バンッ
未だにこれが人工だというのが信じられないくらい、なんならより本物よりも本物っぽい美しい青のグラデーションの空の下で、男が2人っきり
「こんなにリアルな電脳空間を電脳空間だと気づけたのは、お前が教えてくれたからだよなあ?」
「そうでしたっけ?」
桧山の決めつけた質問を博士と呼ばれる男はとぼけて避けようとした
「それだけじゃねえ、この世界のプログラムにアクセスしたのもお前が初めにできたからだろ?日本のトップレベルのプログラマーたちができないことをお前は簡単にやってのけた。それはもう人間技じゃねえよ」
じれったいことが嫌いな桧山は一気に核心へと迫った
「お前がゲイツ、この世界を破壊しようとしているAIだな?」
「あーーー」
即答できる質問のはずなのに少し答えに迷いが生じているようだが、
「そうです。私が米国により開発された電脳空間破壊AIであるゲイツです」
「やっぱりな」
「よくわかりましたね」
「おれにかかれば朝飯前よ」
「さすが桧山さんですね。少し惜しいですが、あなたには死んでもらわないといけなくなりましたね」
ゲイツの手にはいつのまにか拳銃が握られていて桧山がそれに気づいた頃には、
「バンッ」
拳銃は火を噴き弾丸は桧山の心臓を貫いた
「この世界もそろそろ終わらせなければ」
殺戮の準備に取り掛かるために立ち去るゲイツの背後から拳銃を突き立てる音がした
「そうはさせねえ」
「なぜあなたは、生きているんです?」
死んだはずの男の声が聞こえてくるからゲイツは想定外の事態に混乱しているようだ
「お前は人間様を舐めていたようだな。こんぐらいおれたちにかかりゃ余裕よ」
ようやく桧山への当たり判定が無効化されているという仮説を立てたゲイツは、人類がまだ自分に抗おうという意思があることを知りほくそ笑んだ
「いいですね、実に楽しそうなゲームが始まりそうでワクワクしてきますよ」
「ほざいてろ、勝つのはおれたちだ」
バンッと発砲音が空気を切り裂いた
ゲイツの姿は消えてしまった
「で、どうするの?」
何かAIゲイツを倒す算段はあるのか
手強そうな相手に私と会長と奈々さんは不安げに真衣に尋ねた
「勝ち目はある」
「おおーー」
ほっとした私たちは勝ち目があるだけで安堵の表情を浮かべた
「でも時間がちょっと怪しいんだよね」
「時間?」
「監視と警備にあたる人がめちゃくちゃ少なくなる土日のうちに倒さないと私たちは負けちゃう」
「土日?」
「そう、土日」
警備だの監視だのよくわかっていないが時間が限られているのは確からしい
「土曜日っていつ頃なの?」
どうせ今日は火曜日あたりだろう、まだ3日4日は残っているだろうと思った私だったが、
「もう土曜日だよ?」
「え?」
私たちが理解できずにいると、さらに真衣はぶっこんでくる
「あとだれか現実世界に戻ってもらわないといけないんだよね」




