左腕
まとめて書いたので、数話に分ける作業してました_(┐「ε:)_
「さてさて」
今日はすることも頼まれごとも特にない。
食事のお礼にベリーさんの手伝いを済ませるとすぐ洞窟にウィズは向かった。
この洞窟にはよく通っている。
他の場所にも似たような洞窟が至る所にあり、その深さや魔物の強さもバラバラ。
強い魔物が出るところにはいい品、お宝が多くあるみたいだけどこの洞窟のランクは最低とドッタさんが言っていた。
この洞窟のランクで俺は精一杯。
だから、まーそう言う事だ。
「よいしょっ、うんしょっ」
入り口前で体を動かしてしっかりと準備運動を済ませ洞窟内に侵入する。
いつも通りの自分に対して、いつも通りの洞窟。
そして毎回洞窟の入り口で見る、いつもの魔物が現れた。
「またアイツか。今日こそは・・」
光り輝く小さな魔物が後ろ足に力を入れ猛スピードで飛び跳ねながら逃げていく。
「今日こそ・・・逃がすかぁー!」
この追いかけっこは何度目だろう。
本当に見た目と違って俺を馬鹿にしたように逃げ回るソイツっ!
逃げた相手を追いかけウィズは洞窟の奥に進んでいった。
使い古された剣を振り下ろしコイツを仕留めたと思ったが剣をスルリと避けて走り去っていく。
「いつもならここで諦めているところだが、今日こそは諦めない!」
危険だとわかっていたがウィズは松明に火をつけ、さらに奥へ進んでいった。
その結果、帰り道がちょっと分からなくなってしまった。
「おっ!水晶石発見!!」
道に迷ってはいるがそう深いところまでは来ていないはず。
昨日ベリーさんとドッタさんが励ましてくれたお陰なのか、他にも小粒の金塊といくつかの鉄鉱石をさらに見つけることができた。
洞窟の入口を目指していたつもりがなぜか最深部までたどり着いてしまった。
そこはドームのようになっており広い空間の中心に大きな岩が置かれるようにあった。
「危険な魔物が出そうな雰囲気しかない…」
すぐにその場から離れようとした時、ウィズの目に岩に設置されたような錆びた鉄の輪が付いているのを見つけてしまった。
「危険、危険だからここを…あっーー!気になるっ!」
自分の好奇心に負けウィズは慎重に岩へ近づいた。
「錆びた輪?なんでこんなのが?」
見たこともない輪。
ただの輪かもしれないが、罠かもしてらない。
素手で触る勇気がなかったので剣で軽くつついてみたが特に異常はなかった。
次に素手で掴んでみても特に変わった反応はない。
高さがドアノブ程度の丁度いい場所に合ったのでなんとなく引っ張ってみる。
反応は無かった。
押しても引いてもどう動かしても反応はない。
押して、引いても駄目なら回して見ては?
手首を捻る。
「 カチリッ 」
小さく、何かが噛み合う音がすると岩が徐々に2つに割れていく。
「なにっ!?なにっ!?」
岩が割れるとそこには小さな台の上に箱が1つ置かれていた。
その箱は薄っすらと青白く発光している。
再び剣でつついてみたが反応なし。
「凄いの見つけちゃったかも…」
なんともこぢんまりとした慎ましい箱。
噂に聞く、金銀財宝が詰まった宝箱のようには見えなかったが危険な感じは全くしなかった。
箱を手に取ると、触れた瞬間光が弾け飛んだ。
「えっ????」
手や腕、体に特に異変はない。
「気のせい?・・か?」
縦10㎝、横10㎝、高さ10㎝の四角い箱に何が入っているのか、ウィズは胸を高鳴らせて箱を開けた。
箱を開けて驚いたっ!
色んな意味で。
そこにはみっちりと窮屈そうに何かが詰められているではないか。
正体不明の何か。
武器や宝石類ではないのは触れて分かる。
なぜならソレは柔らかかったから。
固い物ではないが事はわかったが・・・・ますますこれがなんなのか分からない。
ソレをウィズは箱から無理やり引っ張り出した。
箱に入っていたのは20㎝ほどの『動物の人形?』らしき物。
と入っていたと言うよりは、詰められていたと言った方が正しい表現だと思う。
使い古された感のある、毛並みの悪い人形。
「こんな凄い仕掛けから出てきたのがただの人形?」
いやいや、そんなわけがあるはずがない。
ここをどこだと思っている!
それにこんな場所に隠されてあったのだから…。
人形を右手に持ったまま地面に座り、松明の灯りでそソレをじっくりとウィズは観察した。
なにか意味があるとも思えない。
何度みてもただの人形だよな…。
そもそもどこの国の生き物なんだ?
鼠、兎?
ちょっと違う。
狐、鹿、猪?
狸・・・のように見えなくもないが何か、何かが違う。
見たことがない生き物の人形。
可愛いかといわれれば・・・そうでもない。
「ん~・・・とりあえず持って帰えるか?」
いや、元に戻したほうがいいのだろうか?
これを持ち帰ったところで売れそうにもないし、箱に詰めなそうと人形を押し込むが入らない。
それでも無理矢理詰めようと力を入れたら箱が壊れた。
「・・・・」
こんな場所に埋まっていたのだから脆くなっていても仕方ないか。
ウィズはふと気づく。
人形の手足が広がっているせいで箱に押し込めなかったことに。
それを見てちょうど腕にはまりそうな気がして、盾を装備するように本当に何となく自分の左腕にはめてみた。
吸いつくように左腕にピッタリはまった。
「これになんの意味が?・・・盾?・・・こんなフワフワしている盾なんて意味ないだろ」
色々試してみてわかった。これは必要無いと。
人形を外して捨てて帰ろうと人形に手をかける。
「あれ。外れ・・・ない?」
無理矢理引きちぎろうとしても外れない。
人形を外そうとすらばするほど、自分の腕が引きちぎれそうな痛みが走った。
「まさか呪い・・・呪いなのか?」
「ピコンッ」
機械音とともに人形の目らしい部分が光だした。
「ドウリョクゲンヲカクニン。ショユウシャジョウホウノコウシンヲカイシ…コウシンカンリョウ…ショユウシャトノリンクヲカイシ…リンクシュウリョウ…ドウサカクニンヲカイシ…カクニンシュウリョウ…スベテオールグリーン…タイキモードカイジョ…サイキドウカイシ…ジコガクシュウヲカイシシマス・・・・・・・・・・・」
人形から声が聞こえてくる。
とても聞き取りづらい感情のない声が。
ウィズは呆気にとられてただただ左腕の何かの言葉に耳を傾け、そうこうしていると人形から熱を感じた。
「再起動終了。主様を確認。ご命令を。」
「命令って・・」
「ご命令を」
「いやっ・・・」
「ご命令を」
「・・・・・・」
「ご命令を」
「わかった。ちょっと待ってくれっ!」
「命令を確認。待機を実行します」
「じ、実行?」
「・・・・・・・・・」
人形は再び突然静かになった。
「おーい」
「・・・・・・・・・」
「今度は反応ないのか。これはいったい?」
「・・・・・・・・・」
さっき主様って呼んでいたけど…俺のこと?!
それなら命令すればどーにかなるのだろうか…。
ウィズは恐る恐る人形に向かって話しかけてみた。
「えーっと。今の俺に危険はあったりする…かな?」
「・・・・・・・・・」
返事はなく、人形は反応しない。
「なら、命令の取消せたりする…かな?」
ウィズがそう呟くとようやく左腕の人形は反応してくれた。
「命令を取消しますか?」
「おっ。反応した!」
「命令を取消しますか?」
「なら、取消しで」
「取消しを受諾。取消実行・・・・・取消確認終了」
「おれの今の状況について教えてもらいたいんだけど」
「状況については多数の回答有り。選択肢の絞り込みを要請します」
「それなら、全部で」
「全ての回答終了まで、6時間34分23秒が必要。実行しますか?」
6時間?!
俺の置かれている状況っていったい・・・。
「説明を聞く前にまず、腕から離れてもらえないか?」
「不可能」
不可能って・・・。
手を放すだけなのに?
「もう一度命令する。俺の腕からお前の手を放してくれっ!」
「不可能」
「なんで外れないの!?呪いか何かなのか!?」
「呪いではありません。諸事情により」
「なら諸事情について説明しくれよ!」
「説明申請を受諾。・・・魔道具の特性により命令の実行は不可能と断定」
「魔道具?なにそれ?」
魔道具。
その言葉はウィズが聞いた事が無い言葉だった。
「魔道具の説明を求めますか?」
「そーだな…聞かないことには何も始まらなそうだしお願いします…」
「魔道具の説明申請を受諾・・・説明を開始します」
自分の事を魔道具と言っているコイツの話をまとめると、魔道具とは道具に何らかの特別な力が宿った極めて稀少価値の高い武具、防具、道具の事らしいことを長々と説明されたが細かい部分はまったく理解できなかった。
「つまり、人形は道具ということか?」
「道具ではありません。私は魔道具。正式名を『核動力自己学習型生物兵器 乙型羅号』」
「突然言われても長くて覚えきれません…」
「ではもう一度、核動力自己学習型生物兵器 乙型羅号」
「わかったからっ!!もーいいよ…えーっと。乙型羅号さん?」
「主様が私に敬語を使う必要はありません」
「そーですか…」
この魔道具と色々やりとりしてみた結果、取りあえず外れないのは理解した。
けれど、人形の話しを聞くと絶対に外れないわけではないらしい。
外す方法はあるにはあるようなので、とりあえず外す事は置いといておくとして、これからこの状況をどうしよー…。
「それで魔道具のあなたは腕から離れない以外に何かできたりするのか?」
「主な役割としては、主様の補助が私の役目です。簡単にご説明すると『お手伝い』です」
「お手伝いと言われても。特に手伝ってもらうことはないかな・・・」
こうして初めて手に入れた極めて稀少価値の高い魔道具。
『核動力自己学習型生物兵器 乙型羅号』はお手伝いが出来るそうです。
「本当にそれだけ?」
「それだけです。それ以上でも、それ以下でもありません」
やっぱりそれなら別に必要無いのではとウィズはあらためて思う。
自分の好奇心が招いた事態。
誰の責任でもない以上くよくよしていてもしかない。
「さて、こっからどうするかー」
「気分転換に旅でも如何でしょうか?」
「えーっと。乙型羅号さん…突然すぎる提案だと思わないか?」
全然、気分転換の意味も分からないし、なぜに突然旅をしろと?
こうして?
よき相棒?を得たウィズだった。
もー今週に試験があるのに全然勉強がはかどらず編集ばかりしてました( ^ω^ )わら
嘘つきな猫です。
他にも新作書いたりしてたらオーリスもコアラも疎かになると言う負のスパイラル、、、。
ただ新作がはかどりにはかどり末席魔王より文字数多くなってしまった笑
そのうち編集してから投稿しまーす。
末席魔王オーリス以外にも、乙型羅号さんも宜しくお願いしまーす。
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