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14有り得ない事態


 あの日から、幾日かたった。


 雨が止んだ後、事後処理をして城に戻ると皇女にロザリーはを「どうだった?」と聴かれた。


「どうだった、と聞かれましても……」


「聞き方が悪かったわ。じゃあ、ノアとの仲直りはできた?」


「はい、理由は聞けずじまいでしたが」


「なら、良かった」


 エルフリーナが微笑んだ。ロザリーはエルフリーナの思惑も、ノアの考えも何も分からないままだった事に気づいてはいない。


 そして、運命の日がやってくる。


 会談は、何事も無いかのように進んだ。ロザリーが、皇女の後ろに帯刀して控え、護衛を兼ねた騎士がいく名かいた。


 軽薄そうなオルメタの外交官は、会談に入るとエルフリーナ、帝国への正式な謝罪。この場に王国の血族がいない理由について話した。


 やはり、荒れているらしい。


 元々、王国の王子はエルフリーナとの婚約を良くは思っていなかった。だが、曲がりなりにも政略結婚、反対する事も反抗することも無く受け入れていた。


 エルフリーナとしては、政略結婚とはいえ良い夫婦になれたら良い。という考えだった事をロザリーはよく知っている。


 だが、王子の通う学園にとある少女が入学してから大きく変わっていったと外交官は語る。


 少女の名前は、メイリリーと言うらしい。ただの男爵家の娘。今まで一切社交界などに出ていなかった事から庶子であったのではないかと噂されているらしい。


 ロザリーは眉をひそめた。何故、その娘が原因になるのか分からなかったからだ。

 ちらりと、己の主人を見る。皇女は、微笑みを称えたままの表情で、内心は読み取れない。


 外交官は言葉を続けた。


 曰く、少女は王子とその側近候補を全て篭絡したのだと。


 有り得ない言葉にロザリーは唖然とし、その後の話を覚えていなかった。


 ロザリーは、ただ、何も言えなかった。


「ロザリー、大丈夫?」


 心配そうな顔でエルフリーナが立ち尽くすロザリーを覗き込む。どうやってここまで帰ってきたのかすらも覚えていない。


「えぇ。ですが、あまりにも衝撃的で……」


「まるで、今流行りの娯楽小説みたいな話だったわね。とても生々しかったわ」


 ロザリーとしては、理解が出来ない。ここまで優秀な婚約者がいながら馬の骨とも分からぬ令嬢に王子がなびく理由が。

 ましてや、側近達もだ。王子を諌めることもせず、自分達も色恋に溺れる。

 下級の貴族だけの話ならまだしも、国家を巻き込んだ出来事なのだと信じたくはなかった。


「どんな、ご令嬢なのかしら?」


 エルフリーナの言葉にロザリーは答える。


「可愛らしい方だと言っておりましたね」


「そうね、天真爛漫で可愛らしい子だと言っていたわね」


 ロザリーは混乱した頭を整理しようとする。けれど、事実が受け止められない。否、受け止めたくない。皇女がここまでの事件を引き起こした国に嫁ぐということを考えたくはなかったから。


「私がオルメタに行くのも流れそうね」


「流れはしないと思いますが、多少時間がかかるかと思います」


 ロザリーは、ぐちゃぐちゃの頭を必死になって働かせた。王太子が王位を次ぐ可能性がほぼ無くなり、改心しなければ廃嫡になるであろう事。

 そして、第二王子が王太子に立太子させられるであろう事。


 王太子が死亡でもしない限りは起こらないはずの事が起こっている。


 控えめなノックが二人だけの部屋に響く。


「何かしら?」


「エルフリーナ様、お茶の準備が整いました」


 侍女がエルフリーナに呼びかけた。


「分かったわありがとう」


 侍女が準備を進める間、ロザリーはただ、今の状況に考えを巡らせることしか出来なかった。

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