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テンプレチート転生最強剣士、平賀桐人は今日も征く  作者: †闇夜に浮かぶ漆黒の平賀桐人†
1章 主人公、その立ち位置について
7/24

7.平賀桐人「そろそろ出番欲しくない?」

はい、今回はちゃんと投稿します。


「ああああああああああああああああああああああ!!!!」


 目の前でぼこぼこと変形する身体は、あまりにも悍ましく、そして悲しみを誘うものだった。

 まさしく魔族。正しく魔を為すもの。伝承の通りの姿に涙すら出てくる。


「だが、それも欺瞞か。そんな変形を繰り返しても、私の矢は止まらぬぞ?」


 一瞬のうちに放たれた数本の矢、そして砕け散る頭部と四肢。まるで目に追えない速度のそれは、流星のよう。抵抗を許さない狩人の弓矢は魔族の女を圧倒していた。


「ああああああああああああああああああああああ!!!!」

「そのへたくそな演技をやめたらどうだ? まあ貴様が続けたいなら構わんが、私はここで貴様相手に時間を稼いでいればいいだけなのだからな」

「……………………っち」


 ずるり。

 と、身体が元に戻る。先ほどから貫かれた肉体は全くの無傷で、本当に同じ生きているものなのか不安になってくるほどの再生力だった。


「その再生力、そして魅了に変身能力……貴様、もしやとは思っていたが……吸血鬼(ヴァンパイア)だな? それも相当高位の」

「さぁて、どうかしらね。ま、私がなんの種族かなんてどうでもいいんじゃない?」

「ふむ。キリト殿は夜魔(サキュバス)かもしれないと言っていたが……まあ、どちらにせよ絶滅したとされている種族がなぜ生きている? どこかに穴でも掘って暮らしていたか?」

「エルフと一緒にしないでくれない? 私は……いえ、私たちは、死にかけていたところを魔王様によって救われたのよ。大規模な魔族狩り――それも、種族ごと絶滅の危機に瀕するようなものの中、助けに来てくれたのは魔王の軍だった。だから私たちは魔族のために、魔王様のために戦っているの。わかる? 種族的に近しいからって人族なんかに媚びて生きているアンタたちとは違うの」


 そう言って彼女は膨大な魔力を放出する。これは一種の威嚇行為であり、戦略的にも意味がある。一般的な人間の魔法使いではただ魔力を垂れ流しているだけにしかならないが、一定以上の力を持つ魔法使いにもなると、魔力を放出するだけで飛び道具を無効化したり、魔力に耐性のないものを昏倒させることができるのだ。

 そして彼女は――一流の魔法使いと言っても過言ではない。


「で? 言ったわよね、私はあんたたちの計画を壊しに来たって。そんな私がただふざけていただけだと思うの?」

「そうなんじゃないか? 現に今ただふざけていただけだろう。このまま体中に穴を空け続ければ我々の計画は成就する。貴様は何もできずにただ見ているというだけだ」

「この男は……!! これが天然でやってるんだからタチ悪い……残念だけど違うわ。それはね、時間を置く必要があったの。私は死使役士(ネクロテイマー)。こうやっておしゃべりすることでスペルキャストには十分な時間をいただいたわね」

「魔法使いではなく使役士だと!? そうか、キングは呼び寄せたのではなく! すでに死んでいるものを喚び起こして使役していたのか!!」

「せぇいかぁい! よくわかったじゃない。アホなアンタにしてはよくできましたって褒めてあげればいいのかしら?」


 そう言うと、魔族の女の足元から魔法陣が浮かび上がる。魔法使いではなく使役士となると、呪文の出がかりを潰すという選択肢は取れなくなってしまう。なぜならば、魔法とは世界への作用により現実への干渉に少々時間がかかるためほぼ必ず初動が遅くなるのだが、召喚術ならば魔法の起こすような現実の書き換えではなく、存在の出現のため、すぐさま術を行使できるのだ。それも死使役士ともなれば確実に出てくるのは不死者(アンデッド)だろう。高位のものともなればドラゴンすら操れると言われるが……


 クスクスと不快な笑い声が聞こえてくる。アッセムの目の前にいる不快な魔族の女の漏らした忍び笑いだ。


「くひひ。これから取り出すのはあんたたちのよーく見知った顔よ。せいぜいその端正な顔を歪めるといいわ」

「何を言っている? どんな相手だろうと、私はただ打ち抜くだけだ。貴様の思い通りになどさせるもの、か……? お、おい。ちょっとまて、お前! それは! ()()()()!!」

「あーはっはっは! え? なぁにぃ? ()()()()何だっていうのよ? まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()って? その通りぃぃぃぃ!!」


 現れたのは耳長特有の後頭部まで届くほどの長い耳を持つ、クマのような体格の、片手では絶対に取り廻せないような大剣を背負った――――土気色をした顔の、死人だった。

 その名を、前戦士長ラー・イエと言う。


「ラー殿……!! 貴様ァ! 戦士の亡骸を弄ぶとは、まさしく邪悪にして悪辣なる所業! 天に座す我らが神アダマスのご威光を受けながらもその光に背信する悍ましき行為だ! 夥しい数の殺戮を遂げた血の魔神ダルタイオスですら忌むべきものとして顔を背けるであろうよ!!」

「だァからそんなのわかんないんだっつの……ま、今は状況が分かればいいわ。あんたはこいつの相手でもしてなさい。この男、死んでからも相当強いわよ?」


 確かに。魔族の女の言葉に間違いはない。彼の戦士長が相手ではいくら弓の名手と言えども荷が勝ちすぎる。同じ英雄同士ならば強いほうが勝つ。当たり前である。

 ただし、それは同じ土俵に立っていた場合だが。


「では、戦わなければいいだけだ」

「は? ってちょっとぉ!?」


 一瞬消えたかと思うと次の瞬間にはもうすでに矢が放たれている。これぞアッセム・ライオネルの真骨頂、迅雷の如き速射である。

 次々と放たれる矢に対し、ラーのゾンビは的確に防御をしていく。しかし、それはすべて魔族の女に向けられる矢を叩き落すことに終始しており、ほぼ同時に飛んでくる槍の如き二射目を身体に許してしまっていた。これは、ラーのゾンビがいくらネクロマンスの力で動かされていると言っても、生前の力をそのまま発揮できるわけではないということの証左でもある。彼の戦士長は戦士としての判断は的確で、もし彼がこの場に生きて存在していたら、いくらでも回復する魔族の女など放っておいてアッセムを殺しに来ただろう。

 しかし、現実はどうであろうか。彼の戦士長は類まれな戦闘勘を忘れたかのように主人を守っている。ゾンビとしての本能に腐った頭では抗えないといったところだろう。


「私ではラー殿には勝てない。戦士としては彼のほうが上だ。それは認めよう。しかし、何も私は戦士として勝つつもりなどないぞ? 私の本職を忘れたか? 私は狩人。力で敵わない獣を知恵で追い詰め、罠にはめて殺すのが本質だ。そして、弓は相手の届かない距離から攻撃できる狩人の必需品だ。例えば、こんな風にな」

「ぐっ……くそ! おら! クソエルフ! 早くあいつを殺しに行きなさい!! 早く!! 動け! 動けよ!! 動けよぉ!!!」

「無駄だ。その御仁の足は既に射抜いた。もはやまともに動くのは上半身だけであろうよ。まあ生前の彼ならば四肢を砕いたくらいでは戦いを諦めることなどないだろうが……まあ、それが使役された者の定め。遠慮なく滅びてほしい。せめてもの弔いに、私の持てる最高の技を捧げるのでな」

「ふ、ふざけるな! こんな、こんなことがあってたまるか! ここまで来るのに何年かかったと思って! それがこんな一瞬で! なんで!!」

「滅せよ邪悪。さあ、我らがシルフィーネよ。見るがいい。我が聖滅を、我が闘争を、我が捧げうる風の声を! あらゆるものは暴風へ! 我が一撃は烈風へ! その一射、流星すら砕き散らせるであろう!」


 風が舞う。アッセムの周囲に矢の如き風が――いや、それは矢そのものだった。シルフィードの権能である風の矢。それが彼の周りを無数に取り囲み、切っ先を魔族の女とラーへと向けていた。


「ああああああああクソがあああああああああ!!!!」


 彼は言った。シルフィーネの通り道には草も生えないと。木々はなぎ倒され、獣は縮こまり震え、通り過ぎるのを待ち、それすら気が付かない愚か者はみじんに刻まれると。

 そして、それを模したものこそがこの一射――


「千条流星雨極一射(アルマステラ)


 次々と矢が放たれる。風の矢は轟音を立てて迸り、着弾時には衝撃をまき散らす。

 砕け散る。――身体が、砕け散り、砕け散らされ、砕け散る。ばらばらにされ、再生し、そしてまたばらばらにされる。まるで全身が連続で交通事故にあっているかのような気分で、控えめに言っても気が狂いそうな地獄だった。

 前に立っていたエルフゾンビなど一瞬で使い物にならなくなってしまった。それも当然だ。ゾンビは生前の体よりも固くなっているとはいえ、戦士ならば気の操作でいくらでも自分の肉体を硬化できるはずなので、相対的には柔らかくなっているのだ。


「――――――――」


 言葉も話せない。一体いつ終わるのだろうか。こんな地獄を味わう羽目になったのはなぜだろうか。いや、こんなことになったのもすべて目の前の男が悪い。消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ――

 あまりの辛さに意味の分からないことを考え始めた頃やっと流星雨は終わった。


「……驚いたな、まだ動けるか。これでも私は射手としてはかなりの腕だと思っていたのだが」

「……ぁ…………ぃ……ょ!!」

「ふむ、何を言ってるかわからんしな。そのまま殺してやる。抵抗はしないほうがいい。楽に逝かせてやるからな」

「…………ぇ…………の、ほのぉ……のぐげんぉ……とぇ……!!」

「む!?」


 魔法の行使。それにアッセムが気づいた時にはもう遅かった。


 轟々と燃え盛る火炎が大きな玉となって、川の水流をせき止めていた土壁を破壊し、堤防を決壊させてしまう。砕け散ったまま、再生途中な頭ではどうしてそんなことをしていたのかは思いつかず、ただただ当初の目標を達成できたことを喜んだ。


 ざまあみろ。これでお前たちの野望は潰えた! 


「ふむ……まあ問題はなさそうか」

「ぁ!?」

「これでも狩人だからな。耳と目はいいさ。見えるだろう? あの立ち上る雷樹が。まあなんだつまり――」


 キミの仕事は終わったということだよ。


 そして彼女は崩れ落ちた。

できれば感想が欲しいな!!!

いやこれマジで!!!

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