↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/104

歓迎会①

 アムンでは、カルナの歓迎会が執り行われた。


 カルナは医者に傷を見て貰った後、イリスに案内されて南東の浴場傍の、食堂の一つに赴いた。

 するとそこには、既に多くの料理が並べられており、食堂に入る限りの人たちでいっぱいになっている。


 牛の肉、豚の肉、鶏の肉。

 サラドも、フルーツもある。

 香ばしいスープ。


 それらが、所狭しと並べられていた。


「さぁさ、旅のお人! 存分に楽しんで行ってください!」

「イリスちゃんを助けてくれたそうじゃねぇか!」

「遠慮なんかしないで、ほら、食べた食べた! 随分頑張っていたそうだからね!」


 食堂は、一〇〇〇人が入るか入らないか、というくらいの広さであった。

 その厨房に近い場所に、カルナはあれよあれよと言う間に案内され、椅子に座らされた。


「先ずはこいつで一杯やってくれや!」


 と、一人の男が大きな樽を持ってやって来た。

 樽の蓋を開けると、芳醇な葡萄の香りが大気中に拡がった。

 柄杓を持った女が横から出て来て、葡萄酒を掬い、細長いグラスに注いだ。


 赤色のガラスの表面に、白いガラスを被せて、白い部分を浮き彫りにしているらしかった。かなりの高級品である事が、カルナには分かった。


「申し訳ないが……」


 カルナは眼の前に差し出された葡萄酒のグラスには手を付けず、言った。


「酒はやれないんです。折角苦労して造ったものを、味わえない人間に飲ませてしまうのはいけない」


 そう言うと別の人間が、同じようなグラスにミルクを入れて持って来た。


「すみません、気が利きませんで」

「こちらこそ、ご好意を無碍にする形で、申し訳ない」


 カルナはそのミルクを、ありがたく頂いた。


 サラドには、玉ねぎとニンニク、リンゴをすり下ろして和えたソースが掛けられている。

 スープはカボチャやニンジン、豆を煮込み、素材本来の味を引き出させていた。

 ステーキには、高級品である塩や胡椒がふんだんに使われている。


「こんなおもてなししか出来ませんで」


 食堂の女将らしい女性が出て来て、カルナに言った。


「いえ、俺のような異国の人間に、これだけの食事を出して頂けるなんて、とてもありがたい事です」

「異国の人の相手をするのは、この町で過ごしていれば自然と慣れる事さ!」


 誰かが言った。


 成程、と、カルナはこの豪勢な食事に納得がいったようである。


 貿易の要衝であるアムンの町に訪れる、様々な国の人々が、食料品や調味料、高級な食器などを売ったり交換したりして、この町の文化を発展させているのだ。近くに海がない場所で、これだけ塩味の効いた食べ物を提供出来るのは、その証拠でもある。


 しかし――と、カルナには一つ、引っ掛かる事がある。

 先程、イリスに訊こうとした事だ。


 何処となく活気を感じられないこの町、それに関してイリスは、泣き出しそうな顔を見せて何かを言おうとしていた。


 だがイリスは、カルナに興味を持った大人たちに押し退けられて、何処かへ行ってしまっていた。


「なぁ、兄ちゃん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。