誤射
「それで、あいちゃんの病気は治ったの?」
軽くお説教というか目撃したことを口外しないようにと念には念を入れられたあと突然私の病気について聞いて来た
「うん、ばっちり治ったよ」
「そう...よかったわね」
私に優しく微笑んでくる奈々さんに私は戸惑いながらも笑い返した
「ちょっと、なんで奈々さんも病気のこと知ってるの?」
「ああそれはね、」
「私はあなたを診察した医者の娘なのよ。それでこの計画に私も協力させられてね」
「へー」
いまいちピンとこない私に真衣ちゃんが付け加える
「お姉ちゃんの病気を治すために協力してくれたお医者さんがいて、その人の娘が奈々ちゃんなの。それでこの世界で私が女子高生を演じるのに協力してくれたり、あとはゲームでも守ってくれたりと色々手伝ってくれてるの。お姉ちゃんがクラーケンに襲われたときも私が奈々ちゃんに場所を教えて助けに行ってもらったんだからね」
「あー、あのときはたまたまじゃなかったんだ」
陰で私のことを守ってくれていたんだと知りとても暖かな気持ちで満たされていくが、同時に疎外感があったのは否めない
その後も私たちが昔3人で遊んでいたことや私が眠りについたときのことなどなど、私の全く知らない思い出がたくさん出てきて、私が人間だという実感がどんどん湧いてきた
「さあそろそろ集合時間だから」
楽しい時間は過ぎ去り、いつのまにか街は賑わいだし会長たちとの約束の時間を迎える
3人で集合場所へ向かうと、すでに会長がいた。会長はあからさまに上機嫌なのでおそらく昨日の舞踏会で馬場先輩と何かあったんだろうというのは簡単に予想がつく
長々とノロケ話をされるのかなと身構えながら3人で行ってみると、ちょうど坂本くんも来てくれて、そのおかげで会長にノロケ話をさせる隙を与えずに済みそうだ
「おっはよー、みんなよく寝れたかな?」
「はい、おかげさまで」
ノロケ話を話したいという欲求が身体をうずうずさせている会長からもれでているが、奈々さんは取り合わず無難に対応した
のらりくらりとかわし続けているうちに馬場先輩もやってきて残るは圭太1人になった
馬場先輩が来たことで欲求の流出は止まったが、今度は私のなかなか来ない圭太への怒りが滲みでてしまう
「だれか圭太のこと迎えに行ってやったら?」
集合時間から15分が経ち、流石にしびれを切らしたのか馬場先輩が提案してきた
「そうだね、じゃああいちゃん、行ってきて」
「ええっ?なんで私が」
「いいからいいから、ほらはやくしないと」
満面の笑みで私を仕向ける会長にいつか絶対仕返ししてやろうと誓い渋々行くことにした
「圭太ー、起きてる?」
「...」
扉をノックして呼びかけるも返事はない
しかし中で人が動いている気配がするので、もしかしたら...
音を立てずに扉を開け中に入る
はっきりとものを漁る音が聞こえてくる
もしかしたら圭太が何者かに寝込みを襲われてしまったかもしれない
メニューから杖を装備し、敵に備えじりじりと物音のするほうへ近づく
急にもの音が止み、どうしたのかと思えば足音がこちらへと向かってくる
びっくりして近くにあった洗面所へと逃げ込む
とにかく倒さなければ、そう思って杖をしっかり握りしめて発動させる魔法を暗唱して確認する
どんどんドンドンっ
その早い足音はすぐに迫ってきて
「敵を見たらうつ、敵を見たらうつ...」
行動を復唱して備える
あと2歩1歩
「デウスマグなっ??」
懸命に練習した魔法を読み始めた私の目には、血色の悪い圭太がうつる
必死に魔法を止めようとしたけれどギリギリで読み終えてしまった
「ぐはっ」
「圭太、圭太ーっ」
焼け焦げた壁にもたれる圭太に私はマッハで駆け寄る




