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朝焼けの襲撃⑩~決着~

 ドンシーラは、セヴンズ・トランペットという名であるらしい黒いハルバードを、上から叩き付けた。


 カルナは後方に飛びずさるのだが、斧部分が地面に喰い込み、しかも前方に向けて小さな地割れを引き起こす。


 黒いハルバードの全体から、黒い靄が立ち昇って来るようであった。そのオーラが衝撃を倍増し、伝導して、通常の斬撃以上の威力を発揮しているのだろうか。


「存在を固定された魔装は、その真の威力を発揮する、というのは本当だったか……」


 ドンシーラは穂先をカルナに突き付けて、言った。


「そんなものは子供のまじないと思って信じていなかったが、あながち嘘でもないらしいな」


 魔装は、自然の力を浴びた魔法石と、魔族の身体から造られる魔道具を合わせたものだ。

 人間も亦、自然の一部であり、その肉体には自然の力が宿っている。魔法石と順応する魔道具も同じく、自然の力を存分に宿していた。


 魔装の威力は扱う人間の素養にもよるが、その一つが精神力である。この精神力は、本来の心の強さもあるが、魔装への認識もその一部である。


 例えば――イリスが森で拾っていた枝は、それまで調理や風呂を沸かす時に使われるものであった。しかし今回は、矢の材料となっている。


 同じ木材でも、火を起こす枝を薪や火種と呼び、弓で射出するものを矢と呼ぶ。

 薪を弓で放ってもどうにもならないが、それが矢と呼ばれれば殺傷力を持つ。


 材料は同じだが、使用者の認識によって、その用途や威力が変貌するのである。


 魔装もそれと同じで、漠然とジュエルフレイムの魔装と認識するより、精神を高揚させ、痛みや恐怖を消す作用がある武器と認識した方が、魔法石の力がより大きくなり易い。


 その為に簡単なのが、名前を付ける事なのだ。


 命名して、そうした働きがあるものだという存在として固定する事で、それに相応しい力を呼び出す事が出来る。


 セヴンズ・トランペットとなった黒いハルバードは、文字通り、七色の戦技を繰り出す必殺武器へと存在を昇華していたのだ。


「でやぁっ!」


 ドンシーラはセヴンズ・トランペットを八双に構え、横薙ぎにした。


 カルナは更に大きく後ろに下がった。

 その胸元に、横一文字の傷口が開き、血がこぼれ出す。


 ドンシーラは左側に振り出したハルバードを、内側に引き戻しつつ、下方に向けた。カルナの足元を狙ったのだ。


 かと思うと斧部分がくるりと反転して上を睨み、カルナの身体を逆風に両断しようとする。


 カルナは逆に前に出るようジャンプして、斧の持ち手寄りの柄に切り上げを押さえるよう着地すると、不安定な体勢ながらドンシーラの顔へと左の前蹴りを繰り出した。


 ドンシーラは身体を横に倒しつつ、セヴンズ・トランペットの穂先で地面を削りながら引き戻し、蹴り付けるカルナに対して石突の鎌を引っ掛けようとした。


 足場を失ったカルナは、蹴り足を右腕で抱えて腰をひねり、空中で回転。


 鎌で右腕の外側を引っ掻かれつつ致命傷は避けると、体勢を戻す勢いで槍と斧を振り上げるドンシーラの懐に飛び込んでゆこうとした。


 しかしカルナはそれをやめて、背後に跳びながら半回転し、振り出した左足で飛来した矢を蹴り落とした。


 カルナの蹴りを受けた矢が、地面に突き刺さる。


 振り向いたカルナの視線の先には、アムンの壁から石と矢に応対して、町を攻め切れないでいるドンシーラの戦車隊が動き回っている光景があった。


 戦う内に、防衛ラインを大きく越えてしまっていたらしい。


「ちっ……」


 カルナが落とした一本だけでなく、次から次へ矢と石は降り注ぎ、これはカルナの背中に追撃を掛けようとしたドンシーラにも襲い掛かった。


 ドンシーラは防衛ラインから後退し、


「野郎共!」


 と、声を上げた。


「今日はここまでだ! 一旦、退くぞ!」

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