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テンプレチート転生最強剣士、平賀桐人は今日も征く  作者: †闇夜に浮かぶ漆黒の平賀桐人†
2章 女神、それは見守るもの
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12.平賀桐人、神に会う

すみません、ちょっと体調を崩した上に出張が重なってしまい……

とりあえずどこかで補填はしたいなーと思います。

「じゃあ頼む」


 アダマスを祀る神殿の最奥――聖女の住む寝所についた俺たちは、再びその扉の前まで来ていた。前回はとりあえず強引に突破したが、今回は偶然扉の鍵――近衛騎士のおっさんを捕まえられたのでラッキーだった。

 俺の言葉にこくりと頷いた神官マリアは、何やら仰々しい呪文を唱え始める。おそらく、この寝所の扉には何かしら神にまつわる力に反応して開くような仕掛けが施されているのだろう。まったく、どこまで面倒なんだか。というか、寝所から出てこないとか完全に引きこもりじゃねえか女神アダマス。大地に根付く人々の管理者だというのに職務怠慢としか思えない。これだから神はダメなんだ。早く何とかしなければ。


 ふと、呪文がを唱える声が止む。そして扉を見ると、いつの間にかできたのか、黒い渦のようなものが前面に発生していた。なるほど、これが人間の通り道というわけか。やたらでかく威圧的で重そうな扉は見掛け倒しで、実際にはこの通りに空間自体をつなげる必要があるのだろう。扉とは名ばかりであり、空間ごと隔離しているのだ。つまりこの先は神気であふれる異界ととらえても過言ではない。めちゃくちゃアウェイだ。


『(ふんす!)』

「ええい! ドヤ顔でこっちを見るな! ……はいはいわかったよ。お前はすごいよ、あーすごいすごい。これでいいだろ、行くぞ」


 うっとおしい顔の神官だ。



 ――そこは様々な花が咲いていた。それこそこの世のすべての花を敷き詰めたとしてもこれほどの花の量を維持はできまい。というか、それ以前に栄養の取り合いで土壌がぼろぼろになって崩れ去ってしまうだろう。だが、ここではそんな心配はない。見れば空は透き通るような青さを表し、地面はふわふわと雲の上に入るかのようだ。それもそのはず、地面は雲でできており、透き通るような空には太陽が浮いていない。ここはアダマスの神域、『庭園(ガーデン)』と呼ばれている神の城だ。事実、ここに足を踏み入れた瞬間ユーフェイは神威に怯えるように周りを見渡している。この空間に満ち満ちる力がすべて神そのものということを肌で理解できたのだろう。やはりこの子は優秀だ。この力に飲み込まれず、しかし力の脅威をしっかりと感じるだけでなく警戒もできるとは、将来は優秀な神殺しになれる。


「ほー、すっげえなここ……これが神のおわす神域ってやつかい」


 なんとなくついてきた神殿騎士のおっさんがため息をつく。確かにすごいといえばすごい。ほとんどの人間にとって、神の城に足を踏み入れることは自殺行為にも等しい。それは神殿でその神の加護を与えられた神殿騎士ですら同様だ。神の力というのはその程度でどうにかなるようなものではないのだ。


「気をつけろよ。ここでは何があるかわからないぞ」

「いや、お前さんってアダマス様の勇者なんだろ? まさか自分とこの勇者に何かするわけないだろ?」


 するんだよ! 神って奴はそういう存在なんだよ! 今までお前は何を見てきたんだ? え? そのおめめは節穴なんですかねえ!?


 そうしてはしゃぐ俺たちの目の前に唐突に力が出現する。そのあまりの強さに一瞬で警戒の構えをとる俺と即座に片膝をつくおっさん、ユーフェイは初めて味わう神の神威に動くこともままならないようだ。俺たちの中で平然としているのは一人だけ。その身に神を宿している神官のみである。


 現れた力の塊は――幼女の姿をしていた。幼女であるユーフェイと結構どっこいどっこいの幼女さだ。かろうじて少しばかりこちらのほうが大きいかと思われるが、まあ小学三年生が小学四年生になったくらいだろう。つまりどっこいどっこいである。


「ようこそおいでくださいました。異界からの来訪者、平賀桐人。そしてその仲間たちよ。私は」

「ああ、その辺はいい。とりあえず用件だけ話せ。というか今まで何していたんだ貴様。俺がここに来たのはすぐにわかっただろうに何故ここで待っていなかった。ん? 職務怠慢か? 滅ぼされたいのか? え?」

「……!? ……あぅ……あの、覚えてないかもしれませんけど、私、アダマスですよ……? あなたを召喚した神さまですよ……? 確かにここまで放っておいたのは……わたしのほうにも事情があるとはいえひどいなって思いますけど……もうちょっとやさしくしてくれてもいいんじゃ」


 涙目になる幼女――アダマス。神の姿は特にこれと言って決められたものがないとはいえ、わざわざ幼女を選ぶとは変わった神である。まあ俺も仕事をしていた中では軟体生物の神や機械仕掛けの神なんかを見たことがあるため特に言うことはないが。


「断る」

「!? いや、ちょ、ちょっと待て。お前、勇者なんだろ!? 流石にその態度はおかしいだろ?」


 俺のあまりにもあまりな態度に片膝ついた状態のおっさんが切れる。その態度はおかしい? くだらないことを言うなよ。おかしくない、まったくおかしくないからな。というか俺は誰に対しても割とこんな感じだ。え? それがおかしい? へえ。興味ないね。


「…………うぅ、あの、じゃあ落ち着いてお話できるところにお通ししますね」


 そう言うと周囲の景色が一瞬で変わった。空間の入れ替えだろう。この神域の中では文字通りすべてが神の手のひらの上ということだ。

 そこには大きく丸いテーブルと人数分の椅子、そして不貞腐れたような顔の気にくわない雰囲気のクソガキが座っていた。十中八九、あれが聖女だろう。纏う雰囲気もアダマスのそれに近いものがあり、こちらをにらみつけてくるところからしておそらく間違いない。


「聖女様!」


 おっさんが彼女を見つけると駆け寄っていく。犬のようだ。そして聖女はそちらに目を向けもしない。


「アダマス様! なんでアレを連れてきちゃったんですか!」

「アレ……? キリトさんのこと? もう! だめだよ、ケイちゃん。勇者様にそんなこと言っちゃいけません! めっ!」


 めって……。いや、どう見てもアダマスよりも聖女のほうが年上に見えるが、実際の年齢は百倍どころではないだろう。そんな彼女が聖女に対して叱るのは違和感を感じないが、叱りかたがおかしい。いい歳した神が少女に向かってめっはないだろう。ファン獲得のための可愛さアピールかな?


「くっ……! 大体ねえ、アンタが負けるからいけないのよ! なんで負けちゃうのこの役立たず!」

「えっ、俺ですか!? ……も、申し訳ありません。神槍をいただいていたとはいえ、相手が勇者では力を引き出しきれずに負けてしまいました。この罰はいかようにも」

「ばか! じゃあ夕ご飯抜きだから!」


 めちゃくちゃ軽いじゃねえか。なんだこいつ。


「おいクソガキ」

「何よクソ野郎!」

「こら! ケイちゃんそんな汚い言葉使っちゃいけません!」

「え!? あいつはいいんですか!?」

「キリトさんは最初から汚れてるからいいんです! ケイちゃんはそんなキリトさんみたいに世間の汚さとか業界の闇とか知らなくていいんです!」


 おいこら女神。……というかなんか思っていたよりも随分と庶民臭い女神というか……なんだ世間の汚さとか業界の闇って。見たことあるのかよ女神。神業界でも闇とかあるのだろうか? 世知辛いなあ。邪神とかは見たことあるし討伐もしてるけどな。


「話が進まないな……おい、俺はこの女神と話があるからどっか行ってろ。目障りだ。具体的に言うと失せろ。ついでにお茶持ってきて」

「あ、ついでにパンとか買ってきてください。私はあれがいいです、最近評判のクリームパンというやつです。あと私には紅茶でお願いします」

「は!? ……は!?!? え? あれ今すごい自然にパシリにされてない? ちょっと、私これでも聖女なんですけど!?」


 そうだな。特に興味ないけど。


「さて、いつまでも遊んでないで話を進めるとするか。女神アダマス、お前が俺を――異界の()()()を勇者としてこの地に呼んだわけを話してもらおう」


 その言葉ににこにことほほ笑んでいた神官と適当そうな感じで耳をかっぽじっていたおっさんの表情が固まる。おっさんに至っては最初にここへ侵入してきたときと同じくらいの殺気を交えながらすぐさま神槍を構える始末だ。おいおい、それはもう俺には通じないとわかっているだろう? ユーフェイはその殺気を受けてしまっていた杖を出す。世界樹と呼ばれる精霊に好まれる木の枝から作り出した魔力伝導率の良い杖だ。森から出るときにアッセムからもらったと言っていたが、おそらく母親の形見か何かだろう。


 そして一触即発の空気を流しながらそれらを一切気にすることなく女神は口を開く。あまりにも女神らしくなくとも、やはりこいつも神の一柱。この程度のこと、人間が虫が戯れているのを見るのと同じなのだろう。まったく気にしたそぶりもなかった。


「あなたにお願いしたのは魔王討伐です。この世界に降り立った最初の人間――そして、初めて神を滅ぼしてその座を奪った簒奪者にして今やいかなる神を超えるほどの力を持った邪神となってしまった、元天使――サタナエルを滅ぼしてください」


 遂に語られる俺の役目。それは想像していた通りの暗殺依頼だった。もちろん、俺はこの世界に呼ばれた時から、いや、呼ばれる前から人間の守護者であることを自分に課している。そんな俺が取る答えはただ一つだった。


「ああ、断る」

次回、遂に明かされるキリト君の秘密! ……はとくにないです。


次も18時投稿なのです!

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