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prologueー2 女の子との遭遇

「伝説も勇者も楽じゃない」の世界での、とある転生者の話。


プロローグ第二部。

 


 抜き足差し足、忍び足。



 だが、心は現在高揚中。スキップでもしてしまいたくなる。しないけど。



 何せ、この異世界らしき謎の場所に飛ばされて()らされて、ここでやっとハーレムのきっかけが作れるのだ。


「散々歩かされ、魔物の気配がしたらすぐに逃げ、それでも街も見つからない。どうしよう?」

 それじゃ、単なる出オチじゃないか。異世界転生して、そんなことがあってはいけない。



 異世界転生とは、前世のつらさをも吹っ飛ばすぐらい爽快な内容でなければいけないのだ。

 ライトノベルだったら読者を楽しませるため、そして現実逃避になるよう、苦労はあまり書かかず、ストレスフリーにしたほうが良いと言うではないか。


 現に、元いた世界の俺のようなエピソードの異世界転生が現実世界で人気になっていたくらいだ。終始暗いような異世界転生は、存在しちゃならない。

 それでは、娯楽でも何でもない。


 勝手な持論というか自論ではあるが、外れていないとは思う。



 …よし、少し近づけた。木の陰に隠れて、近くからその姿を拝見させて頂こう。



 屈んで何かの作業をしているようだ。下半身は良く見えないが…あれは絶対に女の子だ。

 これから始まる俺の物語の、メインヒロインになるのだろうか。


 俺は考察を巡らせてみた。



 メインヒロインにしては少し地味な気がするし、定番の金髪碧眼美少女ではない。

 そして、男勇者に対し基本ヒロインというのは補助職、つまり僧侶(聖女)といった職だろう。


 しかし見た目的には僧侶の様な印象は受けない。どちらかというと、魔女っぽい。



 否、ぽいというより完全に魔女だろう。よく見ないでもわかる「あの帽子」は普通、魔法使いが被るものだ。


 テンプレでなくても、魔女は妖しいお姉さんタイプであることが多い…となると、巨乳か。元いた世界の魔女はロリっ娘の猫耳だったが、性格は幼女らしさと妖しさが混ざっていて、ロリ巨乳…。



 違う違う。今はそれじゃない。


 後ろ姿で確認できる限りだが、ロリではないだろう。だからと言って、大人とは一概に言えない歳くらいだ。恐らく十代後半程度の女の子と推測する。

 帽子から覗く髪の毛は、短い。しかも…黒、灰色っぽい。


 なんだよ、元の世界では黒髪は希少だって言って注目されたが、この世界は黒髪は珍しくないのか?モテるポイントが減ったかもしれない。


 というか髪だけでなく全体的に黒い。スカートと帽子のリボンの辺りは黒くないが…あれは魔女確定だな。そばの木に立てかけてある箒は、彼女が跨いで飛ぶのだろう。



 一人目のヒロインは魔女か。いいな、剣は消えてしまったし、この世界の魔法でも教えてもらいつつ町を探そうじゃないか。

 うむ、魔法系統の職は基本的に体力は低めだ。口実は一人じゃ心細くないですか、と声でも掛けるか。

 それか魔物に襲われそうになったところを助けてやる、でもいいな。きっと都合よく魔物が現れるだろうし。


 惚れてくるのは間違いない。普通にこの世界のことを訊いてもいいだろう。あ、その方が不自然じゃないかもしれないな…。


 よし。ちょっと行ってみるか!

 なに、直ぐに俺の美貌によって惚れちまうさ。



 まだあちらは俺の存在には気づいていない。数分後には俺のことを見上げ、顔を赤らめ、そして俺についていくことを、まだ彼女は知らないのだ。



 しかし、何故か俺は強烈な違和感を覚えた。よくわからないが、引っかかるものがあるような気がする。




 ー


 やっと彼女のすぐ近くまで来た。



 魔物は都合よく出てきたりしなかったので、この世界のことについて尋ねるルートにしよう。



「あの」

「何か御用」


「ファッ!?」



 噓だろ。


 予想外過ぎる。この子は素早さが高いのか…別の意味で。



「…何なのかしら?」


 依然下を向いて作業を続ける彼女は、鋭い声で言った。



「ああ、えっと、すすすいませんあの…。」




 まずい。展開が予想外すぎで言葉が出なくなっている。これじゃ現実世界にいたときの俺になっちまう。何とかして話を続けないと。


 えっと、えっと…何て話せばいいんだったか!?



 もしかしてテンプレではないのか…?



 そんな事が頭をよぎった。いや、違う。俺は異世界転生したチーレム勇者ってことを忘れちゃいけない。


 なんだか変じゃないか…?



 また変な考えが頭をよぎる。だから違うんだって、変じゃない。変じゃないんだって………。


 しかし、早急感じた違和感はまだ続いているが…?



 ふざけんな、どこが変だってんだよ…!!何が変で違和感を感じているんだ?異世界だから異、だろ、そりゃあ元の世界とは違うだろうが…なんなんだよ!





「はぁ…、一体何なの?新手のナンパか何かかしら」


「えっ」


 彼女がだるそうにを顔を上げる。


「まーったく、それなりの美貌を持ってると言い寄られることが多くて困っちゃうわね。で、何の用」




 …なんかすげぇ。喉までその言葉が迫っていたが、直ぐに飲み込んだ。



 恐らく歳は予想通りの十代後半、後ろ姿から感じた雰囲気もそのままだ。

 しかし、後ろから見るだけではわからなかった部分…つまり、顔は予想を大きく外れた。



 とても深い輝きを宿す、ルビーのような強い深紅の瞳。吸い込まれるような、というのはこのことか。

 生気を吸い取られていく気がするほど鋭い視線は、その吊り上がった目からだろう。


 ちょっとカッコつけて形容してみたが、とにかく目に尋常ならざる…というか、何かしら異常なものを感じる。すげぇと言いかけたが、恐らくやべぇの方が正しい。

 もしかしてこの子、吸血鬼…?




 美しく整っている顔、つまり美人というのはわかる(美少女という感じはあまりしない)。



 だが、それでも何かしら違和感を感じる。

 予想していたのが妖しめな紫のタレ目だったからか…いや、それだけで違和感何て生まれないだろ。


 本当に美人なのだろうか?何かそれを違和感の方向に引っ張っている、そんな気がする。


 美しさのピントがずれているというか、味噌汁のしょっぱさと醤油のしょっぱさの違いというか。

 馬鹿だ俺、この例えは流石に訳が分からねぇ。



「……何よ?気持ち悪いわねぇ…」



 は?


 今何て言った?



「は、え、気持ち悪い?」


「気持ち悪いわ。何よ、話しかけといて突っ立ったままって」


「ああぁあぁ、いやあのそれは」



 何してんだ俺!コミュ障なのは転生してから治ったろーが!?まともにしゃべれないって何!?これじゃまるで現実世界にいたときの後藤 吉貴じゃねぇか!



「えぇっと、ちょっとお聞きしたいことがあるんです、けどッ」

「…イヤね。あんたみたいのは嫌いよ」



 は?


 本日二回目の、今何て言った?



 嫌い。嫌い?嫌い…嫌いって?え、この娘ふざけてんのか…?





 違和感その1、ようやくわかった。


 この娘、俺を前にして赤面もせず普通に接している。

 寧ろ、完全に嫌悪感を抱いていると見た。


 しかし望みはある。そう、嫌悪感を抱いているように見える定番の性格があるではないか!

 俺の魅力を見せれば、俺に振り向かずにはいられなくなる。しかしそれでも振り向く素振りを見せたくないという感情からくるあの性格を…!




 ……そう、ツンデレであってくれ。



あれ、女の子に嫌われちゃいましたねぇ吉貴さん。


おまけにコミュ障発動…、イケメンと最強の自信はどこに消えたんでしょう。



さてと、女の子の正体はいかに。今後テンプレ展開と明るい未来は待っているのでしょうか?


現実を見よう!以上です。

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