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旅人カルナは太陽の子―魔装を巡る冒険―  作者: 星崎リョウ
第三章 炎の剣士と女騎士の帰還
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戦嵐―あらし―の前の…①

 遊撃隊――


 カルナとジャスクは、自らをそのように設定した。


 ドンシーラの盗賊団が攻めて来たとしたら、壁からの矢や石による牽制をしている間に門から飛び出し、彼らを待ち受けて討ち倒す。


 町の門はその間、固く閉ざして敵の接近や侵入を防ぎ、仮に入り込まれたとしたら内側で袋小路に誘い込んで壊滅させる。


「たった二人で、ドンシーラたちに挑むようなものではないか!?」


 ガバーレはそんな風に言ったが、ジャスクはこのように返答している。


「俺は昔、一〇人を斬った。センセは素手で俺と同じくらいの強さがある。二人で力を合わせれば、三〇人程度の盗賊、大した敵じゃない」


 ジャスクはお気楽な男だが、嘘を吐いたり見栄を張ったりする事は滅多にない。これが嘘でも見栄でもないのならば、本気でそうだと思っているという事だ。


 他の者たちに各部署での作業を任せた後、カルナとジャスクは門の手前の小屋で、机を挟んで向かい合っていた。テーブルの上には大きめの羊皮紙が広げられ、町の構造を詳しく図示している。そこに、有事の際にはどのように動くかを細かく書き記していた。


「弾幕組は大丈夫なのか」


 ジャスクが訊いた。

 壁の上で、矢や石を投射する者たちをして、そのように呼んでいる。


「据え置き型の投石器を、即興ではありますがお願いしています。弓術も、経験のあるタルセームさんやバンナゥさんが教えれば、筋の良い人なら或る程度は扱えるようになるでしょう」

「いや、そういう事じゃなく……」

「弾数の事ですか。なら、イリスちゃんが何人か連れて、森で枝や手頃な大きさの石を拾いに行って貰いました。牽制の弾幕としては充分な量を確保出来るかと」

「そうじゃなくて、仮にこうドンシーラたちがやって来るとして……」


 ジャスクは、町を記した地図の外側から、東門に向けて拳を進ませた。


「俺たちは、こう出てゆく」


 その東門の外に、反対の手の人差し指と中指を置いて、ドンシーラに見立てた拳を滑らせる。


「俺たちが戦っているその間に、ドンシーラが隊を分けて、町を狙ったら……」

「その時は弾幕組に活躍して貰う事になります。悪くて盾組にも」

「いや、弾幕組が、俺たちに矢や石を当ててしまうという事はないだろうか。俺の魔装の予測は、飽くまでも対人だ。意識の外から飛んで来る矢までは計算出来ない」

「そこは、俺たちが頑張って避けるしかないでしょう」

「後ろからの矢を避けながら敵に突っ込むってか? 簡単に言ってくれちゃって」


 ジャスクはぼりぼりと、頭を掻き毟った。


 思えばこのカルナという男、ジルダの刃を前にしたり、ジャスクが決闘に剣を持ち出したりしても、自ら進んで武装しようとはしなかった。


 剣を持っているという事は、それだけで素手の相手に対して有利になる。そんな状況に身を投じて尚、自ら武装を拒んでいるようなカルナは、余程、自分の技術に自信があるか、それとも――


「何か隠している事があるな、センセ」

「隠し事?」

「あんたもこっそり、何か魔装を持ってるんじゃねぇのか? 俺もそうだが、戦場なら兎も角、魔装使いってのは自分から魔装を見せびらかしたりはしない。しかし魔装によるとしか思えない戦果というのが世に広められる事はある。だから、魔装ってものの名前は知ってても、それがどんな武器で、どんな効果があり、どんなものから出来ているのか、それは広く知られていない」


 町の人たちがジルダの剣を見て魔装と判断したのはその為であり、イリスが魔装について詳しくなかったのもその為である。


「センセが、ドンシーラ共が魔装を持っていると聞いてもびびらなかったのは、あんたもそこそこのレベルの魔装を持っているから――ってのはどうだい?」

「そう言われても、俺は、何も持っていませんよ。あの服以外には……」

「素人目にはそうだろう。だが、アクセサリーや武器ではなく、身体に隠しておける魔装もあると聞いた事がある……」

「――」

「クラウンクラス――と、言ったかな?」


 カルナの眼付きが、変わった。

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