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検討中  作者: Mare@ChocoMint
第一章
2/2

ep.02

翌日。テスト一週間前は部活停止。放課後は真っ直ぐ家に帰ろうとしたのに…

 「写真部の…集まりですか?」

 「そうそう、来ない?」

 「遠慮します…僕、写真部じゃないし」

 「俺の助手って事でさ!なぁ来いよ~」

 「嫌です」

 「お前の分の席、予約しちゃってんだよ~」

 なんちゅう手際の良い…じゃなくて、なんで勝手に僕行くことにしてるのさ…しかも、テスト一週間前なのに集まるなんて…

 「テスト勉強も兼ねてだから!な?」

 …まぁ、それなら…テスト勉強してればいいか…

 「…分かりました」

 「よっしゃ!じゃあ放課後二年三組の教室な!」

 

 と、聞かされていたのに。

 

 「え、榊原燐って人形系男子の?」

 「なーんだ聞いてたより可愛いじゃーん」

 「いい後輩見つけたな友~」

 「へへっ、だろ~?」

 

 二年生三人、三年生一人。と、僕。まず写真部…部員四名…。集まりと言うより…なんか…なんかさ…違う気がする。

 というか!テスト勉強も兼ねてるとか言ってたのに誰一人ノートも教科書も出さないし!机の上にはお菓子、お菓子、お菓子!飲み物!ノート置くスペースないし!場所もフードコート…勉強する気なんてないでしょこの人達!

 「どした?燐」

 貴方のせいですよ…!

 「榊原くん、写真部入らないの?」

 二年生の臼井先輩に聞かれる。答えようとすると

 「俺の助手だから!」

 と、先輩が答えた。助手って…認めてないし。知らないし!

 「どんな子かと思ってたら、案外可愛い顔してんだね」

 と、二年生の山口先輩。

 「人形系男子って聞いてたから身構えちゃったよ」

 山口先輩に言われる。

 「え、お前人形系男子って呼ばれてんの?」

 稲葉先輩、知らなかったらしい。

 「…僕ちょっとお手洗い行きます…」

 席をはずしてトイレに行こうとしたら

 「あ、俺も行く」

 三年生の先輩が言った。断るのも変だし、一緒に行くことになった。

 

 「ごめんね、友が無理矢理連れてきたんでしょ?」

 この人、見抜いてるみたい。

 「…別に…」

 「俺、狩野洸一」

 「…榊原燐…です」

 

 トイレを済ませて戻ろうとすると

 「少し寄り道しようか」

 と提案されたので、ついていくことにした。先輩が来たのは参考書のコーナー。

 そっか、先輩三年生だし…進路とか考えてるのかな…写真部で一番真面目そう。

 「得意教科、教えて?」

 「え…と…国語…です」

 「国語得意だけど、話すのは苦手そうだね」

 図星を突かれ、言い返せない。

 「俺は理数系が得意なんだ」

 そう言って一冊参考書を手に取る。

 「…燐くん、なにも聞かないの?」

 「えっ?」

 「俺に興味ない?」

 「興味ない…って…それは…」

 どういう…

 「ふっ、やっぱり何でもない。戻ろうか」

 参考書をしまって、フードコートに戻ることにした。

 

 「遅いッスよ先輩!」

 山口先輩が言う。

 「ごめんごめん。混んでて」

 なんで…誤魔化すんだろうか。

 「…あ」

 僕は携帯を見た。

 「すいません、僕帰ります…」

 「え、榊原くん帰っちゃうの?」

 と、臼井先輩に言われる。

 「すいません…」

 そう断って席をたつと

 「俺も帰るよ」

 稲葉先輩が立ち上がった。

 「同じ方面だし」

 

 と言うことで、駅まで歩いているんだけど

 「なぁ、怒ってる?」

 「別に」

 「お前も少しは接し方学んだ方がいいって」

 「余計なお世話です」

 「…てかさ、狩野とどこ行ってたの?」

 「トイレです」

 「……あっそ」

 なんでそんなこと聞くんだろうか…

 

 

 次の日、教室に珍しい先輩が来た。

 「狩野先輩…」

 「朝早く登校してるんだね」

 「先輩も…早いですね…」

 「まぁ、学生寮だから。聞きたいことがあってきたんだ」

 そう言って見せたのは三年生の教科書。開いたページは漢文だった。

 「この書き下し文がどうも…」

 「これはまず…ここで区切って…」

 説明し終えると、あぁなるほど、と先輩が教科書に書き下し文を書いていった。

 「そうですね、多分それで合ってると思います…」

 「ありがとう、燐くん。教え方が上手いんだね」

 「いえ、それほどじゃ…」

 「ねぇ、放課後も教えてくれない?」

 「えっ、僕が…ですか?」

 「今回のテスト、進路に響くからさ。苦手教科の国語、教えてくれる?」

 そうか、先輩の進路がかかってるんだもんな…

 「分かりました。放課後待ってますね」

 このときの僕には、図書室の事をすっかり忘れてしまっていた。

 

 放課後、三年生の教室にお邪魔して、僕は狩野先輩に教えていた。周りにはいつの間にか、人が増えている。

 「これはまず、ここに返り点を…」

 「ここ?」

 「じゃなくて、下ですね」

 「あ、ここか」

 「そうです。そうしたら順番が…」

 人と勉強するのって、楽しいな…

 「燐くん、さすがだね」

 「全然…まだまだ頑張らなくちゃ…」

 「勉強熱心だね」

 家に帰っても、勉強することしかないし。こんな僕にも、こんな取り柄があったなんて…

 

 「ありがとうございました」

 「お礼を言うのはこっちだよ。今度ご飯に行こう。奢るよ」

 「あはは…はい…」

 

 

 「燐」

 

 名前を呼ばれて振り返ると、稲葉先輩がいた。ここ、三年のフロアなんだけど…

 「友?」

 狩野先輩も驚いていた。

 「滅多に来ないのに、何か用かい?」

 「…燐」

 先輩の声も無視して、僕の腕を掴んで歩き出した。

 「わっ、ちょっと…先輩…!」

 ズカズカと階段を降りるから、転びそうになる。先輩についていくのに必死になる。

 「先輩、痛い…!」

 掴む力が強くて…怒ってる…?

 「先輩…」

 もう一度呼ぶと、図書室についていた。先生は職員会議でいない。

 「…先輩…なんですか…離して…」

 手で払おうとしても、強くてビクともしない。

 「…なんだよ…」

 先輩が呟くように言う。

 「俺には簡単に言わないくせに…狩野には言うのかよ…」

 「ちょっと…なんの事ですか…」

 「…燐…」

 先輩が僕を見た。直感で、危ない感じがした。

 

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