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プロローグその2

 「…う、ここは…あれは、夢?」


 起き上がり1つ大きな欠伸をした。あの光景は夢かと思ったが、寝ている場所は土の上、周りは木々が生い茂る恐らく森の中。そして俺の身体が子供位の大きさに縮んでおり、近くにはアースランドガイドブックと書かれた分厚い本が落ちていた。


 「著者カトレーナっか。ハハ、ありがとう」


 すぐにでもこのガイドブックをしっかりと読み込みたかったが、流石に現状が把握出来ていない状態で、それは流石に自殺行為もいい所だ。

 まずは住む場所だ。歩きながらガイドブックの最初の数ページを読んでみたら、この世界の時代は簡単に言えば中世のヨーロッパといった感じらしい。

 つまり、下手に何処かの街に行こうと思ったら、街に入る為の税金…で良かったかな?まあ、金が掛かるって話だ。たぶん。俺は現在無一文、すぐにでも金を得ようと思ったら奴隷商人でも探して身売りをするしかない。

 となると、しばらくの間は俺はこの森で生活しなきゃいけない訳だが、簡易なテントを作れば数ヶ月は大丈夫かもしれないが流石に何年もはもたないだろう。

 しばらく歩いていたら開けた場所に出た。キャンプには適した場所だ。まあ、遊びに来たわけじゃあないから関係ないがな。周りをぐるっと見渡してみると、巨大な岩壁が目に入った。近くまで歩いて行くと、この岩壁は20m以上あるみたいだ。


 「洞窟は…近くにはなさそうだな。……あ!魔法か何かで造れないかな」


 そう思ってガイドブックを開いてみると、目次に魔法の欄がちゃんとあった。

 とりあえず今夜過ごす為の場所を作れないかと考えて魔法の項目を読み始めた。すると、今の状況にピッタリな土魔法があった。すぐにでも使いたかったが、まずは魔法の基礎と書かれたページを読んでみる事にした。


 【・魔法とは、己の中にある魔力が体内を巡るのを感じそれを現象を起こし、形を変え力を行使する事を言う。

・魔法を行使するには、魔法師が行使する魔法のイメージをハッキリさせ、そのイメージを体内の魔力で実現させる。

・呪文の詠唱は魔法師が魔法をイメージしやすくする為の物。魔法のイメージが完全であれば無詠唱でも魔法を行使出来るが、詠唱有りと無しでは魔法の威力や精度等が低下する】


 「なるほど。で、穴でも掘れる魔法は…あ、これか。

 最初は体内の魔力を感じる…」


 よくアニメや漫画とかである感じで、目を閉じ意識を体内に集中してみた。すると、身体の中に大きな湖がある様な感じがした。その魔力が身体を流れている感覚。身体の中心から肩から腕そして指先へ、腕を1周し胴から足先へ、脚を1周し股から片方の脚へ、また胴を通り片方の腕へ、腕を1周し肩を通り首、頭を通りまた首を通り最後に中心に戻ってくる。


 「これが体内の魔力を感じるって事か。後は魔法のイメージ。大きさは人が生活出来るくらいで、壁に横穴を作る掘削機をイメージ。

 "我が魔力、母なる大地を穿(うが)て!土魔法グラーデン"!」


 呪文を唱え初めての魔法を使用すると、円形の魔法陣が浮かび上がり半円の形をした横穴が出来た。高さはちょうどいいが、奥までの長さが長すぎた。


 「ぜぇーぜぇー、ただ穴掘るだけでこんなに疲れるのか?……いや、多分これ、魔法のコントロールが出来てないだけだよな。…あー、練習しなきゃな。でもその前に、焚き火用の薪集めなきゃな」


 しばらくの間休憩し(たぶん)魔力を回復させ、ようやく動ける様になり薪を集めに立ち上がった。薪は適当なのが拾えたが、着火剤となる松ぼっくりに似た物を探していた。

 松の木には簡単に言えば脂が含まれている為、焚き火等で着火剤に適している。流石異世界、日本と同じ植物は無いのだと改めて理解した所で、手頃な場所でガイドを開いてみるとちゃんと植物欄もあった。ざっと植物とその説明を読むと、幾つか着火剤に使えそうな木々と木の実があった。だが、それがこの森にあるかどうかが分からないから苦労しそうだ。


 「まあ、種類が絞れただけでも儲けものかな。…ん?これって、もしかして…」


 見つけたのは白と黒の螺旋状の模様が入ってる枝だった。それは、右巻きと左巻きと2種類ある。左巻きは毒性を含んだ物で右巻きは着火剤に使える物。それは、右巻きだった。しかもそれはそこら中に落ちていた。


 「ラッキーなのか?もしかしてオーディナルとカトレーナが分かってて、ここに転移させてくれたのか?まあ、どっちか分からないけど有り難く使わせてもらおう」


 少し多めに拾い拠点に戻った。まずは着火剤に火をつける為に火の魔法を使う事にしたが、洞窟を掘った時と同じ様にすれば焚き火どころか洞窟で蒸し焼きになってしまう。

 魔法はイメージ。今回は小さな火球だ。火球の大きさとしては線香花火の様な小さな物。でも、小さすぎて火力が低くなり火がつかなかったら目も当てられなくなるな。


 「…よし!"我が魔力、眼前にある物を燃やせ!炎魔法フィアーボール"」


 イメージが固まり、掌を目標に向け、呪文を唱えると魔法陣が現れそこから小さく弱々しい火球が現れ放った。結果だけ言えば火は着き成功と言いたいが、詰んだ薪は吹き飛び、着いたと思った火が消えた。例えるなら、詰んだ薪に石をぶつけて崩した感じだ。

 むむむ、と唸った。枝を手に取って直接火を着ける。という方法もあるだろうがそれでは消し炭になるか枝が折れるかのどちらかだろう。

 この世界の人達はキャンプでもする時は、どうやって火起こししてるんだろうか?まさか木同士を擦って火を着けているのか?まさかな。ライターみたいな装置でもあるのだろうか。

 すると、さっきの魔法陣が頭に浮かぶとその魔法陣にある幾つかの文字、模様が消え魔法の名前に詠唱が思い浮かんだ。


 「"我が魔力、指先に宿りて、灯せ!炎魔法フィアー"」


 指先に集めた魔力で頭に浮かんだ新しい魔法陣を自然に素早く描き、呪文を詠唱すると詠唱通り指先に火が点いた。

 着火剤用の枝に火を点け、その枝を中心に木々を組み火を点け焚き火をようやく成功させた。


 「それにしても今の魔法、少なくともガイドブックには載ってないか。…とりあえず今は生活用魔法と呼ぶか」


 もしかしたら実際は別の名前があるかもしれないが、今は俺1人だしそう呼ぶ事にしよう。誰かにあって魔法の事を学ぶ事が出来る時があれば、その時改めて習おう。

 まあ俺人見知りだし、そもそも話せるかが問題だけどな。


 「そういえば、何も見ずに新しい魔法を作れたけど、もしかして俺って天才なのか!!…ってんなわけ無いか。オーディナルかカトレーナがくれたスキルのおかげだろうな。それにしても、暖かい」


 焚き火のおかげで、風で冷えた身体が暖まるのを感じた。

 十分暖まると拾ってきた果実を齧りながら、ようやくガイドブックを読む事が出来た。

 まずここはガルナ大陸という土地で、そこにある4つの大国、ビナーダ王国という国に俺は住んでいるらしい。

 よく戦争をしているらしいが、巻き込まれないよう気をつけよう。それから、この国は他の国に比べて比較的に治安が良いらしい。

 そして俺が居るここはアーグラ大森林という場所で、モンスターは1番弱いスライムから1匹で村1つ簡単に更地に出来るモンスターまでレパートリーが豊富。モンスターの他にも、盗賊や凶悪犯罪者が居る場合もあるらしい。


 「これ、初っ端から詰みゲーじゃない?はぁ〜…」


 そうなるとどうするか?決まってる、近くの街に行くさ!でもガイドブックによれば、それこそ野山にある村とかには居ないが、どんな小さな街でも憲兵が居り、入るには身分証が必須との事。

 ガイドブックや服をまさぐってみるがそんな物は無かった。

 続きを読んでみると、身分証が無い人はその場で作れるが、作る費用が諸々合わせて金貨1枚、日本円で約10万円になるらしい。因みにこの世界での一般の月に支払われる給金の平均は大銅貨2枚、日本円で約1万円らしい。

 身分証は通常、持ち主が産まれた月に国から無償で発行されるが、再発行にはとてもお金がかかる為、親が責任を持って管理する場合が多いとの事だ。

 再発行に掛かる金は大金。国から金を借り再発行手続きする事は出来るが、返済期間は1ヶ月。それを過ぎた場合、国だけに関わらず金を貸した人は借りた人を奴隷商人に売る権利があるそうだ。

 つまり、俺の今の現状だと、

 街に行く→身分証を発行してもらう→金を借りる→返せない→奴隷になる

 という事になる。あれ?これ、詰んでない?

 という訳で俺はここで生活することにします!まあ、かなり厳しい環境だけど、頑張っていきましょー!


 「頑張るぞー!おー!……うう、1人はやっぱり寂しい…」


 翌日、まずは薪と食事の為の果実を探した。洞窟に戻り果実を食べながらこれから何をするか考える事にした。

 今のところ最終目標は感情のある人形を作る事。簡単に言えば人間に近い人形だ。それでそれに至るまでの目標を立てる事にしよう。最終目標から順序立ててやろう。


 人間に近い人形完成

 ↓

 試作品を造る

 ↓

 設計図を書く

 ↓

 素材集め

 ↓

 人形造る工房を造る

 ↓

 生活拠点を造る


 細かいところは色々飛ばしているが、こんな感じだろう。

 まずは生活拠点を造るとこから初める事にしよう。とはいえ問題は幾つかあるが、最初の1つは拠点を外に造るか洞窟内に造るかという事だ。

 少し考えてみよう。もし外に造るとしたら、どうなるだろうか?

 1、モンスターに破壊される可能性。

 2、盗賊や犯罪者に荒らされる可能性。

 というか2番目に関しては、俺が殺されて拠点を奪い取られる可能性はないだろうか…いや、普通にあるよな

 次は洞窟内に造った場合はどうなるだろうか?

 1、地震等で崩れる可能性。

 2、出入口の戸締りが失敗し、窒息死する可能性。

 他にもあると思うがこんな感じか。

 この考えの結果から、俺は洞窟内に拠点を造る事にした。

 何だか生前やってたゲームを思い出すな。家や村何かを自分で作れるゲームを。


 閑話休題


 とはいえ問題はどうやって頑丈な拠点にするかだ。例えば、頑丈な棒か何かを壁や天井を覆う様に張って、その下に棒を覆う様に壁を張るのはどうだろうか?壁は土魔法でどうにか出来るだろう。

 だが、これには大きな欠点がある。当然それは棒だ。周りに木は沢山あるからからそれを使うという手もあるが、丈夫な壁や天井にしようと思えば太い物になってしまい拠点が狭くなってしまう。

 1番は鉄の棒を使う事だな。そうなると問題は1つ、どうやって鉄を手に入れるか?という事になるな。


 「ゲームみたいにアイテム名が見れたら良いのにな。何か方法無いかな?」


 本を調べてみると1つとても都合の良い物があったそれは、


 「鑑定魔法?1つの物を鑑定する事に魔力を消費するが、その物の名前や毒物なのか等の状態を知る事が出来る魔法…って今の俺にピッタリじゃないか!まるでご都合主義だな」


 俺は1人ではしゃぎながら片っ端から鑑定しまくった。そして鉄が混じり酸化した赤土に砂鉄がそれなりに集まった。

 だが、このままでは何にも加工する事は出来ない。そこでそういうのに便利な魔法があるそれは、


 錬金術


である。

 錬金術は無属性に入る魔法であるが、普通の魔法とは異なる魔法となる。紙や地面等に魔法陣に似た陣を描き、対象の物質を理解し、その上に物質を置き1度分解し、別の形に再構築するという物だ。

 俺は五芒星に似た陣を描きその上に赤土を置き、手を翳して魔力を送ると放電現象が起き土と酸素を分解し鉄インゴットへ再構築した。


 「よし、成功!」


 次は砂鉄から不純物を分解し鉄インゴットに再構築した。そして、幾つかインゴットが出来た。

 だが、これだけでは全く数が足りない。だってこれ全て手作業で集めた物だったからだ。なので、魔法で木の枝を何本か拝借し錬金術の陣の上に鉄インゴットと一緒に置き、分解、再構築し作ったのは、


 「鉄のシャベルに鉄のツルハシ完成!」


 道具を使い穴を掘るのに大切な物を作成した。それを使い赤土や砂鉄を大量に用意しそれを細い鉄棒へと変えた。

 それを洞窟内の壁に沿うように地面に刺し立て、長さが天井に足りないので別の鉄棒を、新しく作った火属性の魔法でガス溶接の要領で溶接した。

 生前資格とか持っておいて良かった〜、まあ、高校の時に座学で習って実物を見ただけで実際にガス溶接はした事ないんだけどな!アークはあるんだけど棒を固定しなきゃいけないんだよな〜

 ただ、1本やり終えて後悔した事があった。それは、


 「あ"〜遮光メガネ無いから目が痛てぇ…ていうか火花が痛てぇ…ン〜何か良い魔法無いかな?」


 火花に関しては火属性魔法の耐火エンチャントで防御する事にしたが、流石に遮光メガネの変わりになる様な魔法は無かった。


 「…けど、この空間属性魔法使えないかな?」


 例えば、目の周りに小さな結界を張ってその結界を黒く着色出来れば、本物の遮光メガネにはならなくても少なくとも、有るのと無いのでは違うのでは無いだろうか?

 という事でやってみる事にした。毎回の如く頭の中で魔法陣をイメージし、結界魔法は基本的な外気や攻撃等を遮断出来る物で、大きさを指定し、色を着ける。色は黒。


 「"我が魔力、我が眼を護れ!空間魔法ブラックグラスエス"」


 魔法は成功し目の前が一瞬で真っ暗になった。ただこれには欠点があったそれは、周りがホントに見えない事だ。付けたままやろうとしたら手探りでやらなければならないので、それだと時間が掛かる為、1度魔法を解き手元をしっかりさせてから魔法を掛け溶接を行った。天井は魔法で踏み台を作り溶接した。鉄棒の上から土壁を固めて敷き詰め壁や天井を補強した。

 一通り溶接や壁天井造りが終わったが、流石に全てを行うのは無理だと考え、洞窟の奥は壁を作り封鎖した。次は床だが、流石に陽も傾き始め今日は断念した。

 床は明日にする事にして後は食料を探して寝る事にした。

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