共同作業
「さー。かかってこい人間と…そこの得体の知れない生き物」
「おいっ!私は得体の知れない生き物ではありません。私には魔道具、核動力自己成長型生物兵器 乙型羅号と言うちゃんとした名があります!」
「ん…だいぶ長い名だな…えーっと、魔道具、核動力型自己成長兵器…羅号だったか?」
「違います!型はミドルネームにつけます!もう1度言いますのでしっかり覚えてくださいっ!…おほんっ。私の名前は魔道具、核動力自己成長型生物兵器 乙型羅号です」
「あぁー!!ややこしいっ!どうせすぐ死んでしまうのだから名など覚える必要はないっ!私に戦いを挑んだ報いとしてぶち殺してやるわっ!!さー、かかって来いっ!!」
フードの相手はウィズを手招きした。
いや、だから…。
喧嘩売ったのは俺の足元にいる乙型羅号で俺自身は全く戦う気なんてないから。
そんな意思を今更伝えたとしても多分、この目の前の相手は聞き入れはしてくれない雰囲気なのをウィズは感じた。
「さっ。主様。初めての共同作業といきましょうっ!」
乙型羅号はいつもより目が輝かせてウィズを見た。
「眩しいってっ!!」
「おっと、失礼」
ウィズは目を覆い乙型羅号の首を回しフードの相手に向けた。
「ちょっと。首がもげますので手を離して下さいっ!」
乙型羅号はフードの相手を照らしウィズの手を払う。
乙型羅号の目の光で奥にいるフードの正体がようやくはっきりとみえた。
ウィズ達に対峙しているその相手は乙型羅号の光でライトアップされるとゆっくりフードを取り、杖を振りかざした。
「まだ名を名乗っていなかったな。そちらが名乗ったのだからこちらも名乗るのが礼儀。私はこの場所の主。名をガルーダ・ガベッド人間がここに来たのは50年振りくらいか。では殺しあおうか、人間」
その相手の顔は頭部に立派なトサカがあり、猛禽類のような大きな嘴と鋭い目を持ち身体は羽毛で覆われていた。
さっきまの緩い雰囲気から、空気が一気に張り詰めた変えた相手に威圧されるとウィズの身体は恐怖で震え始めた。
この相手は危険。
その事をウィズは瞬時に感じ取った。
「乙型羅号っ!アイツは危険だっ!逃げるぞっ!!」
ウィズは入ってきた入り口に向かって全力で走り出したが乙型羅号は動かない。
「逃げるのか人間っ!まぁー無駄だがな」
入り口はすでにウィズの前には無かった。
「あれっ!?入り口はどこだ…」
ウィズは入り口を必死に探したが岩壁しかなかった。
「おいおい。最初から逃げるとは私を退屈させないでくれよ。仕方ない。すぐに殺しては退屈しのぎにもならないか、仕方ない。手加減してやろう。手始めにこれでどーだ?」
ガルーダは杖を掲げ小さな竜巻を数個出し、ウィズと乙型羅号に向けて放った。
竜巻は石壁を削りながら1人と1体に襲いかかる。
「相手の魔力感知及び、魔力解析を受諾。解析開始。終了まで3分17秒、16秒…」
乙型羅号は解析しながらもあちらこちらを飛び回る。
しかし、ウィズは1歩も動けないでいた。
「主様っ!避け…仕方ないですねっ!!」
乙型羅号はウィズに向けられた竜巻を手で何度も弾き返す。
しかし、弾き返した竜巻は消えず軌道を変え再びウィズ達を襲った。
こんな魔法を見た事ないし、当然防ぎ方も知らない。
石壁を削ってるということは直撃したら自分の身体なんてズタボロになるのは理解したが、どーしても身体が動かない。
動けないウィズを見捨てる事なく乙型羅号は必死に竜巻と戦う。
未知と恐怖がウィズの身体を支配している。
今まで感じたことない「死」への恐怖。
ウィズの瞳は周りの動きを、耳は音をゆっくりと受け入れ始める。
これが死ぬ瞬間の感覚か。
そう感じ、ウィズはそっと瞳を閉じた。
「何をなさっているのですかぁーーーっ!!」
乙型羅号の声が周りの音をかき消し頭の中に飛び込んできた。
そしてウィズに向かってきた周りよりも大きな竜巻を弾けないと判断した乙型羅号は手を広げ受け止めた。
「さ、流石にこれは…」
いつもの乙型羅号ならこの程度の攻撃など造作もなく防げるが、今は解析中。
ほとんどの魔力を解析に回しているため出力で言えばいつもの10%も出ていない。
それでも乙型羅号はウィズを守る。
正面から竜巻を受け止め、必至に戦う乙型羅号の背中をただジッとウィズはみつめていた。
乙型羅号に追い打ちをかけるようにやや後方と真上、さらに正面にもう1つの竜巻が同時に襲いかかる。
竜巻が乙型羅号を同時に襲ったのは偶然ではない。
全てはガルベッドの意思によって向けられている。
「ほぉー。1つはどーにかしたか。しかし他はどーする?後ろの人間を置いて自分の身を守るのもよし。守って潔く死ぬのもよし。人でない者よ、選択してみせよ」
乙型羅号はとうとう竜巻の勢いに負け弾き飛ばされ、左半身の腕と脚が半分とれかかっていた。
「解析終了まで…」
「乙型羅号ーーっ!!」
ウィズは空中に弾き飛ばされた乙型羅号を受け止めに走りだす。
竜巻と竜巻の間を走り抜け一直線に乙型羅号の下に走った。
そして落ちてきた乙型羅号を地面に落ちる前に滑り込みながら胸元で捕まえる。
「ボロボロじゃないか!」
「そんな事は知ってます。私の役目は主様のお役に立つ事なのでこれくらいなんて事はありません」
取れかかった左半身がゆっくりと治癒していく。
ホッと一安心したがガルーダの攻撃は止まらない。
「…」
「わかった」
乙型羅号が小さな声で何かを伝えると、ウィズは剣を抜き立ち上がる。
竜巻がさらに増え上空からも降り注ぐなか、治癒中の乙型羅号を左腕に抱え、右手に剣を握りウィズは走り回る。
剣で竜巻を消す事は出来ないが軌道を晒し、弾く事だけを繰り返しながら必死に自分の身と乙型羅号を守った。
「やるじゃないか。最初からそーしていれば抱えている相手も怪我をしないで済んだものを。しかし守ってばかりで芸がない。そろそろ飽きてきた。さよならだ人間」
ガルーダは背中から翼を生やし空中に飛んだ。
今まで操っていた竜巻をすべて集め巨大で強力な竜巻を作り上げ放った。
巨大な竜巻は一直線にウィズを目掛け向かってくる。
今まで弾いていた竜巻とか規模も威力も桁違いなのは明らか。
「これはさすがに弾くの無理だけど…言われた通り時間は稼いだからな」
大人しく抱えられていた乙型羅号がウィズの腕から飛び降りる。
「3…2…1…魔力感知および魔力解析終了。解析状態を解除。続いて戦闘モードに移行。…主様、お願い方を聞き入れて下さりありがとうございました!ここからは私が、私の役割を果たさせていただきます」
ボロボロだった左半身も綺麗に治り、いつも以上に目に力を宿す乙型羅号。
「とうっ!!」
「えっ!?」
向かってくる巨大な竜巻に向かって乙型羅号は走り出し、突然飛び込んでいった。
サボっていたわけじゃないんです!!
嘘つきな猫です。
末さぼもちゃんと書いているのですがなんかいー感じになりません、、、泣
もーしばらくお待ち下さい!
たまには乙型羅号も呼んで下さい!わら
気がむいたらブックマ、評価、感想もよろしくお願いしまーす(^O^)