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旅人カルナは太陽の子―魔装を巡る冒険―  作者: 星崎リョウ
第三章 炎の剣士と女騎士の帰還
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炎のファイター①

 慌ただしい一日が、始まった。


 カルナは、弓や投石器、スリングショットの遣い方を一通り教え、石塀の上の窓から周辺を警戒し、怪しいと思われる者があったなら先んじて狙撃する人間を選んだ。


 又、各門の前に盾を広げ、町への侵入を防ぐ人間も必要だ。

 仮に侵入されてしまったなら、どのように逃げ、そして追い駆けて来る敵を逆に追い詰めるか、その道筋と、その指揮をする人間がいなければならなかった。


 町はチェスの目のようにきっちりと区切られており、特定の道に盾を置いて急造の壁としたり、家そのものから引き払って貰ったりして、或る種の迷路を造り上げようと計画した。


 壁上の迎撃兵の指揮を執るのは、ガバーレとライヤ、そしてエイヴァン。


 門前で盾となるのは、東がタルセームで、西がバンナゥ、北側をフィーアに任せ、他に彼らの推薦で呼び出した屈強な人間を配置する。


 避難経路を設定した町を、六つに分けて、各ブロックをワライダ、サルバー、ビルマン、シグサルァ、パーカロール、ファイヴァルに任せる事にした。


「俺も戦いたいよ!」


 と、ワライダが最年少故の若い血潮を滾らせて、カルナに具申した。


「戦いは最後の手段だ。それに、出来る事なら決着は町の外で付けてしまいたい。それが出来なかった時、君はこの町の人たちを守る大切な役目を果たす事になる」


 カルナがそう説得するのに合わせて、ジャスクが少年に笑い掛けた。


「こいつは凄い大役だぜ、ボウズ。このセンセ、出会ったばかりのお前さんをしっかり信頼してるんだぜ」


 そう言われては悪い気もせず、ワライダはジャスクに言いくるめられるようにしながらも、避難経路を頭の中に叩き込む作業を始めた。

 そしてこのジャスクは、


「あんたと一緒に、遊撃隊長、やらせて貰っても?」


 と、言っている。

 カルナは初め、これを渋った。

 しかしジャスクは、それならば、と言ってカルナを広場に呼び出し、決闘を申し込んでいる。


「決闘だって?」

「決闘と言っても、軽いやり取りさ。ブランクはあるが、これでも俺は、結構、優秀な戦士だったんだぜ」


 その決闘で、自分にどれだけの戦闘力があるのかを、カルナに示すのだと言った。

 カルナは、町の人々が自分の計画を納得して動いている中、ジャスクと手合わせをする事になった。


「それじゃあセンセ、おっ始めようぜ!」


 ジャスクは胸と腕、そして脛に自前の鎧を装着し、一振りの剣を帯びてカルナの前に現れた。

 鎧と言ってもかなり薄く、軽く造られており、装着する部位が少ない事もあって、防御力は低いものの、動きを殆ど制限されないように思われた。


 驚いたのは、彼が持ち出した剣だ。

 真っ直ぐに伸びた両刃の剣で、背中から鞘を払うとぞろりとした赤い揺らめきが刀身に走った。

 柄尻には丸型の赤い宝石が、爪状の部品によって固定されている。柄巻きはどうやら、爬虫類のような生物の皮で出来ているらしかった。


「ジュエルフレイムの魔装ですか……」

「流石に物知りだな、センセ。その通り、こいつはアムンに来るまでに、俺と共に戦場を駆け抜けた相棒さ。殺すだけの戦いに明け暮れた日々を忘れたくて仕舞い込んでいたものだが、守る為に戦うって事が気に入った! だからもう一度、力を借りようと思ってね」


 ジャスクは剣を二度、三度と振り回して、身体がなまっていない事を確かめた。


「センセも、何か得物を持った方が良いぜ。じゃないと、危ないからな」

「そうさせて貰いましょう」


 カルナは町の人に頼み、ジャスクの剣と同じ長さの木の棒を用意して貰った。

 服装は、アムンの町で一般的に流通している貫頭衣と二股の下衣だ。ブーツは自前のものである。


 昨日はダイパンによる演説が行なわれた広場の中央で、この日はジャスクとカルナが向かい合っていた。

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