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17 届かないと思っていたのに

評価、ブクマありがとうございます!



 絢爛豪華たる会場。その会場の中でノアはただ黙々と仕事をこなす。

 

 何も起こらなければいい。


 だが、胸騒ぎがする。原因を探るべく会場に目を向けるが理由は分からない。ノアと同じ部隊に所属する者たちもいた。


 本来ならば、別の部隊が護衛に着く予定だったのだが、別の任務が長引いたせいでこの場所にいる。


 ロザリーは、どこにいるのだろうか?


 皇太子の方へと目を向ける。が、いない。ならば、と皇帝の方へ視線を動かすものの、いない。


 いつもならば、あの当たりで皇女と二人談笑しているのだが。


 胸騒ぎが収まらない。


「なぁ、ロザリーがどこに言ったか知っているか?」


「ん?ロザリンデ嬢なら皇女殿下を連れて会場を出ていったぞ」


 近くの同僚はそう告げる。


「それにしても、戻ってくるの遅すぎやしないか?」


 冗談めかして彼は言う。ノアは目の前が真っ暗になったような心地になる。皇女を部屋まで送った後彼が言うほど時間がかかるものだろうか?


 ノアは、ロザリーがエルフリーナの泣き止むのを待っていたことを知らない。


 が、その直感は当たっていたとも言える。


「どれくらい前に出ていったんだ!?」


「おい、掴むなよ。落ち着けって、だいたい六十分位前か?」


 大方、姫様の話でも、言葉が続く。それらを待たずにノアは飛び出す。


「ノア、おい、お前任務はどうするんだよ!」


「すまん、緊急事態だ」


 大きな声に反応した何人かの貴族が注目を向ける。が、警備の騎士が少し言い合いをしただけだと気が付くとすぐに興味を無くした。


 ――ロザリー、お願いだ。俺の前から居なくならないでくれ


 ノアは一人、薄暗い廊下の中を走っていった。




「っう、ううっ」


「おい、この嬢ちゃんすぐに起きやがったぞ」


「は?気のせいだろ。あのお貴族様の話だとかなりキツいクスリらしいぜ」


 ロザリーはうっすらと目を開ける。頭が霞がかったようで上手く働かない。


 ごとごと揺られている。多分馬車だろうか。口には布が巻かれており手足は麻の紐か何かで縛られているようだった。


「それにしても、この嬢ちゃんべっぴんさんだな」


「手は出すなよ。商品に手を出したら俺らが怒られる」


「わかってるって」


 話し方からして、貴族などの高位の人物では無さそうだ。


 だが、馬車は揺れが少なく貴族のもののようであった。


「門番も、御者が『お嬢様が御気分が悪いため早く帰りたいと申していて』とか言ったらすぐに通してくれるとはな」


「あれはびっくりしたな。オレは中を確認されるんじゃないかってヒヤヒヤしたぜ」


 下品な笑いが車内に響いた。


 頭が働くようになっていく。ロザリーは人さらいか何かに攫われたらしい。


「いいケツだな」


 むんずと、ロザリーの臀部がわしずかみにされる。


「んっ、んぐぅー」


「やっぱり起きてんじゃねぇかよ」


 縛られ、横にされた状態で上半身起こして必死に睨みつける。


「おー、こわいこわい」


 全く敬意も何もこもっていない声だった。


「嬢ちゃんが起きているならオレらは余計な話はできねぇな」


 兄貴分だと思われる方の男がもう一人に言った。


「いうて、もう少しのはず」


 何がもう少しなのか分からない。ロザリー以外の二人は少しの文言でわかるらしい。


 少しでも早く目覚めていれば。ロザリーに対する不埒な行動に対して反応を示さなければより多く情報を得られただろうに。


 段々と悔しい思いが募る。


「着いた、な」


「そうみたいだ」


 馬車の動きが止まる。窓もなく外が見えないため何処かもロザリーには分からない。


 昼間ならば、外からの声である程度の場所は把握出来たかもしれないのに、と歯噛みした。


 男は横にあった麻の袋を手に取る。


「さ、大人しくしてろよ?オレたちだって乱暴にはしたくないからな」


 なにせ、大切な商品だから。と、笑いながらロザリーを麻袋の中に入れようとする。


「んっう"ーっ」


 顔を横に振り、身体をくねらせ必死に抵抗する。意味は無いと知っていても。


 これから別の場所に輸送されるのであれば、多少なりとも時間は稼いでおくべきだ。


 そうすればきっと、騎士団の誰かが異常に気付いてロザリーを助けに来てくれるかもしれない。


 ふと、頭の中にノアが浮かぶ。


 すぐに妄想を振り払う。アイツが来るはずなんてない、と。


「活きがいいな、おい後ろから押さえてろ」


「おう」


 後ろから抱きついように押さえつけられる。と言うよりも持ち上げられた。


「んん、うー」


 そさて、そのまま足からすっぽりと麻の袋に入れられ、担がれる。


 多分、もう無理だろうな。


 ロザリーが、男の背に担がれ諦めそうになった時だった。


「ロザリンデ!」


 馬の駆ける音と共に来るはずがないと思っていた男の声がロザリーには聴こえた。

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