにバレてしまえば怒られそうな事を考えてしまう。


「では、この後はどうなさいますか?」


 箱を片しつつ、ロザリーは問うた。


「今日は、孤児院へ行く予定だったはずよね?」


「はい、そのように聞いております。ですが、まだ予定よりも少し早い時間でして……」

 

「なら、プレゼントを買っていきましょう!」


「一応お菓子は用意してありますが」


 ロザリーの返事にエルフリーナは考え込んだ。


「なら、一緒に何がいいか考えるのはどうかしら」


 いい事を思いついたとばかりに彼女は言った。孤児院訪問にさえ心を砕く、心優しき皇女にロザリーは惚れ込んでいるのだ。


「では、侍女たちにも聞いて見ましょう」


「そうね!それが一番いいと思うわ」


 女子二人の談笑は続く。魔の手が、皇女の身に迫っているとも知らずに。


 

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