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テンプレチート転生最強剣士、平賀桐人は今日も征く  作者: †闇夜に浮かぶ漆黒の平賀桐人†
1章 主人公、その立ち位置について
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3.平賀桐人、浮かれる

すみません、ちょっと削ってたら遅れました!

一応毎週日曜20時投稿です!

 蛮族どもの要請を快く――そう、聖人のように快く受け入れてやった俺は、会議の進捗状況を確認させてもらっていた。このまま奴らを殲滅するのは赤子の手をひねるよりも簡単だが、より効率的に対処するならマンパワーは確実に必要だからな。


「……とすると、野菜の習性として群れをなして人を襲うということだな? はぐれは基本的にいない、と」

「あぁそうなる。それから、小さければ小さいほど素早く、捉えづらい。大きければ大きいほど力強く、頑強だ」


 野菜に強いとか素早いとか激しく違和感があるが、俺が倒したにんじんは野菜の中でも大柄な部類に入るらしい。


「とにかく群れた相手に少数であたるのは危険だ。5人で班を組み、4組で小隊編成を行う。前衛、後衛はそれぞれ最低1人、相手の数がこちらより多い場合、連絡用の信号を発信、司令部より連絡のあった小隊が救援に向かうこととする。その際、該当小隊は速やかに遅滞戦闘へ移行とする」

「敵が大隊以上の場合は?」

「こちらも大隊を編成する。その際、司令部を前線へと押し上げる」

「敵にキングが現れた場合は?」

「野良でか? まああり得なくはないが……その場合は撤退だな。里の被害は看過できないが、ウチの里の人数では対処不可能だ」


 …………な、なんかエルフがすごい頭良さそうなんだが。えっ、嘘だろ?

 その後もとんとん拍子に会議が進み、俺が口を出すまでもなく方針が決定した。俺がいる意味あったのだろうか……まぁ、いい。話を聞かないよりはマシだ。この会議が無駄な時間だったとしても。


「ところで一ついいか?」

「どうした? 今の説明に不足があれば申し出るといい。アプロスの怒りのように頭に刻み込んでやろう」

「この騒動を引き起こした犯人はどうするんだ?」

「…………なんだと?」


 彼女――戦士長ルルは片眉をひそめながら訝しむようにこちらを覗き込んでくる。それも当然だろう。いくら俺が選ばれし者だとはいえ、まるで犯人がわかっているような発言は俄に信じられないはずだ。

 まあ、犯人などわかっているのだが。


「分かっているだろう。()()()()()

「だろうな。じゃあとっとと終わらせるか」

「さすがの自信だな、シルフィーネの愛し子よ。……頼むぞ、君の力が頼りなんだ」


 はいはい余裕余裕。まあ任せろって。全部叩きつぶしてやるからさ。マッシュにしてやるよ。




 ――――そして、すべてみじん切りにした。









「シルフィーネの祝福とウィンディーネの恵みに感謝を!」

「「「感謝を!」」」


 俺たちが野菜を切り刻んで数刻後、手足を切り落とした野菜どもを囲んで野菜パーティーをしていた。


 ここまで浮かれた雰囲気になっているのも、結局キングとやらも現れず、大した負傷者を出さずに討伐が完了したからだ。まあ、あれだけ組織的な運用をするエルフ相手に野良のゲリラが持ちこたえられるはずもなく、当然のように調理されていったわけだが……見せつけられたのはエルフの軍事的思考の先進性、そしてそれを効率よく運用する組織力、魔法に特化した戦闘能力の高さだ。

 歩兵部隊運用は現代のそれに近く、それでいて魔法を扱えることを考慮した柔軟な動きを可能とするものだった。


 やはり魔法は現代兵器と比べ、汎用性が高い。威力に関しては戦車砲を超えるようなものや、攻城兵器に近いものなどはないが、白兵戦でそこまでの威力は過剰だろう。最悪一発の銃弾さえあれば人は死ぬ。


「課題は魔法……それも展開速度、連射性に優れたものが必要ということか」

「キリト?」


 ユーフェイが赤い顔でこちらを見てくる。……だれだ幼女に酒を飲ませたのは。

 黙っていると何を勘違いしたのかふにゃふにゃとした笑顔で近づいてきて、俺の腕に飛び込んできた。なんだこいつ、何がしたい?


「えへへ」

「なんだ? もうおねむか?」

「んー……きりとのにおいです。くさい」

「ぶっとばすぞクソガキ」


 動いたから! 殲滅戦してたから汗かいてるんだよ! まるで俺がいつもくさいみたいな言い方はやめてもらおうか!


「ふ、ずいぶん懐かれたな、キリト殿」

「アッセム。……いや、そうか? まあ嫌われるよりはいいんだが、子どもの相手など得意ではなくてな。思ったよりも面倒だ」

「そ、そうか」


 眠りこけたユーフェイの頭をなでながら優しい目をする射手の男――アッセムは、どうやら狩人長と呼ばれる役職だったようで、先の殲滅戦もいくつかの小隊を率いて戦っていた。どおりであれほどの弓の腕をしているわけだ。おそらく弓の腕ではこの集落で一番なのだろう。


「この子は母親が死んでから、自分を戒め、代わりになろうと努力してきた。……父親にも弱みを見せず、辛くても泣かないような子に育ってしまった」

「いいことでは?」

「普通ならな。だがこの子親は忙しく、甘えられる相手がいなかった。それはとてもつらいことだよ。特にこんな小さな子どものころでは、我々が思っているよりも重しとなって心にのしかかるだろう」


 そうなのか。物心ついた時から親のいなかった俺にはわからない感覚だ。

 強くなるしかなかった。学校でいじめられた時はすべてが敵で、教師や周囲の生徒も俺をかばってくれるやつなどいなかったからな。まあすべて社会的に殺してやったが。


「……まあ、懐かれてるなら、無理に突き放す必要も、ないだろうし、まあ、うん……仲良くしてみるけど」

「ははははは! 女神と精霊に選ばれし英雄殿も子どもは苦手か! ――頼むよ。私はあまりこの子に好かれていないから」

「お前、もしかして……」


 その言葉にはふっと笑うだけですぐに立ち上がって去って行ってしまうクソエルフ。笑うさまも似合っているとかなんなんだこのクソイケメンは。爆発してくれ。早急に。


「クソエルフめ」

「ほう……それは耳長族に対する侮辱ととって構わないかね? よろしい、ならば戦争だ」

「おうッ!?」


 アッセムと入れ替わりに現れたのは戦士長ルル。顔の片側に創傷のある彼女は気配を消しながら背後に立っている。恐ろしい化け物なうえに戦闘狂とくるこいつは蛮族の中でも特に蛮族なキングオブ蛮族……いや、クイーンオブ蛮族(アマゾネス)とでも呼ぶべき存在だ。


「……気配を消して背後に立つなクソ蛮族め……」

「くっくっく。いやなに、あの生真面目な狩人が久しぶりに父親の顔をしていたのでな。少し気になっただけさ。からかったら面白いぞあれ」

「性格悪すぎじゃないかお前…………まあお前から来るなら調度いい。いくつか頼みたいことがある」

「ほう……」

「女をよこせ。この女神に選ばれし存在である俺の相手をしてくれるような女だ」

「流石の私も驚くようなクズ発言をありがとう。そんなにおはなし(ころしあい)したいとは思わなかったよ。というか、女なら一人そこにいるではないか」

「流石の俺も驚くような発言だな。幼女に手を出すとか頭おかしいんじゃないか?」


 こいつわかってるくせに楽しんでやがる。顔のにやつきが抑えられていないし、本当に性格が悪い女だ。こんな蛮族が戦士長とかエルフやばいな。流石蛮族。蛮族すぎてもう全部蛮族だわ。

 ……そもそも、ルルには()()()()()()からな。全部わかってて言っているのだろう。やっぱ性格最悪の女じゃねえか! 性悪アマゾネスめ! こいつだけキングとかいうのに当たって死ねばよかったのに。


 にやにやとした顔の性悪蛮族(ルル)は宴で騒ぐ蛮族の女どもの所へ向かった。おそらく女神に選ばれしものである俺の接待をするための女を見繕いに行ったのだ。なんだかんだやってくれるのはいいが……くそ、まあいい。あとはヤることヤるだけだ。


「じー……」

「な、なに?」

「わたしというおんながいながらきりとはほかのおんなにもてをだしゅのでふね」

「寝てろ」


 寝ぼけたのだろう。ユーフェイがなんか言ってる。まあ特に問題はないだろう。ふにゃふにゃしたガキの戯言を真に受けるほど、俺も子どもではない。

 勘違いとかしてない。

 マジでしてないからほんと。いや、これマジだから。


「はぁい、勇者様。あら? ……あらあら、仲良しさんなんですね」

「勘違いです」


 ユーフェイの頭をなでなでして寝かしつけていると、豊満なバストを持つ妖艶な雰囲気のお姉さんが現れた。うっひょお! こいつを待ってたんだ!

 お姉さんはうふふと微笑みながら俺の隣に腰掛け、酒を注いでくれる。近くない? あっれー、これはちょっと勘違いしてしまいそうな近さですねぇ?


 と、そのとき。


「あっ、やん」

「んごぁッ!?」


 お姉さんの雰囲気に気圧された俺の腕がその柔らかな果実に特攻してしまった。おいおい、俺の腕よ。それはまだ早いぜ? 戦場ではお漏らししたやつから消えてイクんだ。ここにママはいねえんだぞ?

 ………………ふー。やわらかい……柔軟剤も使ってるんですか?


「もう……えっち」


 俺もう死んでもいいです。

 例え膝の上のユーフェイの血走った目が瞬きもせずにお姉さんを見ていたって関係ない。関係ないね! この! この瞬間だけは楽しませてもらうぜ! これは女神に選ばれし俺の特権であり、エルフの村の騒動を解決した俺への正当な報酬として支払われたものであるためすべての意見及び異議を却下したうえで直ちにこのシチュエーションを楽しむことが先決だ!!!

 平賀桐人17歳、いっきまーす!




 ――お姉さんの胸は柔らかかったです。








 少しの後。飲みすぎた俺はお姉さんの家まで送って行ってくれるという言葉に甘えて、宴会から抜け出して歩いていた。


「大丈夫ですか?」

「も……もんだいない……おれは、めがみにえらばれし……ひらがきりと……17歳です……オエッ」

「だ、大丈夫じゃなさそうですね!?」


 酔いが回り吐きそうな俺はお姉さんに介抱してもらいつつ、家までの道を進んでいる。このあたりには人もおらず、周りにあるのは木々だけ。薄暗い道を照らすのは煌々と光る異世界の月のみだ。森のなかにある道は影を落とし、少し先もよく見えない状態だった。

 ゴッと音がしたかと思えば、太く固い木に頭をぶつけてしまった。これもこの薄暗い夜道のせいだな。そうに違いない。


「ほら! ちゃんと前を見て歩かないからぶつかっちゃったんですよ!」

「う、おう」

「もう……ちゃんとしてください、勇者様。私の家につけばいっぱい……シてあげますからね……」

「ごめ、もうむり」

「えっ」


 お姉さんの手を振りほどき、近くの木へ一目散にダッシュで向かった俺はその木の根元に吐いた。この木の周りはあまり木々が密集しておらず、俺の情けない姿が月に照らされてはっきりとわかるだろう。

 お姉さんはそんな俺にがっかりした様子もなく、やんちゃをした子どもを見守るかのように微笑みながら近づいてくる。


 そして、そんな彼女を幾本もの矢の雨が迎え入れた。


「え? ……ぎ、ゃあああああああああああああッッ!?」


「総員展開! 斉射ッ!!」


 既に常人なら死んでいる矢をその身に突き立てる女に、構うことなく矢を射るエルフたち。まるで戦場で会った敵のように鬼気とした表情で攻め手を休めない。まさしく蛮族。まさしく狂気。


 だが、


「手を休めるな。()()()()()()()()()()。さっさと殺せ」


 それを指示したのも、彼女をここへ連れ込んだのも俺だ。

 俺が命令し、俺が殺す。それだけの話だ。


「ふむ、シルフィーネの愛し子よ。君の言うことだから従ったがね、これで違っていれば大問題だぞ? 本当に責任は取ってくれるのだろうな?」

「任せろ」


 そう、暗がりから俺に問いかけてきたのは誰であろう、戦士長ルル。彼女もこの茶番に噛んでいたのだ。もちろん、宴会の時からだが。


「ポーロをおとなしくさせるのにも苦労した。あの子はザザのことが好きだったからな。君のもとへ向かわせるのにも大反対したものだ」

「ふーん」


 知るか。あいつは敵だ。

 そう思いながら、俺は目の前のピクリとも動かない死体に目を向ける。いやはや、()()()()()()()()()じゃないか。


「というか、そろそろ起き上がったらどうだ? その程度じゃ死んでないだろ?」

「…………ふふふ。ふふふふふふ」


 ずるり、と。

 先ほどとは打って変わって何重にも重なったような音階の声を響かせ、全身に矢が突き立った肉塊はうごめく。ぽろぽろと矢を落としながら立ち上がった彼女は、まったく変わらない姿で微笑んでいた。貫かれたであろう肉も、服も、まったく変わらずに。


「すっかり騙されちゃった。どうしてわかったの?」

「……最初から分かっていただけだ。お前、何者だ?」

「ふーん……わかっていた、ねえ? それにしては反応が童貞臭かったじゃない。経験無いの?」

「やかましいわ!? ……まあ、いい。簡単なことだよ。いいか? まず最初からおかしいんだよこの野菜騒動は」

「ん? どういことだ?」


 すっかり聞き役になっていた戦士長ルルが口をはさんでくる。少し黙ってろよ蛮族め。あっ睨まないでください死んでしまいます。


「今回野菜たちの大脱走が起こった原因ってなんだ?」

「ああ、それは子どもたちが遊んでいて、柵を壊してしまったからだな。けが人は出なかったらしいのが救いだが」

「それだよ。なんで子どもが遊んで柵壊せるようになってたか、それがまずおかしい」


 殲滅戦のエルフたちを見ればわかる通り、こいつらは慣れていた。軍事行動だけじゃない、野菜の対処にも慣れている気配を感じられた。それはつまり、度々こういったことが起きていたということを示唆している。


「何回も対処していればどんなアホでも蛮族でも気が付くだろう。野菜の脱走に対処するよりはまず脱走しない環境を作ることが大切だと」

「それはそうだな。だが、どうしても起こってしまうという状況はある。今回もそうだったかもしれないではないか」

「そうだな。だが、今回はいつもと違うだろ? ……俺がいた。『女神に選ばれしものである平賀桐人』がこの集落にいた。そんなときに子どもの不注意で野菜の脱走が起こるなんてありえるか? お前らからすれば不審者だぞ? 巡回でもなんでも警戒はしていたはずだ」

「いや……たしかにいつもよりは巡回員を増やしていたな」

「だとすれば、だ。人為的な要因だと思うほうが自然だ」

「……へえ、でもそれだけじゃないでしょう? どうして私が魔族だとわかったのかしら? これでも完璧に耳長族を演じていたつもりなんだけど」


 いつの間にか背中から翼を生やしていた彼女は、すっかり変貌を遂げていた。赤い髪、頭から生える角、大きな翼、尻尾……おそらく、現代人が思い浮かべる悪魔のような容姿をした女は、それでもただ一つ変わらない妖艶さを振りまいて問いかける。


「言っただろう、最初からだと。俺は『女神に選ばれしもの』だぞ? それを公言してもいた。そんな相手を確実に仕留めるためには、前後不覚になった状態が一番いい。この騒動が人為的なものだと気づいた時にはその可能性に至っていた。あとは宴会で俺に近づいてくる女を観察していればすぐにわかる」

「なるほどね……つまり初めから警戒されていたのね。あんなにおっぱいに目が行ってたのに」


 うるさいよ! 男だからしょうがないだろ!


「でもばれたつもりもなかったんだけどなぁ……」

「いや、すぐにわかったぞ? だってお前俺のこと『勇者様』って呼んでいただろ」


 そう、それが決め手だった。だってそうだろう。ここの蛮族どもは俺のことを『シルフィーネの愛し子』と呼ぶ。それに俺は自分のことを『勇者』だなんて言ったことは一度もない。


「もう一つ。『ライオネルとユーフェミリアに誓って』って言葉。あとでユーフェイに聞いたんだが、これは獣面族の英雄と獣面族が崇拝する神様の名前らしいな。エルフ語の自信がなかったのかもしれないが、普通、そういったものから言葉を借りた時には形容詞をつけるものだ。『勇敢なる剣士ライオネルと美しく愛を司る女神ユーフェミリアに誓って』とかな。ま、結局お粗末すぎたってことだよ」


 ふぅ、と嘆息する魔族の女。その顔にははっきりとした苛立ちが刻み込まれていた。なんだ? 何に憤っている? こうして時間を稼いでいるのだから何かしらの準備をしているとは思っているが……


「まさか、ここに来たばかりの異邦人に言葉遣いを指摘されるとはね……ちょっと甘く見てたかしら。せっかく用意した手駒も無意味になったし、散々よ」

「良かったな」

「チッ……舐めてくれちゃって。これから死ぬってのに随分と余裕じゃない?」

「ハッ、この人数に勝てるとでも思っているのか? 生まれたてのオークでももっと頭がいいぞ?」

「そのエルフ特有の謎の言い回しホントむかつくからやめてくれない? それに誰が私が戦うって言ったのよ? 私ってほら、潜入工作員だし? 戦うのは下僕にやらせてるの。ホントは勇者を下僕にできたら最高だったんだけどね……ま、()()()にやらせれば最低限あんたたちを殺せるからいっか」

「は? ……っ!? なん、だ……!?」


 暗い森の中に響く声。そして何か巨大な生物の地響きがこちらへ近づいてくるのがわかる。ずんずんと響く音は相手の巨大さを示しているようで、とても重い振動が足元に伝わってきていた。

 ふと隣を見ると、戦士長ルルの目が見開かれている。なんだ? なぜそんなにおびえている?


「まさ、か……! まさか貴様!!」

「ふふ、じゃあね。死んだらまた会いましょ。今度こそ下僕にしてあげるわ」

「待て! ユーフェイ、やれ!」

天の(ロ・ライネス・)怒り(ライディーン)!」


 まさしく天の怒り、自然災害で最も力を持つ雷が魔族の女に降り注ぐ。それは避けようもなく、すさまじい威力で女の体を貫いた。魔力が誘導し、かき集めた雷の電力は自然のそれと遜色なく、いや、それどころかさらに凄まじい力を以って放たれているようにも見える。これならひとたまりもないだろう。やつは死んだはずだ。


「ふぅ……どうですかキリト。私のほうがあの女よりも強く美しく賢くあなたの隣にふさわしい魔術師であるということがこれではっきりしたでしょう」

「せやな」


 ドヤ顔で茂みから出てきたユーフェイの頭をなでつつ、今一番の懸念について、考える。

 音が、やまない。それどころか近づいてきているようにも感じられる。


「く、今のが引き金になったか! 来るぞ!」

「おい、どうした? 何が来る?」

「見えるだろう、シルフィーネの愛し子よ。()()だ。奴こそが野菜の王、その外皮は強靭にして柔らかく、巨体に見合わん素早さを持つ最強の野菜」


 ずんずんとした音が近くなる。そして、見えてくるその巨体。緑色に染まったそれはあまりにも大きく、人が持つようなちっぽけな剣では傷などつかないとさえ思われる。そして太く発達した手足に凶暴そうな鉤爪と長い胴体、開いた口には恐怖を呼び起こす牙がずらりと並んでいた。その口から匂ってくる甘い匂いは、獲物の油断を招き、警戒が緩んだところを一瞬で引き裂くことになるだろうことが簡単に予想される。


 そう、こいつは――すでに原型など塵ほどもないが、現代人の視点から言うならば――


「奴こそ緑の王『キング』だ……!!」


 かぼちゃだった。

平賀桐人が好きな君も

ユーフェイちゃんが好きな君も

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