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フィオナの語る、真実と過去。

公爵令嬢、フィオナ・レッセンス視点です。

私、フィオナ・レッセンスには、大きな秘密がある。転生の事はもちろん、別の大きな秘密もある。その秘密は、今までずっと婚約者である王太子のアンス様に隠し続けている。幸いに演技力は抜群だし、アンス様も何も言ってくれないから、バレていないとずっと思っている。それが実は、アンス様が私を待っているという気遣いによる態度だなんて、気づかなかった。


それでも、実は知っていたってアンス様に言われても、私は本当の事なんて言えない。アンス様には、なおさら。だから、アンス様の優しさに甘えて、秘密を隠し続けた。


でも事態は、悪化した。あの日から五日、私何も食べれない。四日目までは、なんともないから、油断したんだ。だから、五日目に倒れた時、しまったと思った。そして予想通り、アンス様は私の秘密を暴こうとする。その威圧に負けて、私は仕方ないように、みんなに私とアンス様を二人きりにして欲しいと頼んだ。仕方なく、秘密を教えようじゃないか。


でも、転生の事は、言うつもりはなかった。もう一つの秘密を言うつもりだった。それでも、自分の中に別の人の記憶がいるって言っちゃった。こんなの信じられるわけない。もう、私の人生は終わるんだろうな、と思った。


でも、アンス様は、信じるって言ってくれた。


「君の嘘は、分かると言っただろう?だから君が嘘をついていない事も、俺には分かる。君が嘘を言わない限り、どんな事でも俺は信じる。だから、頼む。俺に、すべてを言って欲しい」


その言葉を聞いた私の目から、一粒だけ涙が落ちた。そうか。実は私は、ずっとこの人にすべてを言いたかったんだ。私はずっと、この人に助けを求めていたかったんだ。


***


私は、生まれた時から、日本という国に生きている大人の女性の記憶を持っている。その記憶が前世の記憶で、これが転生というものだと、その記憶の知識でそう解釈した。そのせいで、私は赤ん坊でありながら、大人しいであまり泣かなかった。このことに、両親や世話している乳母がとても心配していることは、分かる。それでも赤ん坊の振りができない私には、罪悪感ばかりが募った。


それから私は、三人の愛情を受けながら健康に育っていた。大人の記憶を持つ私は、理解の良い子供だった。両親二人は、私を天才だとちやほやした。自慢されるのは恥ずかしかったが、嬉しかった。もっと褒められたいと思って、まだ三歳とはいえ、私は私に甘い両親にお願いした。


お父様のお仕事を手伝える勉強をしたい、と。


それは女の子のするべき学びじゃないと、最初は断られた。でもマナー、ダンス、刺繍、ピアノ、などなどで女の子の学びと言われるものはすべて、二年間でマスターした。やはり私は天才だと、褒め倒した両親は、私が五歳の時に、私の願いを叶えてくれた。


我が家には、男児がない。でも私がそういう気なら、家督を私に譲っても別に問題はない。だからお父様は、私に先に領地の事を教えてくれた。それから、お父様の仕事についても。そして、それらを学ぶ私は、ある日、ある事に気づいてた。


お父様は、この国の法を犯している。最悪な形で。


そもそも、最初からおかしいと思っていたのだ。元日本人の私が言えば、メタボ親父がたくさん宝石を着飾っているという、悪い貴族のイメージそのものだったんだ、お父様は。でも、今までのお父様は優しいお父様だから、ただのイメージで実際は違う、と信じていた。領地の事を学んだ時も、領民は無理な税を取っているという事もないし、みんな盛んでいると言わなくても普通に生きているそうだしね。


だからあの書類を見つけた時、私を試すだけのデマだと思っていた。だから、自慢げにお父様に質問したんだ。それが悪手だと知らずに。


「ねえ、お父様。この書類って、お父様が隣国に我が国の情報を流してる証拠になりえるんだよね?」


そう質問された時のお父様の顔は、とても怖かった。そして怒りで、赤かった。今まで優しかったお父様は、乱暴に私の手を掴んで、そして乱暴に私を引っ張った。行き着く先は、屋敷の最奥にある、今まで使われていなかった埃まみれの空き部屋だった。お父様は、私を投げるように部屋に押し入ってから、外から扉の鍵をかけた。


「恨むなら、己の頭の良さを恨め。お前が頭の悪い小娘だったら、私のやっていた事が知られても、私がここまではしないだろう。でも、頭の良いお前は、必ず私の邪魔をするだろうから。だから、それを出来ないように、こうやってお前をこの部屋に閉じ込めた。お前はあそこに、自分の死でも待っておけ」


やはりお父様は、悪い貴族だったんだ。それも最悪な形で。そして馬鹿な私は、今まで騙されていたという事。


「ふざけるな!くそ親父が!裏切者め、死んじゃえ!」


日本人の記憶なしでは知らなかったはずの悪口を、扉の向こうのお父様に向かって言った。


「そんな悪い言葉を教えた覚えはないが、お前の事だからさすがとしか言えんな。だが、好きなだけ言っても構わんさ。先に死ぬのは、お前だから」


「出来るもんなら私を殺してみろ、クソ野郎が!でも、今私を殺せば、後悔するのはお前だと先に忠告しとくよ!」


「ほお、面白い事を言うんだな、お前。お前は自身に価値があるとでも勘違いしているのか?」


「は!私に価値があるって決まってるじゃない!何せ私は、王太子殿下の婚約者になる女だから!」


「それはすごい自身だな。だが、確かにお前が王太子の婚約者になったら、私への利益も大きい。いいだろう、今はお前を生かしてやる。だが、もし王太子の婚約者がお前以外に決まったら、お前を即殺すから、覚悟しとけ」


それから私は、アンス様との初顔合わせまで、一日に一回しか食事を与えられない監禁生活を送っていた。

読んで下さってありがとうございます。

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