呪物
こちらは百物語五十三話になります。
山ン本怪談百物語↓
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知り合いのBが住むマンションへ遊びに行った時の話です。
Bは最近体調を崩しており、友達同士の付き合いにもすっかり顔を出さなくなっていました。
心配になった私とS君は、お見舞いとしてB君のマンションへ遊びに行くことにしたのです。
「やぁ、来てくれたのかぁ」
私たちを出迎えてくれたB君の顔色は、とても最悪なものでした。生気が無いというか、まるで死人のように真っ白だったのです。
「B、大丈夫か。最近顔を出さないと思ったら…病気にでもなったのか?」
B君はしばらく何かを考えた後、辛そうな顔でボソボソと話し始めた。
「いや…そういうことじゃないんだ。医者が見ても原因不明でさぁ。最近夜も眠れないし、食事もほとんど食べてないんだ。会社も休みっぱなしだし、もう最悪だよ…」
異常事態であった。あれだけ元気だったB君がどうして…
「なぁなぁ、Bよ…お前最近何かもらわなかったか?」
重い空気が部屋の中に漂う中、S君がいきなりB君に向かって話しかけた。
「もらった?あぁ…俺モテるから…」
こんな時にも冗談を言うB君。しかし、S君の目はどういうわけか真剣であった。
「俺、ちょっと前に誕生日だったんだ。会社の人たちから色々もらったよ。ほら、あそこに置いてるやつ全部だよ」
B君はベッドの近くに置いてある大きなビニール袋を指さした。それを見たS君が、急いで中身を確認し始める。
「どうしたんだよ?何かあるのか?」
私が声をかけてもS君は返事をすることなく、何かに憑りつかれたように袋の中を確認していました。そして…
「………あった!」
S君が袋の中から、一体の「熊のぬいぐるみ」を取り出しました。
「あぁ、そのぬいぐるみ…会社のTっていう女子社員からもらったんだ。明るい子なんだけど、ちょっと変なところがあってさぁ…そのぬいぐるみ欲しいのか…?」
S君はポケットから清めの塩を取り出すと、そのぬいぐるみに向かって勢いよくふりかけた。S君はお寺で住職をやっているのだが…
「これや。これが原因や。お前えらいもんもらってきたなぁ…」
私たちは、最初S君が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
しかし、S君が近くに置いてあったカッターナイフでぬいぐるみの腹を切り開いた瞬間、私たちは絶句した。
「うわぁあああああっ!?」
「な、なんだよそれ…」
ぬいぐるみの中に入っていたのは綿ではなく、大量の「髪の毛」であった。
それだけではない。よく見てみると、髪の毛に混じって生爪や歯のようなものも見える。
「おっかないもん作るなぁ…これ『呪物』やで…」
S君がお経のようなものを唱えながら、ぬいぐるみをビニール袋の中へ戻した。
「あかんことやけど、そこの公園でお焚き上げするわ。寺に持って帰ろうと思ったけど、念が強すぎて俺も危険やわ。下手すると俺も死ぬ…」
その後、マンションの下にあった公園で急遽お焚き上げが行われた。
時間は夜中だったので、運よく近くの人たちに見つかることはなかった。
「ふぅ…お焚き上げはこれで終わり。清めの塩をかけて、後はゴミに出しても大丈夫やで」
S君のお焚き上げが終わってから数日後、私たちは再びB君のマンションを訪れた。私たちを出迎えてくれたB君は、とても元気そうな笑みを浮かべていた。
「お前らありがとな。おかげで気分もよくなったよ。少し前から仕事も復帰してるんだ」
元気そうなB君を見た私たちは、思わずほっと胸を撫で下ろしました。
「ただ…あのぬいぐるみをくれた女子社員なんだけどさぁ…俺の復帰と同時に会社へ来なくなっちゃって…」
その言葉を聞いたS君が、恐ろしいことを話し始めた。
「そりゃそうなるで。呪いは相手に見つかったら意味がないんや。見つかってしまったら、呪いはもう終わり。呪いは術者にそのまま返っていく。あのぬいぐるみの呪いは、たぶんその人に…」
皆さんは「人を呪わば穴二つ」という言葉を知っていますか。人を呪うということは、相手の墓穴と一緒に「自分」の墓穴も掘らなければならないのです。
「相手を呪うことは、自分を呪うことと同じ…」
人からプレゼントをもらった時は、皆さんも気をつけてくださいね…?