フィオナの語る、この世界の事。
公爵令嬢、フィオナ・レッセンス視点です。
こんにちは、皆さん。ただいま悪役令嬢転生を体験中の、フィオナ・レッセンスです。ただ私は、頭をぶつかったり高熱を出したりとかのテンプレ展開で前世の記憶を思い出したわけではなく、生まれた時からずっと記憶を持っていました。おかげであまり泣かない赤ん坊だったので、両親にはさぞ心配をかけたのだ。
ま、それを置いておいて、私が転生したこの世界は私が前世でハマりにハマった乙女ゲームでした。ゲームのタイトルはダサいので言いたくありません。それより、さっきも言った通り、このゲームにはフィオナ・レッセンスは悪役令嬢として登場しています。
攻略対象は五人。一人目は我がクルステット王国の王太子、フィリアンス・ディ・クルステット殿下。二人目はフィリアンス殿下の異母弟、第二王子のリベルヴァス・ケイ・クルステット殿下。三人目は宰相閣下の息子でフィリアンス殿下の腹心、エルネスト・プラートヴェイル。四人目は騎士団長の息子でフィリアンス殿下の護衛筆頭候補、アクトリオ・ウォーレン。そして五人目で隠し攻略キャラは、まさかの宰相閣下、ヴェルネディエ・プラートヴェイル。
そんな次々に教えられても覚えられないぞ、と言っているそこの方。残念ながらその通りですよね。よくこんな名前全部覚えてるよなと我ながらも思ってますので。ま、たくさんやりこんだ成果だろうね。
おっと、話がそれましたね。次はヒロインの事です。ヒロインの名前はマリア・ヴェルガー。ほとんどの乙女ゲームと違って、このゲームのヒロインの名前は変えられない。その名前に隠し意味があるとかの設定があるからですよ。このマリアは、城下町の花屋の娘だが、彼女の母親は実は貴族の出自だ。それで貴族しか持たないはずの魔力は彼女が持っていて、平民ではいられなくなり、母の兄であるヴェルガー男爵に養子にされることとなる。
ゲームの始まりは、お忍びで城下町に降りたフィリアンス王太子殿下がヒロインマリアと出会う場面だった。当時まだ十二歳のフィリアンス殿下は、すでに魔力操作に集っており、そしてとくに得意のは魔力を目に集めて、魔力の流れを見ることだった。そして、フィリアンス殿下がマリアの花屋を通りかかったとき、当時十歳のマリアには魔力があるという事を気づいた。それを不思議だと思っているフィリアンス殿下は、彼女に話かけ、楽しい世間話に装いながらさりげなく彼女の素性を探っている。それで彼女はヴェルガー男爵の姪だと分かり、フィリアンス殿下の仲介により彼女はマリア・ヴェルガーとなった。そして二人が再開したのは五年後、ゲームの舞台となる王立ラプ二エル魔法学園だ。
そこで登場したのは、マリアと同い年のフィオナ・レッセンス公爵令嬢。フィリアンス殿下はマリアと会ってから一年、フィオナと婚約する事になった。だけどフィリアンス殿下は、実はマリアに一目ぼれして、フィオナの事などどうでもいい。そしてずっと雑に扱いされたフィオナは、フィリアンス殿下がやっと再開したマリアと楽しそうに話しているという場面を目撃し、マリアに嫉妬の感情を抱く。そして、マリアは男爵家の養子とは言え、所詮は平民だと言って、婚約者でもあるフィリアンス殿下に近くにいることを許せずに、フィオナはマリアに様々なえげつないいじめを行っていた。最後に、フィオナの行いを知ったフィリアンス殿下は、フィオナとの婚約を破棄し、彼女を断罪した。それからレッセンス家の悪事も同時に暴かれ、レッセンス公爵夫妻は処刑される。フィオナは悪事に関わっていないという事で処刑は免れたけど、身分は剥奪され、平民として生きなければならなくなった。だけど、ずっと貴族として生きていた彼女がいきなり平民として生きられるわけがなく、最終的には餓死した。
フィリアンス殿下のルート以外では、悪役令嬢はフィオナのままだ。攻略対象みんないずれはフィリアンス殿下の補佐や側近になる者たちだから、その彼らに平民は相応しくない、フィリアンス殿下の近くに平民は置いておけない、とか言って邪魔する。宰相ルートだけに、フィオナは登場しなかった。
それで私ですが、現在十一歳。まさにフィリアンス殿下と婚約するときの年齢ですが、まだ婚約していません。というかこれからが初顔合わせです。フィリアンス殿下は王太子なので婚約者は早めに決められたはずなのですが、殿下は学に励みたいという理由でずっと婚約を断っていたらしい。ですが十三歳になった殿下はすべての学を完璧にマスターしているらしいのでそろそろ婚約者を決めるようにと王が急かしているようです。それで殿下の年齢を四年前後の範囲に婚約者の居ない令嬢たちは王宮に招待されている。招待されているのはお茶会ではなく、王太子と個人的な対面です。そして対面順番は、身分の順である。
殿下より二歳年下で婚約者の居ない私は、当然招待されている。それに身分は公爵令嬢なので、順番も結構早い。一番じゃなく三番なのですが。公爵家は王家に次ぐ身分とはいえ、この国には公爵家が八つもいるんですよ。そしてその八つの家から、条件にはまった令嬢が私を含め三人。八つの公爵家は対等という事で、三人の順番は年齢で決められている。なので、一番若い私は三番目だ。
まあ、順番は関係ない。フィリアンス殿下の婚約者になるのは、私ですから。バッドエンドを回避するために殿下の婚約は回避するべきと考えている方もいるかもしれませんが、私はしない。
今の私には、王太子殿下の婚約者という地位が、必要なのだから。
読んで下さってありがとうございます。