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彼の終末の先の世界で
*20170513 twitter投稿文から大幅に加筆修正しています
あんなに中学生になりたがっていたのに、
毎日毎日、ベットの脇においた卓上カレンダーに罰印を書き込んで、入学式までの日数をカウントダウンしていた。あとひとつ罰印を書き込めばカレンダーは4月にたどり着いたのに、3月31日の欄は真っ白なままだった。
あんなに中学生になりたがっていたのに、入学式を迎えるまえに彼の世界は終末を迎えた。
彼の体を運び出したあとの部屋には、白い壁にかかった真新しい黒の学ランが残っていた。
母は、向こうの入学式で必要になるだろうから、これも一緒に送ってあげたいね、と学ランを手に涙を流して言った。
葬儀は入学式だった日の前日に行われた。
火葬場の煙突から、煙が高く上がっていく。私はその煙を見上げながら、彼はたどり着いたばかりの終末後の世界で、きっと入学式の予定を確認しているのだろうと思った。