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炎の記憶④~戦う勇士~

 タルセームは棍棒を手に持ち、刀を使う盗賊と切り結んでいる。


 刀と言っても、触れれば切れるが斬れる訳ではない。

 寧ろ、しなやかさの少ない金属は、柔軟性の残る木の棒に頑丈さで敗ける事もあった。


 タルセームは斬り付ける剣に棍棒を打ち付けて、逆に圧し折ってしまう。


「うぉぉぉっ!」


 と、引き攣った火傷の痕を千切らんばかりに絶叫して、相手の頭部を棍棒で殴打した。


 めかっ!


 堅いもの同士がぶつかり、片方がひしゃげる音がして、相手の頭が陥没した。眼球を飛び出させて鼻血を吹いて、倒れる男。


 するとそのタルセームの背中に、二本の槍が突き立てられた。振り返ろうとすると、その前に背中の肉を左右に引き裂かれ、更に石突が咽喉を襲った。


 咽喉を潰されて血を吐くタルセームの胸に、片方の槍が刺し込まれた。肋骨を滑り、心臓に突き立った槍の持ち主は勝利を確信して笑ったが、タルセームは棍棒を放り投げて、その薄ら笑いを正面から潰してやる。


 二本目の槍使いが、うなじに穂先を喰い込ませて、タルセームは動かなくなった。






 ジャスクに短剣使いが襲い掛かる。


 ジャスクの剣より間合いが短い得物だが、それだけに素早さは人一倍だ。

 ディアナとの戦いでは発揮出来なかったその素早さを、今度こそ見せる。


 そう思っていたのかもしれないが、ジャスクは間合いに入られる前に剣を振るって、短剣使いの顔を横薙ぎにした。


 しぱっ!


 こめかみから、反対のこめかみまで、二つの眼球の表面を通って、赤い筋が奔った。

 悲鳴を上げようとする口に足の爪先をねじ込んで蹴り飛ばす。


 双剣使いが、ジャスクの横から躍り掛かった。


 右の剣が繰り出されると、その瞬間にその右腕を斬り落とした。

 左の剣が放たれる前に、剣を切り返して左腕の骨を砕いてしまう。


 とどめの一閃を放とうとした所で、双剣使いが逃げ出した。

 代わりに、剣を持った盗賊が前に出る。


 振り下ろされる剣を横に避けて、高く跳躍し、唐竹に剣を打ち下ろした。

 脳天から臍の上まで、ざっくりと両断するジャスクの剣。


 頭からかち割られた死体を蹴り飛ばし、返り血を浴びたジャスクが鬼の形相で振り向いた。






 バンナゥは長い棒を持っている。穂先がないだけで、槍と変わらないリーチである。


 槍使いの得物を、それ以上の華麗さで打ち落としてゆくと、一瞬の隙を突いて鳩尾に先端を打ち付けた。


 げっ、と腹の中のものを吐き出す顎を、下から跳ね上げた棒で打撃し、顎の骨を砕いてやる。

 頭の上で棒を回転させると、右斜め後ろに駆け寄っていた刀の盗賊を、逆袈裟に殴打した。その一発で、鎖骨が砕けた筈である。


 他の刀の盗賊二人が、バンナゥの得物の間合いに怯えて攻められないでいると、彼らを押し退けてハンマー使いが出て来た。


 バンナゥは動きが大振りなハンマー使いに対し、棒での突きを繰り返すのだが、相手はデルタグランドの魔装で身体を強化しており、通用しない。


 ハンマーが、頭上から振り下ろされる。

 バンナゥは棒の片端を地面に突いて、棒を立てるようにして跳躍した。


 棒高跳びの要領でハンマー使いの頭上を取ったバンナゥは、自分の体重によって倒れてゆく方向を操作し、控えていた刀使い二人に躍り掛かった。


 空中で身体をひねり、回転を加えた両端で同時に二人の頭部を叩く。一方はうなじに、もう一方は鼻先に棒を叩き付けられて、その場に倒れた。


「や、やってられるか!」


 ハンマー使いが逃げ出した。

 追撃しようとしたバンナゥだったが、風切り音の後、足を止めた。


 その胸から、細長くて、反対側に羽のようなものが取り付けられた棒が生えている。

 戦車を取り戻した野盗が、矢を放ったのであった。


 この矢を抜こうとしたバンナゥに、一度は背中を向けたハンマー使いが肉薄した。

 胸に刺さった矢を指標に放り出されたハンマーは、バンナゥの胸骨と肋骨を、無残に粉砕してしまった。

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