3.二重奏と耳栓
あれから20分程経過しましたが、社長は未だトイレに立て籠ったままです。
ヒカルさんが言うには社長は『うめき声』と『あまり聞かない方がいい音』の二重奏中とのことですが、私は耳栓をしている為聞こえません。
「さっき言いかけたんですが、やっぱりあれって曰く付きの妖刀で間違いないと思います」
と、私はタブレットにタイピングをしてヒカルさんへ見せます。
すかさずヒカルさんも自身のスマートフォンを取り出してタイピングをすると私に画面を見せてきました。
「どゆこと?」
因みにここから先はお互いにデジタル筆談となりますが、その表現はあえて割愛します。
「まず前提として、私には人や物が放つ妖気のようなものを感じ取れます」
「ふむふむ」
「と、言っても物がなぜ曰く付きになったのか、その人にどうして妖の類が乗り移ったのかという理由や所以等についてまでを感じ取る能力は持ち合わせていません。でもとにかくあの刀からは悪い気配を感じました」
「kwsk」
「上手く説明はできないかもしれませんが、社長があの刀を売り込みしていた時にあの刀がまるで『私を捨てないで』と言っているかのような……。男に裏切られて泣き崩れている女性の感情に近いような……。とにかくそんな気配を感じ取ったんです」
「じゃ、社長がデュオってんのって、、、」
「刀のせいだと思います」
「なる。で、doする?」
「まずはあの刀を取り戻さないと」
「ちょ待ち」
ヒカルさんは倉庫へ向かうと、しばらくして戻ってきました。
手に持っているのはなんと八助丸です。
でもその刀からは社長を二重奏らせている悪い気配は感じ取れません。
「これって……」
「そ、これレプリカ」
「つまりさっきお客さんが持って行った八助丸とこれをすり替えると?」
「そゆこと。ところで咲ちゃん?」
「どうかしましたか?」
「タイピングスピード、レベチじゃね?」
「え、そうですか? 今のJKだったらこんなの普通だと思いますけど」
「ガチめリスペクト案件、、、ガク。。。」
「ヒカルさーーーーーーーん!!」
ヒカルさんの指が限界を迎えた瞬間でした。




