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泥舟  作者: 近江 仙
10/10

男女2


 一つの仕事を終えるというのは、なかなかな快感と達成感があります。

 それを共にするというのは強い絆を感じるものです。


 いわゆる組織の持つ仲間意識というのはこれによって生まれるものでしょうね。


 強い絆を持った仲間…というのは素晴らしいものです。

 無言の信頼が生まれ、心を強く持つことのできる根拠となる。


 …とまあ、一般的な話はここまでにしましょう。


 AさんとB子さんは、とうとう一仕事を終えました。

 先ほども言った通り、それは快感と達成感があるものです。

 まして、二人の間には官能的なものあった。


 仕事と私情はしっかりと分けるAさんですが、この機会を逃すことはしない。

 彼だって聡い人間です。B子さんがまんざらでもないことに気付いていました。


 打ち上げで仲間をねぎらい、絆を深める。その中に二人は居て共に同じ空気、興奮を分かち合っていました。

 仲間との打ち上げは、仕事が困難だったこともあり盛り上がりました。

 一次会、二次会…三次会…そして二人っきり。


 興奮は冷めません。


 顔の距離が近づくと、彼の目を真っすぐ見ると胸が高鳴りました。

 自分を求めている、情熱的で野性的な彼の熱…彼女はそれに惹かれました。


 そして、後ろめたさを感じるほどに不思議と燃え上がりました。


 彼の激情と共に、自身の体が燃えるような感覚は、彼女にとって与えられたことのないものでした。

 理性的で優しい…お兄様とはまた違った、男性の魅力。


 体の隙間が埋まる感覚…、自身の体が満たされる感覚を、彼女は知ってしまった。





 すうっと…息を吸い、女性は自身の体をいたわる様に撫で、ゆっくりと抱いた。


「…多幸感…というのは、そういうものなのですよね…」

 彼女は首を傾げ、うっとりと目を細めて言った。


 その彼女はとても俗っぽかった。


 彼女は、B子さんが裏切ったきっかけを話してくれた。

 兄に対する裏切りの始まりだ。


「…うしろめたさ…というのはあったんですよね。」

 私は思ったことをそのまま尋ねた。


「ありました。それは苦しいものでした。でも、人間は知ってしまった快感を追い求める生き物です。」

 彼女は開き直ったように言った。

 首を傾げた時に顔にかかった髪が、濡れた唇にくっついて何とも言えない色気が漂っていた。


 その様子に、私は失礼ながらも“発情”や“盛り”という言葉が思い浮かんだ。

 だが、口に出さなければ失礼ではない…と思い、私は開き直って彼女を見た。


「…しかし、愛していなかった。…というのでしょうね。」

 彼女は情熱的な声からうって変わって、さめたような声で言った。


「…やはり、心はお兄様にあった…のでしょう。」

 彼女は余熱に浸るようなうっとりとした目をしていたが、その熱が冷めることを知っているような冷ややかな侮蔑を含めた口調だった。


 ふわりと、彼女は私を見た。

 目には、罪悪、後悔があった。


 もう彼女には幻惑的な雰囲気はなかった。



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