飲食
ウィズは剣で3本の脚を切断した。
「何が3発だよ!まだ相手はピンピンしてるじゃないかっ!」
愚痴をこぼしながらも真面目にそして確実にヤドカリを追い詰めていく。
巨大ヤドカリは脚を3本も失ってしまった事によって素早い移動ができなくなっていたが抵抗は続ける。
両手のハサミを使いウィズの攻撃をしのぎながら隙を見ては岩を飛ばし、口から勢いよく水の球を飛ばしウィズの行動を牽制する。
水の球がウィズの隠れていた岩に直撃すると衝撃で岩が吹き飛んだ。
「アレが当たったら間違いなく腕位は吹き飛ぶな…」
「ウィズ様!しっかりー!!…あの水の球は使えそうなので解析しときましょう。…解析開始」
コアラの応援がここにきて役に立つ。
コアラの声がすると一瞬ヤドカリがウィズから眼を離し、ウィズの姿を見失う。
するとヤドカリが動きを止めた。
動きを止めたと言ってほんの数秒。
その数秒でウィズは決断し行動していた。
今が好機とウィズは勢いよく殻を掛けの登り、ヤドカリの飛び出た目を狙って飛び降りながら剣を突き刺した。
眼に剣を突き刺されたヤドカリは暴れた。
痛みなのか、怒りなのかはわからないがウィズを探し目元付近をハサミで払った。
しかし、探しているであろうウィズはすでにそこには居ない。
ヤドカリら両手を挙げ、開いた口から泡を溢す。
脚元に隠れていたウィズが今度は勢いよくハサミの根元を切断しもう片方の目を切り落としとうとう決着はついた。
何も見えなくなったヤドカリはウィズを探して四方八方攻撃するがそこにはウィズはいない。
ウィズは離れた場所でヤドカリの動きが止まるのをコアラと待った。
「これでいーのか…」
「ピッ。1時間23分12秒ですか。まぁーまぁーですね」
「少しは褒めてくれよ」
「さすがウィズ様。お見事な討伐でした!剣の使い方もわかってきたようで何よりです!」
「やっぱ馬鹿にしてるだろ…」
ウィズは地面に倒れ込み、剣から手を離した。
「後の事はお任せください」
コアラは瀕死のヤドカリまで近づいて脚を全て強引に引きちぎり、ヤドカリの殻を殴って破壊し殻の中に収まっていた内臓らし物も引きちぎった。
ヤドカリはドロドロな青い血液を大量に流し生き絶えた。
「さてと」
コアラはヤドカリにトドメを刺すと直ぐに作業に入る。
硬くて丈夫、撥水性に優れしかも軽い貝殻を次々口の中に放り込む。
ついでに切断された脚を集め中のプリプリした身を剥ぎ、これも口の中に収め外の殻はバリボリ噛み砕いて別の胃袋にいれた。
「微量な魔力確認。魔力の吸収開始。同時に動力変換を開始…。変換完了。変換量0.72%の確保に成功。現在の残動力量42.65%…。ふぅー。これで作業を一通りおこなっても行動は出来そうですね」
残りの身が入っていないヤドカリの脚を全てたいらげ残りの宿部分の殻も全て飲み込む。
内臓部分も微量に魔力があるので全て飲み込み動力源とし残ったのは親指程度の魔石の欠片。
「あの程度の魔物ならこれでも充分ですね」
それを持ってウィズの元にもどる。
「ウィズ様!初めて自分の力で手に入れた魔石です。これは記念に取っておきましょう!!初心を忘れた頃にコレを見て思い出せるよーに!」
疲れ切ったウィズの手に魔石の、欠片を握らせた。
「頑張ってコレしかないのか?」
「最初はこんなもんですよ。前に倒したガルーダみたいなネーム持ちなんて本来は出会ってすらいけない魔物ですから。これが普通です」
「そーなんだ。こんな大きな魔物を1人で戦ったのなんて初めてだからさ」
「今までの勇者や英雄、天才、神童だって多分最初はこんな感じだったと思いますよ。死ななかっただけでも凄い快挙です!」
コアラはウィズを褒めちぎった。
ひと段落し喉が渇いたので持っていた水筒の水に口をつける。
「水…あれ!?水がもーない!」
節約しながら飲んでいたとは言え飲んでいる以上いずれはなくなる。
「水がなくなったってことは…不味いな」
「何が不味いのでしょうか?水でしたら問題ありません。先程取得したので!」
「どーゆー事だ?」
「先程のヤドカリが水の球を飛ばしていたのを解析し同じ事が出来るようになりましたー」
「同じ事って…」
「はっ!!」
コアラが口から水を吐き出し岩を砕いた。
「水って…この水飲むの?」
「混じり気なしの綺麗な水ですよ」
ウィズは困る。
いくら綺麗な水とは言え、出てくる場所がコアラの口なのだ。
水の質どうこうではなく気分の問題。
しかし、生き死にがかかっている以上我慢しなければならないと岩のくぼみに溜まった水を勢いよく飲んだ。
「ぷはーっ!生き返るー!!」
水を飲み終わると手の平で水を掬うと顔を洗った。
「ウィズ様?何をなさっているのですか?」
「普通に水を飲んで、顔を洗ってるだけだけど?」
「そんな地面に落ちた水を飲むなんて…」
「お前が飲めって!」
「私、そんな事一言も言ってませんけど」
コアラは呆れ顔でウィズから水筒を借り、口の中に放り込む。
「対象を確認。 水魔力の付加を開始…付加を確認。再構築開始…再構築完了」
口から水筒を取り出しウィズに渡した。
「これをどーぞ。半年くらいは水を飲み続けても無くならないでしょう」
手渡されたのは淡く青味がかった光を放つ水筒。
ウィズは水筒を手に取る。
口を開けると水がこぼれた。
ウィズは急いで口をつけ浴びるほど飲んだ。
「ぷはー!生き返るー!」
「えっ?ウィズ様死んでいたのですか?心音も脈拍も正常でしたけど?」
「いや、例えだよ!例え!」
「所でウィズ様。確認なんですけど魔法が使えたりは?」
「しないけど」
「ですよねー。なら今後は魔力の扱い方も勉強していかなければなりませんね」
「それにしてもこんなに事までできるとか凄すぎだろ」
ウィズは水筒を眺めながら思う。
「そんなに驚く事ですか?むしろその剣の方が魔力を消費したんですけどね」
「ぐぅー…」
話している途中でウィズのお腹が泣いた。
水の心配はなくなったけれど今度はお腹が空いて力が出ない。
食料も底は尽いているうえにさっきの戦いでウィズの体力は限界に来ていた。
「お腹すきました?」
「結構前から空腹だよ…」
「なら、取れたてのコレなんかどーですか?」
コアラがヤドカリの身を出す。
「コレって…アレだよな」
「ヤドカリの身です」
「でも…魔物って食えるのか?」
「コレに関しては毒味済みなのでウィズ様が食べても問題はありません」
「コアラが大丈夫って言うなら少しだけ」
ヤドカリの身にウィズはかぶりついた。
「うまっ!魔物うまっ!!コレ本当にアイツの身なのか?!」
その美味しさにウィズは感激した。
ベリーさんの得意料理、猪鍋に引けを取らない美味しさ。
ウィズはヤドカリの脚1本分の身を完食し水を飲む。
「はぁー。洞窟の中でこんなに美味しい物が食べられるなんて思ってもみなかった」
「ウィズ様達は魔物を食べたりしないのですか?」
「俺の知ってる人間は多分食べないし、食べようとも思ってないんじょないかな?」
「魔力の補給ができるのに勿体ないですけど。まぁーその方が安全ですね」
「補給できるのはコアラだけだと思うけどね。ところで安全って?」
「ヤドカリのような食べられる魔物もいますが、毒性の高い魔物もいるということです」
「へぇー。ならコアラが毒性の高い魔物食べたらどーなるんだ?」
「フンッ。私レベルになるとその程度の毒など屁でもありませんよ。むしろ毒耐性が強化されたり、新たな毒の生成が可能になりますから」
コアラは鼻で笑った。
「なんかコアラってデタラメに強くなるんじゃないだろーな…」
「私は学習し日々成長してくので。自分の強さの上限がどの程度なのか私にも分かりかねるところではあります」
「用済みになったら俺を殺したりしないよな?」
「まさかー。はっはっはっはっ!」
コアラは笑った。
「では元気がでたようなので、もうひと踏ん張りしてここをでましょう!」
「いや!否定してよ!」
「冗談言う暇があったら早く立って下さい」
「まったく」
「私的にはもう一波乱位あってもいーんですけどね」
ウィズはコアラに先導され順調に出口に近づいて行った。
また書いてた話とは違う流れになってきました(°_°)
嘘つきな猫です。
最初の設定と違う部分しかないですが今後とも宜しくお願いします^ ^
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