太陽
洞窟の奥から懐かしい光が見える。
コアラもライトモードを解除してその光を目指す。
ヤドカリを倒し後も、経験が足りなさ過ぎると言われウィズは何度も魔物の目の前に突き出された。
毒を吐く蛇に、顎の大きな百足、姿を消す蜥蜴。
どれもこれも苦戦につぐ苦戦。
けれどガルーダ戦やヤドカリの大きさに比べたら物足りない感じはあった。
物足りなさを感じていた自分の感覚が麻痺し始めていたのをウィズは知らず、知っているのはコアラだけだった。
ウィズはもーなにが来ても驚かないし、むしろやってやるくらいの気持ちにすらなっていた。
「ウィズ様、その調子です!勢いが大事ですよ!」
陽気に浮かれるコアラ。
そしてようやく太陽の下にウィズ達は出た。
「やっと帰ってきたー…」
「日を浴びるなんてどのくらいぶりでしょうか。また、こーして太陽をみられるのも全てウィズ様のおかけです!」
「俺もコアラがいなかったら洞窟でのたれ死んでいただろうし、お互い様だよ」
ウィズが右手を差し伸べ、コアラも柔らかい手でウィズの右手を握った。
仲良くお互いを褒めあっていると声をかけられた。
「おやおや、先客がいたみたいですね」
道の奥からこちらに手を振る1人の男。
その男の後ろについてくる大勢の男達がウィズに近づく。
「こんにちはー!これからこの洞窟にはいるのですか?」
「いえ、今出て来たところです」
「そーなんですか。何か面白い物でも見つかりました?」
「見つかったと言えば…見つかりましたけど…」
「そーですか。ちなみにどんな物か見せて頂けますか?」
「この隣にいる不思議な生き物とか?」
ウィズはコアラを指差した。
「…???」
男は首を傾げウィズをみる。
「洞窟には何日も?」
「数日いたとは思いますけど正確な日数は」
「そーですか。あなたは疲れているよーだ。だからゆっくり休んだ方がいーですね」
男はウィズの肩に触れようと手を伸ばした。
すると男の手をコアラが弾いた。
「痛っ!!なんですか一体!?」
男は不思議そうに自分の手を見た。
「何するんだコアラっ!すみません!大丈夫でしたか?」
「ウィズ様。対人戦闘経験はありますか?」
「いやないけど、急にどーした。」
「…」
ウィズは男に謝りコアラをみる。
「間抜けそうな顔に似合わず、私の毒針に気づくなんて」
「毒針??」
「おや?とぼけるのが私より上手ですね」
男が手を軽くあげると後ろにいた男達がウィズを囲んだ。
「僕、盗賊やら強盗やらやってまして。今日は真面目に洞窟内の探索しよーときてみたのですが、その前にあなたの物を頂いてからにする事にしました」
洞窟を出たら出たですぐ、盗賊団に絡まれた。
「ウィズ様どーします?」
「どーするも何も…この状態で選択肢がある訳ないだろ…」
「はぁー。ウィズ様とあろう方がそんな弱気なんて、私は哀しいです。皆殺しだっ!位の気迫を見せていただきたいものですが、まぁーそれはこれから調教していくとして」
「何か言ったか?」
「いーえ。なんにも」
「どこの誰に話しているのやら。洞窟内をさまよい続けると気が狂うとは聞いていたけど、幻覚でもみているよーだね」
「幻覚??」
さっきから目の前の盗賊はウィズしか見ていない。
「やっぱり、コアラの事は見えてないみたいだな…」
「ちょうど蜥蜴から学んだ認識阻害を発動させているので、私の存在を認識できるのはウィズ様と私並みの感知、索敵に優れた能力持ちくらいですよ」
「お前は見えてないからいーとして、俺はどーしたらいいと思う?」
「対人戦闘の経験がないウィズ様にはこの人数はちょっと厳しそうなので私が片付けよーと思いますがよろしいでしょうか?ただし、ウィズ様への攻撃は出来るだけ自分で対処してみて下さい。対人戦闘も経験しておくチャンスです!ではっ行ってきます!」
コアラは静かにウィズの後ろで剣を握る男の更に後ろの木の上に隠れ弓を引く男に近づく。
「合図だっ!死ねっ……ドサッ」
弓を引き矢を放つ前に男は失神したまま木から落ち地面に転がる。
続いてウィズの近くにいる男の目の前に移動すると躊躇なく足払いで男の足を折った。
「あぁーっ!!?何で足がっ!!?」
男は叫び地面に転がる。
ウィズから盗賊全員の視線が外れた瞬間、コアラは加速する。
男の顔面を蹴り飛ばし顎を破壊した勢いで次の男の脇腹をえぐるように拳を肋骨に食い込ませ破壊し。
地面を蹴り素早く移動、男の股間を蹴り上げみぞおちに拳をめり込ませる。
肘やら膝やらを次々に砕き男達を戦闘不能へと導く。
「なんなんだっ!?」
盾を構える男もいたがそれは無意味。
盾を切り裂き頭にカカト落としを食らわせ気絶させた。
「えぇっ!?何が起こっている!?」
コアラの見えない残された盗賊は派手に同様しウィズを睨みつける。
「お前かっ!何をした!」
「いやー…そう言われても俺は特に何もしてないですよ」
「クソッ!」
男はウィズに背中を向け勢いよく走り出す。
ウィズはそれを黙って見送るが、見送ってくれない奴が1匹。
「ウィズ様の命を狙って逃げられるとでも思うなよっ!」
男が走るより早くコアラが後を追う。
そして背中に向けている相手に向けて跳び上がり両足を揃え捻りを加えながら男を蹴り飛ばした。
男は前のめりに勢いよく倒れ後ろを振り向くとさっきまでいなかった見たこともない相手に驚いたが声を上げる前にコアラに爪によって気絶させられた。
「大丈夫かー!?」
遅れてウィズがコアラと男にかけよる。
「ご心配ありません。こんな相手に遅れを取るなんてありえませんので」
「いや。俺はその倒れてる男を心配したんだけど…まさか殺してはいないよな?」
「殺す価値もないので」
「ならよかった」
「さて…ガサゴソ」
「何してんだ?」
「戦利品を頂戴しよーかと…回復薬に毒薬…結構色々な薬類を持っていますねー。おっ。これはー、お財布ですかね?」
「盗みはまずいだろ」
「殺しに来た相手を殺さずにおいてあげるのだからその対価を頂いても問題ないのでは?」
善人から奪うなら止めに入るところだが自分の命を狙った相手の事まで気遣う必要があるのか、ウィズは自分に問いただす。
「短剣もそこそこ使えそうなので頂いて…この鍵はなんでしょ?」
コアラは男の懐から古びた鍵を見つける。
「家の鍵とか?」
「家、隠れ家。んー、色々溜め込んでいそうなので頂いておきましょう」
「そんな物まで!?」
コアラは身包みを剥ぎ終わると、他に倒れている男達の物もすべて回収し、岩蜘蛛な糸を使い男達を縛り上げた。
「ふぅー。こんなもんですかね」
「この人達はどーするんだ?」
「そこまで責任もてないのでもちろん放置してきますけど」
こんな洞窟の目の前に置いてかれたら魔物の格好の餌になるのではとウィズは思った。
コアラはそんな相手ほっといてさっさと行きましょうとウィズを急かす。
「あのー、起きて下さい!」
コアラの爪に刺された男は泡を吹いていたがウィズは体を揺らしなんとか起こそうとしたが全く起きない。
「百足さんから学んだ麻痺毒使ったのでそんなんじゃ起きませんよ。こんなの起こして何をしたいんですか。まったく…」
コアラは男から奪った薬の1つを飲ませ顔を何度も何度も、さらに何度も平手打ちする。
男の頬が赤く腫れ上がりようやく痛みと薬の解毒効果が現れ男は意識を取り戻した。
評価していただきありがとうございます!
なかなか面白い物を書きたいけど思い描いているのを文字にするのは難しいです。
本当に、作家の方全員を尊敬します。
嘘つきな猫です。
末サボは書き溜め中なのでしばらくお待ち下さい!目指せブックマ100人!
よければコアラもよろしくお願いしまーす!