戦士たちよ①
壇の前にやって来たのは、男が一一人で、女が三人。
男は、
ガバーレ
ワライダ
サルバー
ビルマン
ジャスク
タルセーム
ライヤ
バンナゥ
フィーア
エイヴァン
レブーキス
女は、
シグサルァ
パーカロール
ファイヴァル
である。
最初に声を上げた少年が、ワライダであった。彼が一番年下だ。
ワライダに続くようにして手を挙げたのが、レブーキスだった。
ガバーレが、とうが立つ寸前、誰かと戦うという事に関してはぎりぎりと言ったラインである以外は、何れも若く、精力に満ちた男たちに見えた。
女の方は、ファイヴァルが人妻である。彼女が前に出るのを、咳をしながら止めていたのが夫であった。
シグサルァとパーカロールは、イリスよりも二つ上で、彼女の世話を良く焼いていたと言う。
その一四名に、カルナが武術を教える事になる。
他の人々には、町の周囲の見張りの徹底と、弓矢や投石機などの迎撃兵器の作成、木材を使用した移動式の盾や棒術などによる一時的な自衛手段の指導、そして仮に壁の内側に侵入されてしまった場合の事を想定した避難経路図を明瞭にする事を頼んだ。
カルナをまだ信用し切れていない者も多かったが、そうした人たちにはイリスやダイパンが自ら頭を下げて頼み込み、そこまでされてはやらない訳にはいかないという気持ちを煽って、行動させた。
「信頼されているんですね」
カルナは、自ら前に出て来た一四人に、ダイパンとイリスの事を言った。
「あの人が、この町の王なんですね……」
「王? この町に、そういうものはないよ」
ガバーレが言った。
浅黒く焼けた肌をした、灰色の髪の男だった。とうが立つ寸前とは言ったが、それだけに、自分の身体についてはしっかりと把握し、出来る事と出来ない事を充分に区別しているだろう。
「ものの例えですよ。人の中の王……人々を愛し、人々に慕われ、その言葉によって動きたいと思わされる人……」
「それが、貴方の言う王?」
シグサルァは訊いた。
すらりと背の高い、肌の白い少女で、長い髪の毛を頭の上で縛っていた。
「はい。生まれによってではなく、行ないによって王となる者の事です」
「行ないによって?」
「それって、戦争で国を侵略して、自分の国を作るって事?」
サルバーとビルマンが訊いた。縮れた髪に、黒い瞳を持った、同じような顔の二人だ。カルナが、その二人の姿を見比べて、
「アシュヴィンか?」
と、訊いた。
「アシュヴィン?」
「ああ……貴方たちは、双子なのですか?」
「そうさ。俺が兄のサルバー」
「僕が弟の、ビルマン」
双子の兄弟は、右手を前に出して言った。サルバーの右手の甲には円形の傷があり、ビルマンの同じ場所には四角い傷が付けられていた。
「顔も声も身体も、そっくりですね」
「双子だからな。性格は結構違うんだけどな」
「それで、さっき言ったのはどういう意味なの? 行為によって……っていうのは」
「俺の国に伝わる、或る人の言葉です。“人は生まれによって王となるのではなく、行ないによって王になる”……俺の国では、人間が、とても厳しい階級制度の中で生きていました。王族や貴族の家に生まれた者は、能力の如何に関わらず王侯貴族として、奴隷に生まれた者は子々孫々に至るまで搾取され続ける奴隷として。そしてその下に、非接触民……人と認められず、奴隷からも蔑まれる人たちもいました。そしてそれが、当り前の倫理観として成り立っており、多くの人たちはこれを受け入れたような形で過ごしていました。ですが、その言葉を残した人は、王という者を血統によって受け継がれる階級ではなく、誰かを助け正しく生きる道を歩む者と考え、例え生まれが奴隷であろうとそれ以下の扱いをされる者であろうと、正しく生きる王にはなれると教えたのです。そして同時に、王の血を受けて生まれても、その行為によって、心の貧しい存在になってしまうともね……」