表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/104

朝焼けの襲撃④~包囲陣中問答~

 動きが、止まっていた。


 ガバーレは左右に指示を出して、投石器による弾幕や目視による弓の発射を一旦止めさせている。


 嚆矢型から、円形に変化したドンシーラの布陣――その中央に、カルナがいた。


 投石器の弾幕による防衛ラインは、門からの直線距離にして、一般的な弓で射出した矢が下に五〇度は傾いて、鏃の硬さで漸く門に喰い込むくらいの距離である。


 ドンシーラたちは、それよりも幾らか遠くにいたのだが、カルナは矢を投擲して戦車を一台戦闘不能にしてから、あっと言う間にその防衛ラインに辿り着いてしまった。


 そして、ドンシーラの戦車隊に囲まれたのである。


 混戦状態に入ったとしても構わず撃つように言われていたが、そこまでガバーレは戦士として徹底出来なかった。


 カルナを囲んだドンシーラの戦車六台が、町からの投石を警戒しつつ、カルナに矢を向けているからだ。

 戦車の正面はアムンを向いているのだが、これに乗る射手の四名が、四方からカルナに狙いを付けている。


「大した度胸じゃねぇか」


 ドンシーラが、カルナに向かって言った。


「武器も持たずに、俺たちの前に殴り込んで来るとはな」

「……あんたが、ドンシーラという男か?」

「応ともさ。ジルダが世話になった男ってのは、お前か?」

「そうだ」

「あの腰抜け共に入れ知恵をしたのもお前だな」

「そういう事になる」

「良く、あの日和見主義の連中を焚き付けたもんだ」

「元から彼らに、あんたたちに対する敵対心があったという事だろう。俺の存在はきっかけに過ぎない」

「平和の町が聞いて呆れる……」

「その平和を乱す者に対し、怒りを覚えるのは自然だと思うよ」

「だが、もう終わりだ。小僧、先ずはお前を殺す。それからじっくりと町を手に入れさせて貰うぜ。あいつらから搾り取れるものは全て、な」


 カルナに向けて四方から、矢が向けられていた。

 それを見ていたガバーレは、投石器に石をセットし、矢をつがえて、カルナを狙う戦車隊の射手を射抜いてやろうとした。


 だがそれより早く、ドンシーラの乗っていた戦車の射手が、ガバーレが顔を出していた窓目掛けて、正確な一射を打ち込んだ。


 カルナがこれを止めようと踏み出した時、背後と左右から、ほぼ同時に矢が放たれた。


「――ふっ!」


 カルナは地面を蹴って低く跳躍すると、低空で身体を回転させた。それまでカルナが立っていた場所に、二本の矢が斜めに突き立った。


 カルナの胴体目掛けて地面と平行に打ち込んだのでは、向かいにいる戦車の射手か操縦士と相討ちになる可能性がある。だから、若干狙いを下げて、太腿から下に上から突き刺さるよう放った。


 そして後方からの一本を、カルナは回転した際に後ろに跳ね上げた足で蹴り上げており、矢は上空に跳ね上げられると、そのままではガバーレが顔を覗かせている窓に一直線に進む予定だった矢にぶつかり、相殺して反対側に弾かれてしまう。


「ひゃはっ!」


 と、別の戦車に乗っていた男が、ジルダが使っていたのと同じ形状の剣を打ち下ろして来た。

 異なっていたのは、その剣の鍔元に、三日月型の蒼い宝石が埋め込まれている事だった。


 カルナはその場で身体を半回転させようとしたが、カルナと男の間にディアナが滑り込んで来て、剣を受け止めた。


「はぁっ!」


 ディアナは水の魔装である剣を弾き飛ばし、男の身体に鋭く斬撃を浴びせた。

 袈裟懸けの一閃に血を吹いて倒れる男。


 カルナは背後をディアナに任せ、正面のドンシーラが乗る戦車へと肉薄した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ