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1.私のアルバイト先
伊勢佐木町の商店街を抜けて雰囲気がガラリと変わったぐらいの一角に、骨董品を取扱っているお店があります。
応接室ではお世辞にも堅気に見えないスーツ姿の中年男性がお得意のマシンガントークで売り込みをしていました。
「お客さんお目が高いねー。これは室町時代に作られた名刀、八助丸ですよ。かの有名な藤倉八助が作り上げた究極の一品! でもねここだけの話これ、曰く付きなんですよ――」
お茶出し係の私は、役目を終えると事務室へ戻ってきました。
「お、咲ちゃんどうだった? あのお客さん買いそうだった?」
「どうでしょうか。私にはよくわかりません」
顔立ちの良いチャラ男さんが笑顔で迎えてくれました。
咲というのは私の名前で、ここでアルバイトをしている女子高生です。
因みにこのチャラ男さんは会計係のヒカルさんです。(たぶん源氏名です。)
「社長、相変わらずだったでしょう。今日は何て言ってた?」
「なんか、藤倉八助さんという人が作った名刀の八助丸って……」
「名刀!? 八助丸!? あはははは。何それ!? 藤倉八助って誰だよ!!」
ヒカルさんはお腹を抱えて大笑いします。
薄々感じてはいましたが、やっぱり私はバイト選びを間違っていたようです。




