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女性を助けたら、俺を惑わすとても可愛い女子高生が恩返しに来ました

作者: 来留美

俺は三十二才の普通のサラリーマン。

恋人なし。

そんな俺が彼女と出会ったのは寒い冬でした。


俺はコンビニでお昼ご飯を買おうとレジに並んでいた。

すると俺の前で会計をしている女性が何か困っている様子だった。


「あっ、あの。財布を忘れたのでやっぱりこれは買わなくていいです」


彼女は財布を忘れたようだった。

彼女が買っている物は消毒液と絆創膏だった。

コンビニでこんな物を買うなんて今、必要なんだと思った。


「俺が彼女の分も払いますよ」

「えっ、そんな。悪いです」

「それが必要だから買いに来たんでしょう?」

「でも」

「後ろのお客さんにも迷惑だし。これくらいの金額なんてたいしたことないから」


そして彼女は俺に会計を任せてくれた。


「本当にありがとうございます。明日、お金は返しますから」

「そんなの気にしなくていいから。君は足を早く消毒した方がいいよ」

「あっ、すみません」


彼女は膝をケガしていた。

血が出て痛そうだ。


「俺が消毒してあげようか?」

「そんなことまでお願いできません」

「俺がケガしている子をほっとけないだけだから」

「お願いします」


彼女は俺に消毒液と絆創膏を渡して言った。

近くの公園のベンチに彼女を座らせ、俺は彼女の前で片ヒザをついて消毒をする。


「いたっ」

「ごめんね。でもちゃんと消毒しないと菌が入るからね」

「大丈夫です」


彼女はそう言いながら我慢している。

俺が彼女の膝の消毒を必死にやっていたら俺の手の甲に雨が落ちてきた。


「雨が降ってきた?」


俺は顔を上げて驚いた。

彼女が泣いていたのだ。


「もしかして痛かった?」

「違うんです」

「何? どうしたの?」

「私、今日は良いことなんてなくて」

「俺だってそんな日あるよ」

「彼氏の浮気現場を見ちゃって、逃げるように走ってたら転けちゃって、そして財布を家に忘れて買いたい物も買えなかったなんて今日はとても堪えられそうにないです」


彼女の涙は止まらない。


「俺は君の足のキズを手当てするから君は泣いてていいよ。俺は見てないから好きなだけ泣いていいよ。ただ傍にいるよ」

「ありがとう……ございます」


彼女の涙は俺の手の甲にたくさん降って来た。

彼女はどれだけ我慢をしていたのだろう。

俺が手当てを終わらせても彼女は泣いていた。

こんな綺麗な涙を流す彼女を傷つけるやつが許せない。

俺は立ち上がって彼女の頭を撫でた。

彼女が泣き止むまで撫でた。

彼女は泣き止んで言った。


「ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」

「いいよ」

「お金も返しますので」

「お金はもう返してもらったから」

「え?」

「君の綺麗な涙を見せてもらったから。君の涙はどんなモノよりも価値があるよ」

「私の涙は消毒液と絆創膏の代金よりも価値があるんですか?」

「何それ? そんなモノよりもっと価値があるよ」


俺は小さく笑いながら言った。


「そんな言葉を初めて言われました。嬉しいです」


彼女は笑って言った。

俺は彼女の笑顔を見てこれで彼女は大丈夫だと思った。


「それじゃあ、俺は仕事に戻るよ」

「お仕事?」

「昼休みだったんだよ」

「嘘。ごめんなさい」

「いいよ。君が元気になってくれたからね」

「あっ」

「それじゃあ、またね」

「はい」


俺は会社へと戻った。

彼女との出会いはこんな感じだった。

彼女とはこれが最初で最後だと思っていた。



彼女と出会ったあの日から一ヶ月が経った頃。

あの公園へ来た。

ただなんとなく来てみた。

彼女に会えたらラッキーだなあと思いながら来てみた。

彼女はいなかった。

もう、彼女は元気になっているのだろうか。

俺はあのベンチに座り、背中をベンチの背もたれに預け、下を向いて目を閉じた。


足音が俺の方へ向かって来る。

そして俺の目の前で止まった。


「すみません」


俺は声をかけられ目を開け、顔を上げた。

俺の前には女子高生がいた。


「やっぱり。あの日、私を助けてくれた方ですよね?」

「あの日?」

「えっ、違いました?」

「彼女は女子高生じゃなかったよ」

「ここで私を励ましてくれましたよね?」

「えっ、あの泣いていた彼女?」

「はい」

「君って女子高生だったの?」

「はい」

「ごめんね。こんなおじさんが君に触れたりして」

「おじさんじゃないですよ。私は逆に嬉しかったんです。あんなに人に優しくされたのは初めてなので」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「あの日からあなたのことが忘れられなくて毎日、ここに来てたんです」

「毎日? 一ヶ月も?」

「はい。会いたかったので」

「俺がここに来るとは限らないのに?」

「はい。ここだったらいつまでもあなたを待てるので」

「いつまでも?」

「はい。毎日、暗くなるまでここで待ってたんです」

「寒かったでしょう? どうして俺に会いたかったの?」

「あなたに恩返しをしたかったんです」

「恩返し?」

「あの日の後、彼が謝ってきたんです。でも、私は彼の言葉を聞いても何も感じなかったんです。私の中で彼はもう終わった人になってたんです」

「それが俺とどんな関係がある訳?」

「あなたが私の心を強くしてくれたんです。私の泣くところを見ないで傍にいてくれたあなたは私の心を救ってくれたんです」


彼女は俺を見つめる。


「本当は恩返しがしたいとかじゃないんです。私はあなたが好きになりました」

「あの日、一回しか会っていない俺を?」

「はい。私にとってあの一回は何十回、何百回と会うのと同じくらいの価値があります」

「本当に君って女子高生なの?」

「えっ」

「大人の俺の心を惑わすなんて」

「好きの気持ちに大人も子供もないですよ」

「そうだね。それを君が教えてくれたんだよ」

「私があなたに教えることがあるんですね」

「それなら俺も君に教えてあげる」

「え?」

「大人の恋愛を」


俺がそう言うと彼女は顔を赤くして


「私を大人にしてくれるんですか?」


って言った。



俺の方が顔が赤くなったのは間違いないと思う。

読んで頂きありがとうございます。

いつもより、少し短いお話ですが読んで頂いた方の心に残るストーリーだと幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美しいですね。 純粋な感想です。単純でスミマセン。 [気になる点] 色々な方向に、気になることはあるのですが、 批評や批判ではなく、二人の行く末についてとか、 社会常識とか、苦労する…
[一言] 相変わらず、甘酸っぱい(・∀・)
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