1話
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さて、まるでアニメや漫画等の打ち切りの様に締めたのは構わないが、その日から更に数日が経過した。俺はハミエルの強化と感情がどうにか芽生えないかの考察を行った。
ハミエルの見た目はぶっちゃけ俺の性癖を具現化させたと言っても過言ではない。腰まであるプラチナブロンドの長い髪、大きめの胸、低すぎず高すぎない身長、そして碧眼。
ただ造って思ったが流石にそういう目的で造ったのではないのもあるが、自分が造った人形には性的な興奮は感じなかった。まだ身体が子供だというのもあるだろうが、きっとそういう物なのだろう。
俺が生前死ぬ少し前のとある超人気特撮番組でアンドロイドをテーマにした話があったが、あの話では時間が経てば次第にアンドロイドに感情が形成されていたが、俺が造りたいのは最初から人間の様なマギカドールだ。ハミエルは俺の夢から見たら失敗作という事になるんだろうが、もしかしたらお話みたいに次第に感情が芽生えるかもしれないし、後からプログラムに付け足す事が出来るかもしれない。
それから数日後、その日の食料確保の為、森で狩りをしていた。それと同時に肉に合う山菜や、ポーション用の薬草も採取していた。
「…!…!…!」
すると近くから声が聞こえてきた。それに金属音や爆発音の様な物も聞こえており、恐らくそれは戦闘音だと思われる。
『マスター10時の方角から戦闘音を感知しました。どうなさいますか?』
「ん〜…とりあえず様子を見てから判断しよう。ハミエル、僕が許可するまで戦闘行為は無しだぞ」
『了解しました』
俺たちはハミエルが感知した場所の近くまで行き、大木の影に隠れて様子を伺った。
数名の人間たちは複数のモンスターに囲まれており、モンスターはキラーアントが10以上と上位種のツヴァイキラーアントが1匹。
キラーアントは決して強くはないが、その外皮は硬く剣等の物理的攻撃が効きにくく、ツヴァイキラーアントは歩兵であるキラーアントのまとめ役で、どれだけのキラーアントをまとめているかでそいつの力量を測る。ちなみに最低でも10匹くらいはまとめている。
人間の方は剣を持った人が2人、杖を持った人が2人、倒れている人が1人。計5人だが戦えるのは実質4人。理由は分からないが全員女性だ。この戦力に対してのキラーアントの群れの量的には負ける事はないかもしれないが、決して侮れない状況だ。
「ハミエル、俺たちは彼女たちの援護する。警戒対象のままこちらからの攻撃は絶対にするな」
『了解しましたマスター』
俺は影から出ると持っていた弓矢でテキトーなキラーアントの攻撃した。もちろんただの矢の為奴らにダメージは入らない。
「援護します!その間に怪我人の治療を!」
「すまない、感謝する!」
俺は半分近く引き受けハミエルの元まで戻った。1匹のキラーアントが俺が通った道を通ると、足下に魔法陣が表れキラーアントたちを土壁が囲った。
「今だ!ハミエル、奴らを燃やせ!」
『了解しましたマスター。MD0013ハミエル戦闘モード移行。対象キラーアント5ツヴァイキラーアント1。焼却します。メガフレア』
釜戸の要領で大火力にて焼却されたキラーアントたちは、本来であれば防具の素材になったりするが、その外殻すらも燃えて無くなった。その場に残ったのはキラーアントたちの魔核だけ。
魔核とは魔力を秘めた石でモンスターの心臓と言っても過言ではない。魔石に似ているが純度が低いらしい。国や商人に売却する事が出来るらしいが、この近くに商人が来る事はまずないので我が家に大量にある。
アッツアツに熱された魔核を水で冷やし回収した。あんな炎でも全く溶けていない魔核を改めて不思議に思っていると、ちょうど女性パーティーも終わったようだ。
「お疲れ様です。怪我はありませんでしたか?」
「ああ、力添え感謝する。だが、貴様は何者だ?ただの子供ではないな。特に後ろの娘、人間ではないな」
恐らくパーティーのリーダーと思える女性がこちらに剣を向け言い放った。ハミエルはそれに反応し通常から戦闘モードに切り替わり、すぐにでも戦闘が起こりそうだった。
「ま、待ってください。こちらには戦闘の意思はありません。そちらに戦闘の意思が無いなら後ほど僕達の事を説明します。
それより、良いんですか?お連れの方、傷が癒えてない様ですが?ハミエルは戦闘モードを解け、しばらく待機だ」
『了解しました』
女性はこちらを気にしながら仲間の下へ駆け寄った。俺たちは木陰に腰を下ろし様子を伺っていた。すると、言い争いとは言わないが、トラブルでもあったのか何か言い合いが起きていた。俺はハミエルと彼女たちの元へ駆け寄った。
「どうかしたのですか?」
「あ、ああ、彼女はこのパーティの回復担当なんだが魔力が切れていたらしくてな。ポーションも無く、どうしたものかと話し合っていたところだ」
「そうですか…僕の名前はトシアキ・シノミヤ。この森に住んでいます。もしよろしければこれを使って下さい」
俺がそう言って取り出したのは自家製のポーションだ。
ポーションはこの森で採取した薬草と水を使い製作した物だ。このポーションには何度か助けてもらった事があり、効果は保証済みだ。
パーティの1人が毒味の為か少量手に取り舐め確認した。すると何かに驚いていた様だがどうしたんだろうか?問題無い事が分かると彼女に飲ませた。傷口が塞がり危なげだった呼吸が落ち着いた。
「ありがとう君のおかげで仲間が死なずに済んだ。だが、その為先程以上に確認しなければならなくなった。君たちは何者だ?」
女性は流石に俺たちを敵とは思わなくなってくれたのか、剣を抜きはしないがそれでも何時でも抜ける様に手は置いていた。他の女性たちも集まりこちらを怪しむ様に睨んでいた。
これ以上は流石に無理だなと悟った俺は、装備していた剣と弓矢を地面に置き腕を上げ戦闘の意思が無い事を伝えた。
「僕の名前はトシアキ・シノミヤ人族です。こっちは僕が造ったゴーレムのハミエル。僕たちはこの森、アグーラ大森林で暮らしてます」
『ハミエルと申します』
正直にそう言うと、彼女たちは目が突き出るんじゃないかと思う位に丸くしていた。折角の美人が台無しだなHAHAHA。
「き、君みたいな子供がこの森に?親はどうしたんだい?」
「両親は僕が産まれた直後に亡くなりました。その後、祖父母に引き取られ5年前に亡くなりました。今はこのハミエルと2人で暮らしてます」
この人たちは悪い人ではないだろうが、万が一という事もあるのでシュフィードや精霊たちの事は伏せる事にした。
……正直彼女たちをこのままにしていいのか悩んだ。悪い人ではないだろう。けれど、悪い人ではないと装った盗賊かもしれない。もう少し様子を見るか。
「怪我してた人、もう少し休ませた方が良いですよね?良かったら僕の家で休ませませんか?」
「!?」
彼女たちの様子から見て多分俺の事を怪しんでいるよな。もし悪い人じゃなければ俺を盗賊の下働きとか思って、盗賊を一網打尽にでもしようと思ってアジトだけでも確認しようとするかもしれない。もしも盗賊なら俺の家を新しい拠点候補や物を奪おうと思うだろう。盗賊と判断出来たら家の方が一網打尽に出来るしな。
まあ、来なかったらそれはそれで良い。
「少しだけ待ってくれ。仲間と話し合う」
「分かりました」
そう言って彼女たちは集まって話し合いを始めた。俺はさっきの木陰で待つ事にした。
~side???~
私たちは助けてもらったトシアキという少年について話し合う事にした。
「どうする?ミルーゼの事を考えたらあの子の申し出を受けるべきだが…」
「ですがこんな所に子供だけなんて可笑しいですよ」
「あの子、彼女の事をゴーレムと言ってましたが見た目はどう見ても人間にしか見えませんよ!」
「ですが、先程の攻撃を見ましたが、火球を放った時は手がありませんでした。ですが今はあるという事はゴーレムかどうかは置いておいて、人では無い事は事実でしょう」
「さっきのポーションは効果からして恐らくハイポーションの筈です。あのゴーレムも含めあの子は盗賊の下働きで何処からか盗んだと考えるのが妥当だと思います」
「もしくはあの子の言ってる事が全て事実か」
私たちの考えはあの子供が盗賊の下働きか言ってる事が全て事実か、さてどうしたものか…
「決めた。あの子が盗賊ならアジトを確認後、あの子を抱えて森を出て後日討伐隊を派遣。あの子の言ってる事が事実ならミルーゼを休ませてもらい、明日帰投し後日何かお礼の品を持参する」
皆頷き私は少年の元に戻った。
「それではお言葉に甘えさせてもらおう」
「分かりました。それではこちらです」
私たちは少年の後を着いて行きつつも、何時でも剣を抜き逃げられる用意をした。斥候のルイズに広域を警戒させつつ、私たち自身も木陰から矢が飛んできてもかわせる様に周辺を警戒した。
しばらく歩いていると少年がピタッと立ち止まった。私たちはここで盗賊が襲って来るのかと剣を握った。
「どうかしたのか?」
「晩御飯が捕れたみたいです」
「「「え?」」」
少年がそう言うと東から3匹の獣が走って来るのが見えた。
あれは…
「ウルフです!」
「全員戦闘態勢!」
「ですが、1匹可笑しいです!ウルフがウルフを背に乗せてます!」
「え!?」
本来、獣でも魔物でも例え親兄弟でも傷つき死にそうになればその場に置いていく。それをせず一緒に連れてくるのは可笑しい。
私達は武器を構えると少年が割って入った。
「危ないから退きなさい!」
「死にたいの?!」
「違う!あれ、敵じゃない!」
「「「え??」」」
少年の言葉に私達は一瞬固まった。その一瞬を突かれ2匹のウルフは少年に突っ込んだ。
「少年!!」
しまった、殺される!そう思うと2匹のウルフは少年を襲っているというより、覆いかぶさってジャれている感じだ。
その2匹のウルフは、遠目からだと確かにウルフと見間違えるが、近くで見るとゴーレムだと分かる構造だった。
『ポチ先輩、コロ先輩、それではマスターを潰してしまいます』
『ワン!ワワン!』
『ですが今の状態ではマスターは何も出来ません』
ハミエルというゴーレムとポチやらコロとかいうおかしな名前のウルフに似たゴーレムが何やら話していると、ウルフたちは少年から離れた。
「ありがとうね2人とも。あ、すみませんがこのウルフ、内臓だけ取って良いですか?」
「ああ、構わないぞ」
そう言うと、ありがとうございますと言って少年は慣れた手付きでウルフの内臓を取り除いた。
「慣れた手付きだな。君の歳でそこまで出来る者はそうはいないぞ」
「ありがとうございます。森で暮らしてるんで、解体くらい出来ないと生きていけませんから。よし、出来た"土魔法ビット"!」
少年が魔法を唱えると、足下に小さいが穴が出来、そこに先程取り除いたウルフの内臓を埋めた。
「無詠唱で魔法を使う人なんて初めて見ました……」
「え、あ、あははは、祖父にみっちり叩き込まれましてね。初級クラスなら何とか無詠唱で使えるんですよ!あははは!」
「凄いお爺さんだったのですね。無詠唱を使うのは、伝説の賢者様だけだと思ってました」
「あは、あはははは!…」
魔法使いのキナと回復師のレイナの言う通り、無詠唱で魔法を扱う者はまず居ない。数十年前に活躍していたと言われてる、賢者と言われた男が無詠唱で様々な魔法を扱っていたという伝説はあるが、王都の宮廷魔法団でも、無詠唱で魔法を扱う者は居なかったはず。この少年は一体何者なのだ?
少年は内臓を取り除いたウルフを、初級とはいえ扱いの難しい空間魔法のアイテムボックスに収納したら、しばらく歩いた。すると、木々を抜け岩壁の前に着いた。やはり罠かと警戒すると、少年が少し待ってくれと良い壁に両手を付けると、目の前の岩壁が砂になり穴が現れた。
「こ、これは!?」
「どうぞ、いらっしゃいませ。僕の家へ」