第6話 江の島水族館、まさかの展開
純華です。
今日は私と文乃、山中君、佐藤君で江の島水族館に来ています。
暗い通路を4人で歩いているんですが、休みの日とあって、水族館はけっこう混んでいます。
家族連れや小学生の団体でごった返してました。
人かき分けながら前に進む感じです。
それにしても、葵、何を男の子たちに話したんだろう?
佐藤君が文乃とおしゃべりしっぱなしだ!
いったい、どうしたの?
今までと違う!
あ、佐藤君がすたすた前に進んでいく。
おお、文乃がついていっちゃった。
二人とも足が長いから、速いなー。
あ、通路の先に行っちゃった。もう、見えないよ。あっという間だ。
もう、二人っきりでどこに行くつもり?
「あの二人、先にいっちゃったね。俺たちはゆっくり行こうか?」
ええ?
どういうこと?
不思議だ。山中君が私の顔をいっぱい見て、話しをしてくれる。
戸惑っちゃうけど、すっごく幸せな気分になる。
話がすごく弾むし。
文乃と佐藤君が二人で前の方に行っちゃったから、私たちも二人きりだ。
やったー!二人きりのデートみたい。
誰もいないないら・・・そうだ、腕組んじゃおう!
こんなチャンスない。
私の胸・・・小さいおっぱいだけど、武器にはなるはず!
私は勇気をだして、山中君の腕に抱き着くように腕を組みます。
胸を当てるように。
山中君、ちょっと驚いているけど、イヤじゃなさそう。
顔が赤いかも。照れてるかな?
もしかして、ドキドキしてる?
「山中君、私の胸ちっちゃいけど、ちっちゃい胸の女の子ってダメかなあ?」
「そんなことないよ。桑島さんみたいに可愛いなら、全然オッケーだよ。」
「わーっ、嬉しい。じゃ、今度は手を繋ごうよ!」
私は、もう暴走します。
こんな機会今までなかったんだから、最大限活用しないと。
私は恥ずかしいと思いながらも、思い切って手を繋ぎます。
山中君の手、けっこう大きい。うん、たくましい。
できるだけ長く手を繋いでいたいな。
私の気持ち伝わってるかな?
私は恥ずかしいなと思いつつもしっかり手を繋いで歩きました。
たぶん、山中君も恥ずかしいと思ってるかもしれませんけど、嫌がってはいません。
むしろ私以上に強く手を握ってくれてる感じがします。
これは・・・イケるかも。
佐藤君と文乃ははるか先に行ってしまい、もう見えません。
こうなれば、完全に二人の世界です。
間に、小学生の団体がはいっちゃって、全然前に進めません。
嬉しい。山中君と二人っきりの時間が長くなる。
「こりゃ、前の二人に追いつくのは当分無理だな。二人でゆっくり水槽を見ようか?」
「うん、そうしよう・・・。こうやって、二人で歩くの楽しい。」
「そっか・・・、じゃあ、今度は4人じゃなくて、俺と二人で、どっか遊びに行くか?」
「ええっ、嘘?本当?嬉しいっ!!」
「おお、じゃ、歩きながらどこに遊びに行くか決めようぜ。」
「うん、行きたいところいっぱいある。」
「そうだ、それなら俺たち、ちゃんと付き合おうか?
イヤじゃなければ・・・だけど。」
「ええっ?本気?本気なら・・・うん、いいよ!」
「本気だよ。こんなところで嘘なんかつかないよ。」
「やったー!」
私の恋がまさかのテイクオフです。
急展開です。
どうしてこうなったんだろう?
葵ったら、魔法を本当に使ったのかなあ?
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結局、私たち4人が合流したのは30分もあとでした。
私と山中君は手を繋ぎながら歩いていたんですが、文乃と佐藤君はイルカショーの会場で手を繋ぎながら座っていました。私たちは何が起こったか理解します。
一気に2カップルが誕生したんです。
そのあとは、鎌倉に行って、小町通りをうろうろして楽しみます。
夕方になると佐藤君が文乃を、山中君が私を家まで送ってくれました。
私たちは二組のカップルになっていることを互いに知り、照れくさい感じになりました。
そう、いつもなら男二人と、女二人って感じの行動だったので、男女がくっついて行動するというダブルデート状態は超恥ずかしい。すぐに慣れません。
初めての経験でドキドキの連続です。
でも、嬉しくて、私も文乃もずーっと笑顔です。
こんなにニコニコしながら過ごす休日って記憶にない。
ホント、幸せ。
家に帰ってからは、文乃と打ち合わせをしたうえで、葵に電話で報告します。
まずは文乃から電話してもらうことにしました。
文乃は興奮が収まらない感じだったので、電話ではしゃべりっぱなしだったみたいです。
私も人のことを言えないかな。後で葵に聴いたら、声は大きいし、すごくハイだったみたい。
文乃から連絡を受けた後、すぐ私は葵に電話しました。
「葵、ありがとう!
今、すっごい幸せ。
どういうわけか、山中君が急に私と仲良くしてくれたの!
それに、すごい積極的で・・・私の顔をめちゃ見てくれるし。ドキドキの連続!
それで・・・なんとなく、いい雰囲気になって・・・
そしたら・・・何と、山中君が付き合おうって言ってくれた!
もう、びっくりした。
信じられなかった。まさかの展開だよね。
前回会ったときにはすごくつれなかったのに。
とにかく、ついに、・・・ついに私にも彼氏ができた!
本当にありがとう。魔法の言葉を使ってくれたんだね。
どんな言葉か知らないけど、すごいよ。すごい!!
きっと・・・葵にも、絶対素敵な彼氏ができると思う。
魔法の言葉を持ってるんだもん!
けど・・・、先に彼氏つくっちゃってごめんね。
本当にありがとう!!」
私は葵に申し訳なく思います。
葵だって、彼氏ほしいだろうなあ。
演劇と勉強で頭いっぱいでそれどころじゃないって言ってるけど。
あと、体のこともあるか?中途半端な体なんだよね。
うん、葵が演劇部引退して、性転換手術を受けて、大学合格したら、葵の恋愛を全面的に応援しよう。
そうしないと、何か悪い気がするし、友達として、情けない。
あ、私と山中君の付き合いはこれからだった。これから喧嘩とかするかもしれないなー。
でも、それも楽しみ。葵、私がんばるから。
青春を楽しむぞー。
完




