成長
「よいしょっ。よいしょ…」
誰かのの声がする。
ウィズはゆっくり目を開け体の暖かさに気がついた。
「これは?」
「お目覚めになりましたか!おはよございます主様」
乙型羅号は何かの作業をしながらウィズに挨拶をした。
「この…暖かい布はなに?」
「なにと言われても暖かいお布団ですが?」
「洞窟にこんなの…落ちてるわけないよね」
「こんなのが落ちてる洞窟ってどんな洞窟ですか!主様ウケるー」
「なんか俺馬鹿にされてないか?」
「私、馬鹿にするときは徹底的にしますので。そんなことは置いといて。それは私が作った物です」
「器用だな…」
「さっきの魔物から良質な羽毛が獲れたので有効活用しよーと思いまして。近くにいたダンジョンパイソンから皮を剥ぎ、岩蜘蛛の巣から糸を拝借して縫い合わせ羽毛を詰め合わせる事で手触りがよく保温性に優れしかも軽い布団を完成させたのです!凄くないですか、私?」
「今回はもぐもぐゴックン…ペッで再構築とやらは出来なかったの?」
「やろうと思えば出来ますがアレは意外とエネルギーの消費が激しいのでこんな下らない事に使えませんよ」
「あっ…そーなんだ」
布団から出てウィズは立ち上がる。
「せっかく作ったこれはどーするんだ?置いてく?」
「もったいないので取って置きましょう」
乙型羅号は布団一式を胸元にしまい込んだ。
「お前の胸元ってどーなってんだよ」
「世の中、知らない方がいい事もありますよ」
乙型羅号はウィズの質問をはぐらかした。
「さっ!もーここは用済みになったのでさっさと脱出しましょうか!」
「でも、帰り道がなくないか?」
ガルーダが入り口を塞いでしまったので帰る通路がない。
「こちらです。主様」
乙型羅号は目を光らせ岩壁を殴り新たな通路を出現させた。
「しっかりと私について来てくださいね!最短ルートで行きますので」
ウィズを引き連れ乙型羅号は歩き出す。
通路に出るとすぐに岩登りが始まった。
「もっと楽な道はないのか?」
「人生楽ばかりしてはいけません!辛い事を乗り越えての幸せです!」
「そーですか…」
乙型羅号の励ましもあり縦穴を一気に登りきる。
「そろそろ出口だとありがたいんだけれど…」
地面に座り込み息を切らしながらウィズは乙型羅号に質問した。
「最短と言っても出口まではまだまだですね。どんなに急いでも半日程度は必要かと」
太陽が照らさない洞窟内に入ってからどれくらいの時間が経っているのかウィズは既に把握できてはいなかった。
2、3日なのかそれとも1週間も経ってしまっているのか。
「うーん」
「どしたんだ乙型羅号。まさか迷子にでもなったとか?」
「迷子になんななりませんよ。主様じゃあるまいし」
「なら、なんで悩んでいるんだ?」
「ちょっと遠回りするけど楽な道と、ちょっと大変な近道。どちらがいーか悩んで…」
「もー、ちょっとくらいの差なら近道でいーよ…。俺は早くここから出て太陽をみたい!」
疲れ切ったウィズは近道を選択する。
「主様がそー言うならこちらの道を進みましょう!」
乙型羅号はウィズが選んだ道を進む。
「それと前から思ってたんだけど主様って呼び方どーにかならないか?」
「ご不満でも?」
「不満は無いけど他人行儀と言うか…」
「今までの主様からそのようなご不満は言われた事がなかったので。では、なんとお呼びしたらいいでしょーか?」
「そーだな。…普通にウィズでいーよ」
乙型羅号は少し考え返事した。
「それならウィズ様でどーでしょうか?」
「様はつくのね。でも主様よりはましか」
「でしたら私の事ももっと親しみのある名前で呼んで下さい!」
「乙型羅号は名前だろ?」
「確かに名前ではありますが乙型羅号なんて名前なんか味気ないじゃないですか」
「ならー…」
ウィズは考える。
「核動力自己成長型生物兵器乙型羅号って名前だから…」
「主…ウィズ様覚えてくれてたんですか!?」
「驚くとこか?」
「何度も聞いたし、結構暗記には自信があるんだよね!」
「おぉー!それで名前は決まりましたか!?」
「いや、そんなすぐには…これから長い付き合いになりそうだし…」
ウィズは悩む。
「呼ぶなら短いほーがいいし…。今の名前からあまり離れていない名前の方がいいよな…」
「早く!早く!」
乙型羅号はワクワクしながらウィズをせかす。
「核…兵器…あっ!!核兵器は!!?」
「却下でお願いします。なんだか物騒すぎる名前なので」
「えー。なら…前と後ろを合わせて核動力…羅号。名前ってより消費名っぽいし…あっ!!」
ウィズは悩んだすえよーやくいい名前を思いついた。
「これから乙型羅号は核羅を文字ってコアラに決定!!なんかその風貌にも合ってる気がするし!」
「コアラですか!…まぁーいいでしょう!これからは乙型羅号改め《コアラ》と名乗る事にします!」
「宜しくな!コアラ!」
「今後とも宜しくお願い致します。ウィズ様!さっ、名前が決まった所で出発!出発ー!!」
コアラの後に続き、またひたすら歩いているととんでもない相手に出くわした。
「ささっ!ウィズ様やっちゃって下さい!」
「いや、あれと戦えていうのか!?」
「今の実力ならあんな相手一捻りですよ!!ファイトー!!3ぱーつ!!!」
「なんで3発??」
「それくらいで倒すのが妥当かと思いまして」
ウィズの背中を無理やり押すコアラ。
ウィズはまたしても戦場に送り出された。
ウィズの目の前にはウィズの身長の3倍はゆうにあるヤドカリの姿をした魔物が通路前に居座っている。
剣を構え静かにヤドカリの後方に回り込み剣を振り降ろした。
「カンッ!」
剣はヤドカリの硬い宿に直撃したが乾いた音ともに綺麗に弾かれた。
後ろからの衝撃に魔物が気づきウィズをみる。
そして2本のハサミを使いウィズに襲いかかった。
「はいっ!そこ左!右!右!左!!」
コアラは声を張ってウィズに指示をだす。
「早い!早い!どっちに行けばいーんだよ!」
「なら、黙ってます」
コアラはウィズへのアドバイスをやめた。
「コアラは手伝ってくれないのか!?」
「手伝ったらウィズ様の修行になりませんからね」
「お前の役目は俺の手伝いなん…危なっ!」
コアラと会話しながらウィズはヤドカリからの攻撃を必死に避け続ける。
「何でもかんでも私を頼ってはいけません!私はウィズ様の世界の為なら何でもお手伝いしますがこれもウィズ様の成長の為です。経験だけはウィズ様に私から与えることが出来ないので。だから戦ってもらっているのです。これも私なりのお手伝いです!」
「なんか納得いかない!」
「はいはい。そんな事より相手をしっかり見て!考えて行動して下さいね!」
「考えてと言われてもっ!」
ウィズはヤドカリの攻撃をよける事で精一杯で考えてる余裕なんてものはなかった。
このままでは危険と感じウィズは岩陰に隠れた。
「どーしろっていうんだよ!この剣斬れ味いーんじゃないのかよ!!」
「石が斬れたからと言って全てが簡単に斬れるなんて安直過ぎませんか?しっかりご自身で考えて行動して下さい」
ウィズは考える。
コアラが手伝わない以上、自分の力でなんとかするしかない。
「この剣で思いっきり攻撃してみるか?けど、また弾かれでもしたら今度は反撃されて危険な事になりそうだしな…」
巨大ヤドカリをウィズは見つめた。
「殻は硬いけどアソコなら…」
ウィズは閃く。
剣を握り直しヤドカリの側面に回り込み再び剣を振り下ろした。
「ギャッギャギャギャッ!!」
ヤドカリの脚をウィズの剣が切断した。
「やっぱりいけた!関節部分が動くって事は柔軟性があるわけだし殻より硬い訳ないよな!」
「そーです!何事も諦めるのではなく自分が出来る事。そして何をすべきかを考え学ぶ事が大切なのです!」
コアラはウィズの行動に納得し胸元から取り出した紙に色々書き足しながら温かい目で大人しくウィズを見守っていた。
レポートがまたまた溜まってます。。。
嘘つきな猫です。
末サボが中々書けません。。。
なのでこっちを書いてしまいます笑
オーリスもちゃんと書いてるので気長にお待ち下さい!