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テンプレチート転生最強剣士、平賀桐人は今日も征く  作者: †闇夜に浮かぶ漆黒の平賀桐人†
2章 女神、それは見守るもの
19/24

8.平賀桐人、聖女と神に会う

うーん、本格的なバトルは時間がなかったから書けない。難しいですね。

次回も日曜18時です。

 綺麗な月夜の晩には化生が出る。そんな話を聞いたことがある。化生というのは、この場合よくないもの……悪意を持った人間を揶揄したものだ。昔から人々は悪意を持って人と接し、悪意を以って人に害をなすものを化生や鬼、悪魔などと『人ではない何か』として扱ってきた。根底には自分の理解できないものが自分と同じ人間だということを認められないという思いがある。それが人間の汚点であるし美点でもあるという話だろう。多くの人が無意識的にそう思って過ごしているし、多くの人はそれが普通だと思っている。


 しかし、世の中にはそんな括りに当てはまらない「例外」が一部存在する。


 あるものは化け猫と遭遇し、あわや魂まで抜き取られかけた。また、あるものは地獄から這い出てきた妖鬼と遭遇して百鬼夜行に加わってしまった。そんな哀れな運のないやつらというのは何処にでもいる。


 その中には、湖のほとりに精霊を見たという話が存在していた。ある時代、ある場所の木こりが仕事を終えて帰ってくると、ふと湖のほうに人の気配を感じたという。そこにはいつも誰もいないはずなのに何故気配を感じるのか気になってしまった木こりは、こっそりと様子を見に行ったのだそうな。足音を消し、用心深く進んでいくと遂にその姿があらわになった。それはまるで天女が降りてきたかのような、神々しいまでの裸の女体だった。思わず木こりはぎゅっと握りしめていた斧を落としてしまい、その女に気づかれてしまう――といったものだ。話は木こりが存在をばらしてしまい、その天女が全裸で逃げ、来ていた服を彼が手に入れるという終わり方をする。おそらくはとんでもない美人が水浴びをしていたのを天女と勘違いしてしまったのだろうとは思う。しかし、神秘学者的な見方をするのなら、彼は精霊の祭事に出くわしたと考えられる。これはかなり運がいい。水に連なる精霊の祭事とするならば、その一帯の森の成長を助け、水の浄化を行っていたのだろう。おそらく結界を張っていたと思うが、そこに割って入った件の木こりの魔力が相当強かったのか、それとも結界にほころびがあったのかは定かではない。


 閑話休題、少し話が脱線したがつまり何が言いたいかというと、今俺こと平賀桐人の目の前に広がる光景はだいぶ異様だということだ。簡易的な認識操作結界の内側に更に結界を隠す結界を張っており、その中には本命の情報操作結界を張った三重の守りの上で行われる神事。これがどれほどのものなのかは勇者一行が気づけなくても仕方ないだろう。最も手前の認識操作結界ですらこれだけで食っていけるほどの技量があるのが見て取れる。だがその内側の情報操作結界など、端的に言って神域に到達できるレベルである。自身を媒介に世界を変容させ、だまくらかし、認識を書き換える。結界の内部で起こったことはすべて己の手のひらの上。要するにもう一つの世界を構築するのと同義。情報とはすなわちあまねく世界に広がる歴史。ヘレナ・P・ブラヴァツキーの提唱したアーカーシャよりもルドルフ・シュタイナーの提唱したアカシアの記録庫の概念に近い。限定的なアカシアの記録庫(アカシックレコード)の操作権というところか。世界とはその上で生きるものにとって、絶対的な存在だ。それらはすべてアカシックレコードに記録され、データとして管理されているべきなのだから。然るにその管理操作権にアクセスできるということは、世界からの束縛を抜け出したに等しい。つまり化け物だ。


 そんな化け物が、俺の目の前で魚と戯れていた。月の光を浴びた色素の薄い桃色の髪はきらきらと輝き、白くなめらかな肌は思わず闇夜が隠そうとするほどに麗しい。彼女の笑顔は星きらめきすら嫉妬するだろう。彼女が水の上をすべるように歩く度、少しでもその余韻に浸ろうと魚が飛び跳ねる。腕を掲げ、一心不乱に祈りを捧げるように踊るそれは一種の芸術の如く完成されていた。ここまでくれば俺でもわかる。これは舞――神楽だ。神に捧げる舞踊、そしておそらく()()()()()()()()()()()()()()()()()

 なるほど、俺と同じか。その身の内に神を招致し、力を借りて振るう。つまりあのギルドで察した気にくわないにおいは、この少女から、というかこの少女の内から発せられる神の気配だったのだ。このタイミングで行うということは、あれは少女の中身()から神の意識が遊離してしまう寸前だったと思われる。心臓に神を間借りさせている俺とは違い、ただの人間が上位存在を降ろし続けることなどできはしない。上位存在が自らその意識を剥がれさせないように世界に抵抗するしかないのだ。それが神楽という形で神自らが神自身に奉納するという訳の分からない行動に出させられている理由だろう。


 しかし、


「それをわざわざ俺に見せる必要はないよな、神官。せっかくこの誘いに乗ってやったんだ、要件を話せ」


 だからといって俺のやることは変わらない。徹頭徹尾、この世界に救いをもたらすのみである。


「…………!!」


 まるで今俺の存在に気付いたかのようにふるまう神官。よほどびっくりしたのか、あからさまに「びっくりしました!」という表情をアピールしてくる。いや言葉を話せよ。


「こんな結界を張っておいて関係ないとでも言うつもりか? あのアホ二人は騙せてもこの女神に選ばれし者である俺を騙すことはできないぞ。大体、お前におうんだよ、そのクソみたいな神域のにおいがな……」


 俺の言葉にショックを受けたのか、神官は「に、におう!? 私そんなににおいますか!? ちゃんと身体を清めてるのに! うひゃあ! これはいけません、身体を洗わないと。私、これでもけっこう綺麗好きですので! えっへん!」といった表情をしてドヤ顔で無い胸を張っている。


 ……だから言葉を話せよ!! なんなんだよ!! 表情豊かすぎるだろお前!!!


「……くそ、イライラするなこいつ。おい、俺に話があるのはお前じゃなくてその身の内の神性なんだろ? さっさと用事を済ませたいんだ。ほら、話があるなら聞くだけ聞いてやるから話せ」


『ごめんなさい』


 思わず頷きかけ慌ててそれを振り払う。一瞬、何をされたのかわからなかったが、これは言霊……? いやもっと強力な――福音、神の言葉か。つまるところ世界の流れそのものを断ち切り、自らの望むように空間に干渉を起こす魔の秘奥――時空間干渉だ。とんでもないな、こいつ……これだけ力のある言葉を操れるということは、それすなわちその存在そのものが至高の秘蹟(サクラメント)といっても過言ではない。向こうの教会がその事実を知れば余裕で聖人認定だろう。だが、まさか初手でそんな世界改変じみたものを使われるとは思わなかった。いきなりけんか腰か? 面白い、その挑発を高値で狩ってやろうじゃないか……!!


「舐めるなよ、この俺が一体どれだけの化け物を狩ってきたと思っているんだ? 見えないからと言ってそんな大雑把な時空間干渉が通じるはずがないだろう。ふん、まさか、誘われてきてみれば少女の身体を乗っ取った神性に対峙することになるとはな……。あの結界、貴様がここで俺を排除しても勇者に気づかれないようにその事実をここに封じ込めるためのものだったのだろう? だが残念だったな、俺はこれでも向こうでは神殺しとして勇名を馳せていた男だ。貴様などに後れを取るなどあり得ない」


 懐から丸薬を取り出す。これは霊珠の秘薬だ。霊峰に生える神秘に浸された薬草と少量のエリクサー、そしてそれらを錬金の技術によって圧縮して抽出した、言わばドーピング剤である。これを服用することにより俺の中に呼び込んだ際に漏れ、滞ってしまう世界の魔力を、効率的に外へと排出し力に変換するため身体に変化させることができる。これは身体的なものではなく、概念的な霊体――アストラルボディと呼ばれるより感覚的な人間の殻を通して変容させるのだ。

 その効果は劇的だ。概念的肉体を一時的に上位次元のものへと昇華させ、例え相手が神の秘蹟を操れる聖人だろうとしても後れを取ることはなくなる。そう、彼の聖ゲオルギウスと言えども、その秘蹟を打ち破り死に至らしめることのできる力を得ることができる。まさしく神殺しの槍をその身に宿すようなものと言えよう。そして、そのように不可能にして不条理を成し遂げる者こそ――魔術師と呼ばれ、恐れられているのだ。……まあ、この丸薬は少々反動も強いし副作用も肉体的にはともかく精神的によろしくないものなのだが。


『え。あ、あれ? ちょっと待ってください!』

「なんだ? 命乞いでもするつもりか? ハッ……馬鹿にしてくれるな、小娘。本来お前のようなものは救済対象であるのだが……その神性を引きずり出すまでは痛めつけさせてもらおう。いや、今会話しているのは神かな? 何、心配はしなくていい。人間死ななければどうとでもなるものだ。五行デバイス、起動」

『えぇ~!? あ、あの! 私はマリアですよ! 神様ではありませんよぉ!? 人の話聞いてます!?』

「招来・十二天将――四神が一。火神烈剣凶将朱雀!! さあ、貴様の罪を数えろ!!」


 そして、燃え盛る炎とともに戦いの火蓋は切って落とされた。









 マリア・カンデラ・ミィアフォルテは神奏の聖女だ。好きなものは友達とのお喋りの時間、という肩書にしては普通の出来事を愛する、只の可愛らしい少女だ。

 彼女は物心ついたころから神殿で暮らしており、同じく神殿で暮らしていた仲間とともに下働きをしていた。しかし、ある日拝礼の時間が終わったころに現れた司教に「おめでとう、今日から君は聖女です!」などと言われてからあれよあれよという間に祭り上げられてしまった。そして聖女と認められるための儀式を行い、最後の試練で見事戦いの女神「ミィアフォルテ」をその身に宿すことができたのだ。


 ――実際には、ミィアフォルテ自身が産まれたばかりの彼女を見初めて、幼いころから自分の依り代とするために修行させていたため、出来レースにもほどがある儀式だったということは一部の司教以上の神官以外は知らない事実であるが。


 それからは激動の日々だった。神性を宿した身の上のため、うっかり言霊を放っては誰かを言いなりにしてしまい困惑するし、聖女の仕事は寝る暇もない激務だし、ミィアフォルテは結構わがままだし、と彼女の平凡な感性にとっては刺激的すぎる毎日で、大変な思いをしていた。

 それから何年か経ち、勇者ミツルが現れてからはミィアフォルテが彼に興味を示し、彼の旅に同行することになった。うっかり会話に混ざっては意図せずに支配してしまうこともあったけれども、マダルタルマという同じ年頃の友達ができたのは嬉しかった。そうして今回もとても論理的な荷物持ちの人と楽しく冒険するのだ……そう、思っていた。


「あのキリトという男、危険です。殺しなさい」


 一瞬、聞き間違いかと思った。女神ミィアフォルテは戦の女神だが、いたずらに人を傷つけるような真似をする神ではない。戦においては人を守り、平時には戦の愚かさを語るような崇拝すべき女神だ。

 そんな彼女が人を殺せとは一体どういうことか? しかも神官であるが故に殺生を避けてきたマリアにはとても人殺しをする気概などないし、これからも人は殺さないでいるだろう。とてもできない、自分には無理だ、そういってもミィアフォルテには聞き入れてもらえず「ならば私が顕現しましょう」と約束を取り付けることになった。なぜそこまで彼の排除に拘泥するのか? と聞くと、


「あれは危険です。魔王どころか勇者さえも殺害しうる力を持っています。一体どこからあんな化け物が紛れ込んだのか……あれを放置することはできません。生物全体の危機です」


 と返ってきた。まさか、と信じられない気持ちだった。彼、キリトは口調こそ高圧的だが実際は各人の体力や怪我などに気を配り、会話の節々から優しさが垣間見えるような人だ。まだ自分は彼の一端しか知らないが、とてもそんな危険人物には見えない。それに、ランドンに負けたことをきっかけに勇者やマダルタルマを鍛えてくれている。勇者を殺すような人物がわざわざ敵を鍛えるようなことをするだろうか? その点も疑問だった。


「ええ、それに関しては私にもわかりません。彼は一体何故勇者を鍛え始めたのか……前後の関係性から見ても彼にそれをする利点が見当たりませんからね。何か思惑があるのでしょうけれども、それを今の私では見通すことはできませんので。だから、マリア。あなたができないというのなら私に身体を貸しなさい。と言っても実際にあなたの身体を借りるわけではなく、肉体を媒介に私を召喚し、魔力で構成された私の肉体であなたを包むような形になりますので安心を。ゴーレムのコアのようなものですね」


 普通に嫌だが。

 などと言ってもミィアフォルテは聞き入れないことはこれまでの中で十分承知している。だからせめて、最初は神官らしく交渉をさせてくれと頼み込んだ。聖女としての力――言霊を使い、彼を支配してでもその思惑を聞き出せば何かわかるだろうと。それが邪悪なものであれば彼を排除すればいいし、善良な思想に基づくものならば彼に協力を仰げばいい。……それをしてしまえば彼と対等な友人にはなることができなくなったとしても、誰かと手を取り合い助け合えるような可能性は全力で探らなければならない。それがマリア・カンデラ・ミィアフォルテ――戦の女神をその洗礼名に持つ聖女としての矜持であり信念だった。


「……す、すばらじいでしゅマリア!! さすがはわ゛だじの選んだ聖女……!!」


 身の内に宿るミィアフォルテから感激した思念が送られてくる。一体魂でどうやって涙を流すのか、そして思念なのになんで涙声になっているのか激しく気になるが、この神様はそういうものだと知っていた。いや、諦めていた。やはり神は人には理解できないものなんだなぁ、と思いを新たに何があってもいいように少々本気で結界を張っていく仕事にとりかかる。




 それが間違いだった。


「さあ、貴様の罪を数えろ!!」

『ひええええ!? ちょ、ちょっと止まってくださいぃぃ!!』


 目の前に迫る爆炎は咄嗟に張った静止結界に当たったと同時に、まるでそこだけ世界から切り取られたかのように静止する。時の流れごと止めるためもうその炎はマリアに届くことはない。


「結界術師か? ふん、厄介だが……()()()()()()()()()()()()()?」


 じり、と完全に止まっていた炎が再び動き出した。


『な、え?』

「避けなさい!」

『ひょえぇぇぇえええ!?』


 なんだこれは。この結界は言霊を利用した静止結界だ。そしてこの場はマリアの力によって世界から隔離されている。つまり一つの世界を支配しているに等しいのに……どうしてそれが効かないのか?


「マリア! アレはだめです、私が見誤っていました! 貴女のその力は効きません!」

『ええ!? なんでですかぁ!?』

「世界の上に立つものにはあなたの力はよく効きます。それは悪だくみをしていた貴族や枢機卿に使った時で十分理解したことでしょう。ですがアレは――」

「そう、これは世界の力。お前が疑似的に世界を構築してしまえるのなら、俺はその世界を利用すればいい。世界を味方につけ、世界を支配してしまうのなら、畢竟、それは世界と同異議だ。お前のそのゴミのような福音はアカシックレコードへのアクセスと変更権限を有しているため世界に記録される生き物には絶対的な優位性を持つが、俺は世界そのものと言ってもいいため世界からの束縛が果てしなく弱い。そもそも俺はここの世界出身ではないからな。もともと福音の支配には抵抗できるんだよ」


 なんか、よくわからない理由でレジストされたということは理解できた。マリアはそんなに頭がよくないのだ。難しい話は嫌いだし、魔法のことも奇跡のこともよくわかってないが……キリトがすごいのはよくわかった。


「くっ! まさか相性が最悪の相手とは……!! マリア、早く私の顕現を! こうなれば力技しかありません!!」

「残念だったなァカミサマ? 虫けら程度の知恵でこの俺を殺そうなどとは片腹痛いわ!! 俺がどれだけ貴様らを屠ってきたと思っている!? さっさと出てこいよ。じゃねえとその小娘ごとぶち殺すぞ」

『ええ……いきなり怖くなってませんかぁ!? どうしたんですかキリトさん! あなたはもっと優しい人でしょう?』

「……意識があるのか? いや、神に騙されているのか。ッチ、仕方ない」


 彼は炎があふれ出る剣を鞘に納めるとまるで翼のように六枚の炎の羽を展開させた。しかもそのまま浮いた。もはや何でもありだ。魔法も使っていないのに人が浮くとか不気味でしかないし、そもそもあんな魔法はない。魔法学会に新生物として捕らえられてもおかしくないだろう。


『あ、あのー、一つ聞いていいですか?』

「なんだ」

『どうして私を襲うんですか?』

「神だから。そして神からお前を解放するために。人を食い物にするような邪神は俺が倒す。俺はそのために生まれてきたのだからな」

「誰が邪神ですって!?」


 ええ……理由になっていないのだが……もしかして自分は熱で頭がいかれてしまったのだろうか? 今日は暑い日だからなぁ、と現実から逃げてみる。

 だが。

 彼は自分が神様に操られていると思って攻撃してきたようだ。その方法は確かに過激だが、彼はやはり優しい人だった。図らずも、自分を助けてくれようとしてくれたことを知れたのは収穫ではないだろうか。これで彼と戦わなくて済む。


「そもそも、喧嘩売ったのはお前だろう?」

『いや、いきなり戦闘に持ち込んだのはキリトさんでしょう!?』

「は? お前が福音で支配しようとしてきたのが原因だろう?」

『あぅ、それはすみません……でも、これ勝手に出ちゃうし……あ、あとあと、私はキリトさんとお話したくて』

「お話ぃぃ? こんなアホみたいな現実改変結界張っておいてそれはねえだろうが。お前、話していることとやっていることが噛み合ってねえぞ」

『ち、違うんです! この結界はちょっと頑張ったらできちゃったというか……内緒のお話をするには都合がいいかなって』

「……………………うっそだろこの女……本気で言ってるよ……」


 今度はキリトが呆れる番だった。自分は何か変なことを言ったのだろうか? 胸の内ではミィアフォルテが「今です! やつを今のうちに仕留めますよ!」と気張っているが、せっかく穏便に収まりそうな気配があるのになんでそう火種を火薬庫にぶち込もうとするのかわからない。そういうところが戦争大好きおばさんとかいう不名誉な二つ名をつけられる所以なのだと思う。


 でもまあ、先ほどいいことを聞いた。彼には福音の奇跡が効かないとなれば、することはただ一つ。

 ――楽しくおしゃべりすることだ!


「こんなん史上稀にみる聖人クラスだぞ……いくら神の分霊を宿してたとしても神代の奇跡でも再現できなさそうなのをちょっと頑張ったらって……」

『キ、キリトさん。あのぉ、私とお喋りしてくれませんか? 私、しばらくお喋りできなくなっちゃってて。でもキリトさんならこの奇跡も効かないからたくさんお喋りできるんですよね? せっかくですし、お互いのことも話し合いたいなーって。あ、あそこにテーブルとお菓子も用意したんですにょおおおおおおおお!! て、テーブルが跡形もなくなってる!! お菓子も!! え? なんで? さっきの戦闘で? 嘘ぉ!?』

「こ、この鬼畜外道! 私のマリアを泣かせるとは……その性根を今すぐ叩き直して差し上げます! そこへひれ伏しなさい!」

「黙ってろこのクソが。こっちこそ今すぐ貴様を三枚に下ろしてもいいんだぞ?」








 マリア・カンデラ・ミィアフォルテは神奏の聖女だ。好きなものは友達とのお喋りの時間、という肩書にしては普通の出来事を愛する、只の可愛らしい少女だ。だが、今日はまた好きなものが増えそうだった。


 世話焼きなおばさんと、口と目つきは悪いけどすごい力をもった優しい人と、ただのマリアとしてふるまえる、そんな時間ができそうな予感がしていた。


「ファッキューいい度胸だ、この結界ごと消滅させてやるよ!!」

「できるものならやってみなさい野蛮人! 私のマリアがあなたに負けるとでもお思いですか?」


 ……前途は多難だが。

平賀桐人設定その二


丸薬くん

前章でも登場した丸薬はドーピング剤。主に概念的に昇華させて上位次元に近づけることができる。効力は十分。効果が切れるとかなり精神的疲労がたまってしまって四神の力をうまく引き出せなくなってしまう。


マリアちゃん

いい子。おばさんの無茶ぶりによく応えてる。彼氏でも作ろうものならめちゃくちゃアドバイスしてくるので迷惑だと思っている。出るところに出れば至高の聖人として崇め奉られる人。


ミィアフォルテ

すぐ切れる世話焼きおばさん。戦争嫌いだけど戦の女神なため思考がすぐ戦いに発展する。恋愛は戦争だと思っている。

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