決断
ガヤガヤ…ワイワイ…ガヤガヤ
「んーー??なんの声だ?」
ウィズは怠い身体で何とか立ち上がり外から聞こえる声を確認するために扉を開けた。
「さー!じゃんじゃん焼いちゃって下さい!肉ならまだまだありますよ!!」
コアラが真っ赤に焼けた石の上に懐から取り出した肉をどんどんのせていく。
のせた瞬間にジューッと肉が焼け脂が弾ける音が聞こえ、食欲を刺激する匂いを漂わせた。
「あっ!ウィズ様が起こしになったぞー!牛!席を準備しろ!」
「はっ!」
牛が座り背中を平らにした。
「お前らなにしてんだ??と言うかコレは何の騒ぎだ?」
「せっかく肉が大量に手に入ったので日頃ウィズ様がお世話になっている皆様に振舞っておこうかと。そんな事よりウィズ様も食べてスタミナを回復しないと」
デーモンカウは背中を椅子がわりにしてもらおうと思った牛だったが椅子と言うよりはテーブルよりも高さがあり座るにはちょっと不向きだった。
ウィズは牛の体を背もたれにして寄りかかり座った。
「ここは脂が乗って1番美味しいとこなので熱いうちにどーぞ!」
ウィズはコアラに言われた通り皿に乗せられた肉を口に運んだ。
「うまっ!猪とも兎とも違うけど凄く美味い!」
ウィズは腹ペコの胃袋に肉をどんどん詰め込んでいく。
「これなんの肉?」
「もちろん牛ですよ」
「牛か!高級な牛の肉が何でこんなに…」
ウィズは食べる手を止めた。
この村にも牛はいる。
けれどこんな上等な肉が取れるよーな牛なんていない。
村で飼われている牛は家畜として農作業や荷運び、乳搾りの為の牛であって食用ではない。
デーモンカウの脅威から逃れた祝いだとしてもこの肉の量の説明にはならない。
「コレってもしかして」
「デーモンカウの肉ですけど?」
「…だよね」
「そんな不安そうな顔しなくても食べられるので問題ありません。さー!皆さんもじゃんじゃん食べて下さい!肉ならまだまだありますから!」
コアラは楽しそうに村のみんなへ肉を配りながら笑いながら会話を楽しんだ。
「コアラの場に溶け込む早さ…凄いな」
「ウィズ起きたかのか」
「ドッタさん」
「倒れてたから心配したぞ。あそこのコアラが大丈夫だから寝かせて起きるまで肉でも食べて騒いで待とうとか言ってな」
「すみません。なんかご迷惑をかけてるみたいで…」
「みんな美味い肉をご馳走してもらってるんだから迷惑なんかじゃないさ!なんだ?全然食べてないさじゃないか」
「なんか急に食欲がなくなって…」
ウィズは肉を見ながら空から降っては地面で潰れ死んでいったデーモンカウ達の事を思い出していた。
「食える時には食わないとな!」
ドッタは笑いながら肉を取りに戻っていった。
「あ、あのー…」
牛の後ろから小さな声が聞こえた。
「誰だ?」
ウィズが牛の背中から覗き込むとそこには見たことのある少女が手に綺麗な花を持ち立っていた。
「助けてくれてありがとうございました!」
少女は手に持った花をウィズに差し出し、ウィズがその花を受け取ると少女は逃げるよーに走って帰って行った。
「助けたのは俺じゃないんだけどな」
ウィズは少し苦笑いしながら花を見つめる。
夜遅くまで続いた騒ぎも今は嘘のよーに静まりコアラが石に水と土をかけ後始末をしている。
「皆さんに喜んでもらえてよかった。よかった」
「コアラもお疲れ様」
「いえいえ、ウィズ様がお世話になった方々ですからね。最後にこれぐらいはしておかないと」
「お世話になった?なんかこれからはお世話にならない言い方だな」
「えー。しばらくはお世話になる事は無いと思いますよ」
「どーゆーこと?」
「ウィズ様はこの村に別れを告げ、旅立つんですから」
「誰がそんな事言ったんだよ!」
「誰もそんな事を言ってませんよ。しいて言うなら私ですかね?」
「いやいや、流石にそんな大事なことを勝手に決めないでくれ」
ウィズがコアラに詰め寄る。
詰め寄られたコアラは平然と言い返す。
「そーは言いますが、それならウィズ様はここで何をして、何をなすのですか?」
「それは…別に」
「別になんですか?前と同じよーにその日暮らしをしながら歳をとり、老い、死んでいくのですか?貴方に多くの可能性があるにもかかわらずその可能性に眼を瞑り時間を食い潰すそんな毎日でウィズ様ら満足できるのですか?」
「可能性って…どんなだよ」
「ウィズ様の可能性がどんな物で、その可能性が実るのか。そこまでは私にもまだわかりません。けれどその可能性が確実にあると言う事だけは言い切れます」
コアラは真剣にウィズを説得した。
「ウィズ様がそれでもこの村で平々凡々に暮らし死んで行くと言うなら…」
「言うなら?」
「それでも私はウィズ様にお仕えし続けます」
「一緒にいるんだ」
「当たり前でしょ!何をいまさら!」
「悪いけど明日まで考えさせてくれないか?」
「こーゆーのは考えるより勢いに任せてスパッと決断した方がいいと思いますが、ウィズ様が考えたいと言うなら明日、眼が醒めるまで待ちましょう。それでは私はまだ仕事が残っているのでウィズ様は先にお休み下さい」
コアラはそう言い再び片付けを始めた。
ウィズは牛と一緒に部屋に戻り1人ベッドの上に寝転び考える。
自分はこのままでいーのかと自問自答を繰り返していた。
思い浮かぶのはマリーさんとドッタさんと過ごしてきた日々と毎日の小さな冒険とも言えない日々。
何も分からない自分を受け入れてくれたこの村で過ごした思い出。
コアラからの質問に対して反論する事が出来なかった時点で自分の中にある不満や不安、自分に対してのもどかしさがあった事は確かなのはわかっている。
自分の何処かではこーなる事を望んでいたのだろーなと思う。
そして踏み出すきっかけがなかったのも確か。
踏み出すなら今。
今、この時を逃したら二度とこの村から出ることはないのもわかっている。
ウィズは悩み静かに眠りについた。
ウィズが悩んでいる頃、コアラはとある場所を訪れそして眠りについた。
ウィズは朝早く目を覚ます。
静かな村。
まだ何も決まっていない状態で外に出て村の中を歩きながら腰に当てた剣を掴む。
そして決断をし、家に戻りペンをとる。
それから家を出て静かに通い慣れた家のドアを開けた。
中に入ると手紙を置いて立ち去ろうとした時、テーブルの上の物が目に入る。
テーブルに置かれていたのは布に包まれた弁当と手紙だった。
手紙にはウィズへと書かれていた。
その手紙をウィズは開いた。
『私達の息子 ウィズへ
あなたが来てから随分と長い時間が経ちました。
最初、旦那が連れてきた時は驚きましたが大きな息子が出来た感じで楽しかったです。
知っての通り私と旦那には子供がいません。
私の病気が原因で子供が出来なくなりました。
旦那は文句一つ言いませんでしたが私としては申し訳ない気持ちでした。
あなたが来てから旦那も自分の息子のように可愛がり、コアラさんと言う晩酌仲間が出来て大変喜んでいましたよ。
この際、私達の子供にしようかと旦那とも話していました。
ウィズに嫁を貰ってもらい、家族仲良く暮らせたりしたらいーななんて旦那は嬉しそうに私に言ってきたりもしました。
あなたが来てくれたおかげで沢山の思い出ができ、母親としての幸せを感じ、そして夢を見ることが出来ました。
本当にありがとう。
あなたとの別れはとても寂しいですが、息子の旅を邪魔するような母親にはなりたくありません。
あなたにはきっとするべき事があるような気がします。
だから私達は黙ってあなたを見送ります。
あなたは私達の本当の息子です。
どうか体には気をつけて、あなたの無事を遠くから見守っています。
本当にいままでありがとう。
いってらっしゃい。
ps
奥さんや孫が出来たら見せに来いよ!
お前なら出来る!
母親 ベリー・ノエル
父親 ドッタ・ノエル より』
手紙の文字が滲んでいる部分が所々あった。
「ウィズ様。涙が流れておりますが」
静かにコアラが現れる。
「これはお前が言って書かせたのか…」
「いえ。そんな事まではさすがにしませんよ。ただお2人には先に結果はどーあれお伝えしておこうと思いまして」
「そっか」
「大丈夫ですか?」
「よし!OKだ!」
「それは何よりです」
手紙を置き、弁当をもってベリーとドッタの家を出て家に帰り準備を始めた。
「部屋も片付けたし。行くならさっさと行こう!」
「よくご決断してくれました!今後もウィズ様の為に誠心誠意お仕えいたします!」
「モォーーッ!」
1人と2匹は家を元気よく飛び出しはしりだした。
今年最後に投稿できて嬉しく思います。
嘘つきな猫です。
今年より来年いい物が書けたらなと思います。
それでは皆様良いお年を!!!
ちょっと早いけど、happy new year!!(^O^)




